著者
青木 輝夫 本山 秀明 竹内 望 的場 澄人 堀 雅裕 八久保 晶弘 山口 悟 田中 泰宙 岩田 幸良 杉浦 幸之助 兒玉 裕二 藤田 耕史 朽木 勝幸 庭野 匡思 保坂 征宏 橋本 明弘 谷川 朋範 田中 泰宙 植竹 淳 永塚 尚子 杉山 慎 本吉 弘岐 下田 星児 本谷 研
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

グリーンランド氷床上での現地観測から、涵養域ではアルベド低下に対するブラックカーボン(BC)等積雪不純物の寄与は小さく、積雪粒径増加効果の方が大きいことが分かった。また2012年7月の顕著な表面融解には下層雲からの長波放射が効いていた。消耗域では表面の不純物中に微生物が大量に含まれ、アルベド低下へ大きく寄与していた。衛星観測から2000年以降の氷床表面アルベドの低下原因を解析した結果、涵養域では積雪粒径の経年増加が主要因で、消耗域では裸氷域と微生物を含む暗色域の拡大が原因であった。内陸域で深さ223mの氷床コアを掘削し、その解析からBC濃度は1920-30年に現在の数倍程度高いことが分かった。
著者
関 勝寿 岩田 幸良 柳井 洋介 亀山 幸司
出版者
土壌物理学会
雑誌
土壌の物理性 (ISSN:03876012)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.35-44, 2023-11-20 (Released:2023-12-18)
参考文献数
16

土壌の水分特性曲線の近似ではvan Genuchten のVG モデルが広く使われているが,団粒構造が発達した黒ボク土のような土壌では,VG モデルを足し合わせるDurner(1994) のdual-VG モデルがより適している.本研究では,SWRC Fit のdual-VG モデルによる非線形回帰のアルゴリズムを改良した.すなわち,水分特性曲線を高水分領域と低水分領域に分割し,それぞれをVG モデルで近似して得たパラメータをdual-VG モデルの初期値として与えて近似するという手法である.日本全国のアスパラガス圃場を中心とした試験圃場の実測データによりこの手法の精度を検証した.開発された手法により,検証されたすべての土壌において大域解とほぼ等しい適合度の曲線が得られることが示された.また,修正AIC によるVG モデル,dual-VG モデル,dual-VG-CH モデル(dual-VG モデルにおいてα1=α2 と したモデル)の比較をしたところ,黒ボク土,低地土,褐色森林土において,dual-VG モデルが最も適している試料が多いことが示された.
著者
亀山 幸司 岩田 幸良 宮本 輝仁 北川 巌 久保田 幸
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.I_119-I_126, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
30

本研究では,有機物が不足する砂質土に対して,国内において入手が容易な木質バイオ炭と牛ふん堆肥の混入が土壌の物理・化学的特性に及ぼす影響について検討した.バイオ炭混入割合の増加により,全炭素,陽イオン交換容量(CEC),pH,易有効水分量,1 mm以上のマクロ団粒の割合が有意に増加した.また,バイオ炭を堆肥と混合施用した場合,全炭素,pH,CEC,1 mm以上のマクロ団粒の割合が有意に増加した.更に,バイオ炭と堆肥の混合施用によりCECが相乗的に増加する可能性が考えられた.ただし,バイオ炭単独の施用では混入割合の増加と共に易有効水分量が増加する効果が見られたが,バイオ炭と堆肥の混合施用の場合は易有効水分量の増加が抑制された.今回の試験結果から,砂質土に対して木質バイオ炭と牛ふん堆肥を混合施用した場合,保肥性の改善やマクロ団粒の増加が期待できる一方,易有効水分量の増加が抑制されることやpHの急激な増加に留意する必要があると考えられた.
著者
広田 知良 古賀 伸久 岩田 幸良 井上 聡 根本 学 濱嵜 孝弘
出版者
北海道農業研究センター
雑誌
北海道農業研究センター研究資料 (ISSN:13478125)
巻号頁・発行日
no.69, pp.1-13, 2011-09

2010年の気象の特徴は,これまでの北海道の夏季冷涼で梅雨がないという気候条件とは異なり,夏季(6~8月)の統計開始以来の記録的高温(全道平均で+2.3℃)と併せて7~8月の多雨,さらに春先の低温が重なった点にあった。平年より2℃以上の記録的な高温は,作物の生育を過度に促進し,収穫までの生育期間を大きく短縮するとともに,多雨による多湿条件が病害を助長した。さらには春先の低温・多雨による播種の遅れや初期生育の不良の影響が重なったため,多くの畑作物(小麦,ばれいしょ,てんさい,大豆を除く豆類)の収量が大きく低下した。北海道において夏季の高温条件による畑作物の不作は,北海道開拓以来はじめてのことである。また水稲も作況指数が98と極端な高温年では初めて平年を下回った。気象庁温暖化予測情報第6巻による温暖化予測シナリオ(SRES-A2)と比較すると 2010年の夏季気温は,2100年頃,またはそれを上回っていた。これからは4年に1度程度で生じる冷害と併せて,4~6年程度毎に生じる高温,および今後の北海道の夏季に梅雨の発生が頻発するかについては, 異常気象が北海道農業に及ぼす影響を考える上で,重要な研究・技術開発課題となると考える。したがって,寒地にある北海道といえども冷害のリスクに備えながらと温暖化に対しても適切に対応するための技術開発が必要である。