著者
清水 英寿 萩尾 真人 吹谷 智 岡野 邦宏 宮崎 均 石塚 敏
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、腸内細菌代謝産物であるスカトールが、ラット個体、培養腸管細胞、培養肝ガン細胞、それぞれに与える影響について解析を行った。結果としてスカトールは、ラット個体においては、胆汁酸代謝の撹乱を誘発させ、肝臓や回腸での遺伝子発現、そして腸内細菌叢を変動させる事が明らかとなった。また、腸管細胞を用いた解析では、スカトールがAhRを介して細胞死を導く事が確認された。さらに培養肝ガン細胞では、スカトールはERKの活性化を介して細胞増殖を導く事が示唆された。以上の本研究結果から、腸内におけるスカトールの産生は、消化管機能の異常を誘発させ、さらに消化管疾患の発症・進展へも関与する可能性が示された。
著者
横田 篤 石塚 敏
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大腸癌のリスク因子として大腸内に生成される発がん性二次胆汁酸が知られている.本研究では,腸内細菌による胆汁酸の還元的代謝により生成される発がん性二次胆汁酸を低減させる新しい手法として,腸内細菌の嫌気呼吸を促進させ,胆汁酸の酸化的代謝を活性化させることを試みた.そこでラットにフマル酸を添加した飼料を摂取させ,盲腸内の嫌気呼吸の誘導を試みたところ,代表的な発がん性二次胆汁酸であるデオキシコール酸の低減可能性は示された.しかし,5~10%と高濃度のフマル酸添加必要であり,この濃度ではラットが下痢を起こすことから、実用的な抑制にはフマル酸のカプセル化等,添加方法の検討が必要である.
著者
石塚 敏
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.301-306, 2014-05-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

古くは大腸がん発症,最近ではメタボリックシンドロームとの関係で注目される胆汁酸には多様な分子種が存在し,その生理作用は分子種により大きく異なる.胆汁酸は肝臓で合成され,脂質の吸収に関与する両親媒性のステロイドである.胆汁を介して消化管腔内へ分泌された胆汁酸は,腸内細菌により脱抱合や二次胆汁酸への変換を受ける.胆汁酸は腸内細菌による代謝を受けるだけでなく,胆汁酸の存在が腸内細菌の存在にも影響を及ぼすという相互関係がある.一方で,胆汁酸分子は宿主でのさまざまな代謝調節に関与することが明らかになった.本稿では,胆汁酸の構造と代謝,腸内細菌への作用と食事条件による影響,メタボリックシンドロームなどの病態生理を解析するうえで考慮すべき点などについて概説する.