著者
岩尾 俊兵 前川 諒樹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.341-350, 2016-06-25 (Released:2017-02-25)
参考文献数
25

Thompson (1965) は、既存の官僚制組織が仕事を細分化・専門化させることで企業の生産性を向上させると同時に、仕事の過度な細分化を生じさせイノベーションを阻害する可能性があると指摘した論文である。しかしながら、Thompsonの議論は官僚制組織 (官僚的な組織) と創造性を単なる対立関係にあると想定したものではなく、官僚制組織にいくらかの修正を加えることで生産性と創造性が両立できるのではないかと論じている。たとえば、この論文では、官僚制組織において創造性を担保する役割がプロフェッショナルに求められており、イノベーティブな活動に従事するそのようなプロフェッショナルを処遇するには単線評価でなく総合評価がよく、仕事自体の面白さによって内発的動機づけが行われる必要があるという。
著者
岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.70-86, 2018-12-20 (Released:2019-02-12)
参考文献数
55

改善活動は,分権的組織によって創出される多数のインクリメンタル・イノベーションの集合として,半ば規範的に捉えられることもある.これに対し本稿は,インクリメンタル・イノベーションとしての改善活動の実態が必ずしも上記規範に一方的に規定されるとは限らないと指摘し,そこには「どのような規模のものに集中し,どのような組織で取り組むか」という全社的な戦略的意思決定の余地が残されていることを明らかにした.
著者
藤本 隆宏 前川 諒樹 岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180315a, (Released:2019-02-15)
参考文献数
36

本稿は、産業競争力の概念を明らかにした上で、生存時間解析のシミュレーションによって、産業競争力の類型と発現過程に関する洞察を得ることを目的とする。ここで競争力とは「選ばれる力」と定義され、「収益力」「表の競争力」「裏の競争力」という多層的な競争力の構造が示される。次に、広義のものづくり論にもとづき、「産業」を同類の設計の製品の集合体、あるいはそれを生産する現場の集合体と規定する。以上の概念規定をおこなった上で、国内・国際競争の軸と競争強度の軸による四つの競争状況についての予想を示し、シミュレーション・モデルによって四つの状況における一定期間競争後の予想生産性分布が再現できることを確認した。さらに、競争強度と現場生存率との間に累積指数分布に近い関係が観察された。また、国際競争における2国の賃金率と現場生存率との関係を調べ、リカード的コスト競争において平均すれば比較劣位な国の現場も「緩やかな競争」では生存可能性が高まるという「越境」現象を確認した。
著者
岩尾 俊兵 中野 優
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.105-116, 2017 (Released:2017-04-25)
参考文献数
19

産業における技術革新はどのように発生し競争環境にどのような影響を及ぼすのだろうか。上記の研究課題に対し、3産業のパネルデータを用いて接近したのがTushman and Anderson (1986) である。彼らの発見は、産業において長期間のインクリメンタルな技術変化が断続的で「ラディカル」な技術革新によって中断され、また、技術革新にはある産業に属する企業が既存の能力で対応可能な、①能力増強型とそうでない、②能力破壊型のものがあるというものである。ただし、彼らはラディカルか否かの判断を特定指標の向上率で行っており、図表の作り方によってはラディカルなイノベーションというよりも連続的な技術のブレークスルーのようなものを測定している可能性もある。それによって技術変化が競争環境に与える影響を一部見逃しているかもしれない。
著者
藤本 隆宏 前川 諒樹 岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.5-40, 2019-02-25 (Released:2019-02-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本稿は、産業競争力の概念を明らかにした上で、生存時間解析のシミュレーションによって、産業競争力の類型と発現過程に関する洞察を得ることを目的とする。ここで競争力とは「選ばれる力」と定義され、「収益力」「表の競争力」「裏の競争力」という多層的な競争力の構造が示される。次に、広義のものづくり論にもとづき、「産業」を同類の設計の製品の集合体、あるいはそれを生産する現場の集合体と規定する。以上の概念規定をおこなった上で、国内・国際競争の軸と競争強度の軸による四つの競争状況についての予想を示し、シミュレーション・モデルによって四つの状況における一定期間競争後の予想生産性分布が再現できることを確認した。さらに、競争強度と現場生存率との間に累積指数分布に近い関係が観察された。また、国際競争における2国の賃金率と現場生存率との関係を調べ、リカード的コスト競争において平均すれば比較劣位な国の現場も「緩やかな競争」では生存可能性が高まるという「越境」現象を確認した。
著者
岩尾 俊兵 菊地 宏樹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.99-108, 2016-02-25 (Released:2017-02-25)
参考文献数
17

ダイナミック・ケイパビリティについて、多数の論者から多様な定義が行われてきた。しかし、「劇的な環境変化に対応する能力」というTeece流の代表的なDC定義下では、DCと業務能力を客観的に分離し研究するのが困難であるという指摘が、近年HelfatとWinterによってなされている。Helfat and Winter (2011) による上記の指摘とそれを乗り越えるための処方箋は、DCを単純に企業成長の源泉として捉え直すというものだと考えてよい。彼女らの論点は、その意味で、エディス・T・ペンローズの『企業成長の理論』の観点との類似点を見出しうる。
著者
秋池 篤 岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.12, no.10, pp.699-716, 2013-10-25 (Released:2016-07-25)
参考文献数
22

本稿では経営学におけるイノベーション研究の嚆矢のひとつともいえるAbernathy and Clark (1985) を取り上げる。彼らはイノベーションに技術/生産の軸に加えて、市場/顧客の軸を導入し、イノベーションを四つに類型化した(変革力マップ)。これは、Christensen の一連の研究の基礎となっている。しかしながら、Abernathy and Clark (1985) では市場/顧客の観点にあまり重きを置いていなかった。本稿では、その後の主要な研究を紹介、Abernathy and Clark (1985) との対比をしていくことで、最終的に、Christensen によって市場/顧客の重要性が認識されるに至ったことを示す。その上で、あるべき変革力マップ像を提示する。
著者
岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.67-76, 2015-02-25 (Released:2016-02-25)
参考文献数
4

This technical note introduces and expounds routine dynamics, the research field that are getting widespread attention in management science. It is found that there are some key points in routine dynamics. Routine dynamics sees change of organizational routine (OR) as an ordinal thing based on the observations of university-related organizations. For this kind of change, organizational agents have important effects. Agents refer ostensive aspect of OR as a rule, but improvise concrete actions depending on the situations. After that, interactions among agents select and retain new ORs. Organizations change in this way from the routine dynamics viewpoint. Routine dynamics is a fruitful view, but some unsolved questions also exist.