著者
木口 倫 吉田 真 斎藤 康樹 岡野 邦宏 西川 裕之 髙橋 政之 宮田 直幸
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.257-270, 2022 (Released:2022-11-10)
参考文献数
76
被引用文献数
2

2020年6月と8月に秋田県八郎湖流域における浸透移行性殺虫剤および代謝物の濃度レベルと水平分布の調査を行った。その結果, ジノテフラン, イミダクロプリド, チアクロプリド, チアメトキサム, クロチアニジン, エチプロールとフィプロニルおよび代謝物のチアクロプリドアミドが検出された。最大検出率はジノテフランが100%, チアクロプリドアミドが80%であり, 水稲生産の影響が示唆された。最大検出濃度は, 8月の湖内でジノテフランが2,200 ng L-1, 6月の流入河川でチアクロプリドアミドが60 ng L-1であった。8月のジノテフランは調査水域の広い範囲で検出され, 他の農薬に比べて1-3桁高かった。ユスリカ幼虫の急性毒性値によるPNECと最大検出濃度を用いた初期リスク評価ではジノテフランのみが1より大きかった。しかしながら, 本研究では四季を通じた動態は不明であり, 詳細な調査が必要であると考えられた。
著者
清水 英寿 萩尾 真人 吹谷 智 岡野 邦宏 宮崎 均 石塚 敏
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、腸内細菌代謝産物であるスカトールが、ラット個体、培養腸管細胞、培養肝ガン細胞、それぞれに与える影響について解析を行った。結果としてスカトールは、ラット個体においては、胆汁酸代謝の撹乱を誘発させ、肝臓や回腸での遺伝子発現、そして腸内細菌叢を変動させる事が明らかとなった。また、腸管細胞を用いた解析では、スカトールがAhRを介して細胞死を導く事が確認された。さらに培養肝ガン細胞では、スカトールはERKの活性化を介して細胞増殖を導く事が示唆された。以上の本研究結果から、腸内におけるスカトールの産生は、消化管機能の異常を誘発させ、さらに消化管疾患の発症・進展へも関与する可能性が示された。
著者
岡野 邦宏
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.747-750, 2013-07

秋田県八郎潟残存湖(以下,八郎湖)は秋田県西部,男鹿半島の根本に位置し,八郎潟調整池,東部承水路,西部承水路を合せた湛水面積は48.3km2となっている。かつては琵琶湖に次いで日本第二位の面積(220km2)であったが,1957年に着工した八郎潟干拓事業により約17,000haの干拓地が造成され現在の形となった。防潮水門の設置により汽水湖から淡水湖に変わった八郎湖の水質は,湛水面積の減少,人口増加,農地造成などにより悪化の一途を辿り,1977年の事業竣工から24年後の2001年に全国ワースト5位(COD濃度)となっている。2006年には,アオコ(藍藻類の大量増殖)により近隣地域で取水制限も行われ,水質もワースト3位となった。このような現状を鑑みて,2007年12月に湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)の指定を受け,全国で11番目の指定湖沼となった。翌年2008年度より「八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第一期)」が策定され,悪化した水質の改善が進められている。一方で,秋田県をはじめとする農山村地域を多く持つ地域では生活排水処理において各戸での合併浄化槽に加えて,比較的小規模な集合処理施設である農業集落排水施設が大きな役割を担っている。実際に,秋田県では全体計画処理人口の13.8%(2012年現在)がこうした農業集落排水施設によって生活排水処理が行われている。八郎湖流域では,前述の八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第一期)に基づき,農業集落排水施設の高度処理化や広域下水道への接続が進められている。しかしながら,高度処理化されていない施設は水域の富栄養化の一因となる可能性があることから,既設施設の高度処理化は重要な課題といえる。また,農業集落排水施設のような比較的小規模な施設には広域下水道処理施設とは違い,低コストかつ持続可能な高度処理技術が求められる。本稿では,11番目の指定湖沼となった八郎湖の汚濁状況をアオコ問題を中心に解説するとともに,農業集落排水の高度処理技術について植生浄化法の1つであるバイオジオフィルター(Bio-Geofilter)水路を用いた技術について紹介する。