著者
渡辺 勝敏 一柳 英隆 阿部 司 岩田 明久
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.69-83, 2014-11-05 (Released:2016-12-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The population of the botiid Parabotia curtus in the Katsura River, Lake BiwaYodo River system, Kameoka, Kyoto Prefecture, Japan, the only one recorded in the Kinki region since the year 2000, was subjected to a population viability analysis (PVA) based on demographic data between 2006 and 2013 (8 years). Count-based and age-structured models with several conditions for density-dependence, carrying capacity, migration rate, and bias in population estimation (48 settings in total) were used for calculating the quasi-extinction probability within 50 years (extinction threshold <10 individuals), using computer simulations. The estimated population for the 8 year period fluctuated from 200 to 2,300 individuals (average ca. 935, with a coefficient of variation of 66%). PVA demonstrated a significant extinction risk for this population (23–82% extinction in 45 of 48 settings). Although further population monitoring is necessary for a more precise evaluation, we conclude that this population faces a real extinction risk. Sensitivity analysis suggested several requirements for effectively enhancing population viability, i.e., restraining large biotic and abiotic environmental perturbations to avoid extreme depression of the recruitment of young, enhancing winter survival, and promoting upstream migration into the spawning site.
著者
岩田 明久
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.133-141, 2006-12-05
参考文献数
11
被引用文献数
4

現在、アユモドキLeptobotia curtaの天然個体群は岡山県の二カ所と京都府の亀岡のみにしかなく、日本の淡水魚で最も絶滅の危険性が高い種の一つとされる。本種は、水田に取水するために灌漑用ゴム布引製起伏堰が稼働した後に、水位の急激な上昇で水没する陸生植物の繁茂した堰上流部のうち、緩傾斜が続く泥底止水城浅所のごく狭い範囲に産卵する。しかも、産卵日は水位の上昇が止まった直後の一日から二日間のみという集中的な産卵習性を持つ。仔魚には3-4週間浮遊しながらミジンコ類を専食するための安定した一時的水域が必要である。一方、稚魚から成魚の環境要求性は狭くない。従って、本種の存続はひとえに産卵場と仔魚の育成場所の存在にかかっている。このような場所はモンスーン地域の雨季に、河川水位の急激な上昇で水没する氾濫原や河跡湖の岸辺といった、水田生態系が作出される以前の始源的状態を保持しているといえる。現在、この条件を満たす箇所は用排兼用型灌漑のもとに在来水田農業が営まれる、用水路に続く遊水地や灌漑堰のある河川支流にごく僅かに残されているにすぎない。そして、このような場所は水田農地・河川改修で最初に消失する部分である。アユモドキのような在来水田農業に依存した生物を存続させるには、水田周辺の用排水路・小溝・河川支流等といった場所に残存するモンスーン気候遣存環境の維持と再創出を強く目指さなければならない。
著者
岩田 明久 田 祥麟 水野 信彦 崔 基哲
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.373-388, 1985

ドンコ属魚類について再検討を行なった.ドンコ属は, 1) 平坦な骨質隆起が眼の背方上部にある事, 2) 前鯉蓋骨に棘がない事, 3) 鋤骨に歯がない事, 4) 鯉孔は目の下方まで達する事, 5) 両眼間隔は眼径より大きい事, 6) 背鰭前部鱗は鼻孔後方に達する事などで定義される.該当種はドンコ<I>Odontobutis obscuraobscura</I>, カラドンコ<I>O.o.potamophila</I>, セマダラドンコ (〓〓〓〓〓) <I>O.o.interruta</I>, コウライドンコ (〓〓〓) <I>O.platycephala</I>で, 後2者は新亜種および新種である.<BR>コウライドンコ<I>O.platycephala</I>は頭部側線感覚系において孔器列の前鯉蓋下顎列上にふたつの感覚管を有する事で他のドンコ類と明瞭に区別される.カラドンコ<I>O.o.potamophila</I>とセマダラドンコ<I>O.o.interrupta</I>は眼上列眼後部にひとつの感覚管を有する事でドンコO.o.obscuraと区別される.カラドンコ<I>O .o.potamophila</I>とセマダラドンコ<I>O.o.interrupta</I>の差異は前者が眼下列と眼前頬縦列が分離しているのに対し後者はそれらが連続している事である.また後者の体側背方には明色帯が縦走するため暗色鞍状斑は中断される.<BR>ドンコO.o.obscuraは西日本, カラドンコ<I>O.o.potamophila</I>は中国に分布する.セマダラドンコ<I>O.o.interrupta</I>は韓国の錦江以北の西韓亜地域に, コウライドンコ<I>O.platycephala</I>は東韓亜地域北部を除く韓国全土にそれぞれ分布している.
著者
岩田 明久 田 祥麟 水野 信彦 崔 基哲
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.373-388, 1985-02-20 (Released:2011-02-23)
参考文献数
36

ドンコ属魚類について再検討を行なった.ドンコ属は, 1) 平坦な骨質隆起が眼の背方上部にある事, 2) 前鯉蓋骨に棘がない事, 3) 鋤骨に歯がない事, 4) 鯉孔は目の下方まで達する事, 5) 両眼間隔は眼径より大きい事, 6) 背鰭前部鱗は鼻孔後方に達する事などで定義される.該当種はドンコOdontobutis obscuraobscura, カラドンコO.o.potamophila, セマダラドンコ (〓〓〓〓〓) O.o.interruta, コウライドンコ (〓〓〓) O.platycephalaで, 後2者は新亜種および新種である.コウライドンコO.platycephalaは頭部側線感覚系において孔器列の前鯉蓋下顎列上にふたつの感覚管を有する事で他のドンコ類と明瞭に区別される.カラドンコO.o.potamophilaとセマダラドンコO.o.interruptaは眼上列眼後部にひとつの感覚管を有する事でドンコO.o.obscuraと区別される.カラドンコO .o.potamophilaとセマダラドンコO.o.interruptaの差異は前者が眼下列と眼前頬縦列が分離しているのに対し後者はそれらが連続している事である.また後者の体側背方には明色帯が縦走するため暗色鞍状斑は中断される.ドンコO.o.obscuraは西日本, カラドンコO.o.potamophilaは中国に分布する.セマダラドンコO.o.interruptaは韓国の錦江以北の西韓亜地域に, コウライドンコO.platycephalaは東韓亜地域北部を除く韓国全土にそれぞれ分布している.