- 著者
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岡野 邦宏
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 畜産の研究 (ISSN:00093874)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.7, pp.747-750, 2013-07
秋田県八郎潟残存湖(以下,八郎湖)は秋田県西部,男鹿半島の根本に位置し,八郎潟調整池,東部承水路,西部承水路を合せた湛水面積は48.3km2となっている。かつては琵琶湖に次いで日本第二位の面積(220km2)であったが,1957年に着工した八郎潟干拓事業により約17,000haの干拓地が造成され現在の形となった。防潮水門の設置により汽水湖から淡水湖に変わった八郎湖の水質は,湛水面積の減少,人口増加,農地造成などにより悪化の一途を辿り,1977年の事業竣工から24年後の2001年に全国ワースト5位(COD濃度)となっている。2006年には,アオコ(藍藻類の大量増殖)により近隣地域で取水制限も行われ,水質もワースト3位となった。このような現状を鑑みて,2007年12月に湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)の指定を受け,全国で11番目の指定湖沼となった。翌年2008年度より「八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第一期)」が策定され,悪化した水質の改善が進められている。一方で,秋田県をはじめとする農山村地域を多く持つ地域では生活排水処理において各戸での合併浄化槽に加えて,比較的小規模な集合処理施設である農業集落排水施設が大きな役割を担っている。実際に,秋田県では全体計画処理人口の13.8%(2012年現在)がこうした農業集落排水施設によって生活排水処理が行われている。八郎湖流域では,前述の八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第一期)に基づき,農業集落排水施設の高度処理化や広域下水道への接続が進められている。しかしながら,高度処理化されていない施設は水域の富栄養化の一因となる可能性があることから,既設施設の高度処理化は重要な課題といえる。また,農業集落排水施設のような比較的小規模な施設には広域下水道処理施設とは違い,低コストかつ持続可能な高度処理技術が求められる。本稿では,11番目の指定湖沼となった八郎湖の汚濁状況をアオコ問題を中心に解説するとともに,農業集落排水の高度処理技術について植生浄化法の1つであるバイオジオフィルター(Bio-Geofilter)水路を用いた技術について紹介する。