- 著者
-
石塚 敏
- 出版者
- 公益社団法人 日本農芸化学会
- 雑誌
- 化学と生物 (ISSN:0453073X)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.5, pp.301-306, 2014-05-01 (Released:2015-05-01)
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
-
2
1
古くは大腸がん発症,最近ではメタボリックシンドロームとの関係で注目される胆汁酸には多様な分子種が存在し,その生理作用は分子種により大きく異なる.胆汁酸は肝臓で合成され,脂質の吸収に関与する両親媒性のステロイドである.胆汁を介して消化管腔内へ分泌された胆汁酸は,腸内細菌により脱抱合や二次胆汁酸への変換を受ける.胆汁酸は腸内細菌による代謝を受けるだけでなく,胆汁酸の存在が腸内細菌の存在にも影響を及ぼすという相互関係がある.一方で,胆汁酸分子は宿主でのさまざまな代謝調節に関与することが明らかになった.本稿では,胆汁酸の構造と代謝,腸内細菌への作用と食事条件による影響,メタボリックシンドロームなどの病態生理を解析するうえで考慮すべき点などについて概説する.