著者
喜田弘司 坂本 久 島津 秀雄 垂水 浩幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.200-212, 2007-01-15
被引用文献数
5 2

近年,個人情報がP2P ファイル共有システムによって流出したというニュースが連日報道されており社会問題になっている.この対策としてP2P ファイル共有システムの使用を禁止するシステムが多く提案されている.しかしながら,ユビキタス時代の社会システムを考えると,ファイル共有ソフトウェアは利用禁止にはできない.そこで我々はファイル共有システムをセキュアに利用する環境を提供する「ファイルアクセス制御エージェント」を開発した.このエージェントはPC に常駐し,すべてのファイルアクセスを監視して,未知のプログラムからのファイルアクセスに対してはアクセスを禁止する.たとえば,あるワープロで作成したファイルは,そのワープロやファイル管理ツールなどからしかアクセスできない環境を提供する.アクセスしているファイルから見て未知のプログラムであるか既知のプログラムであるかは,今回開発した「ファイル利用コンテキストベースアクセス許可判定技術」を使って自動判定する.この技術は,ユーザのGUI 操作やプロセスの親子関係,必要があればユーザとの対話でアクセス権を判断する.これによりユーザが知らないタイミングで知らないプログラムから情報漏えいすることを防止することができる.実験により,本エージェント動作環境下で,これまでと同様にP2P ファイル共有システムとアプリケーションの両方を利用することができた.さらに,ウィルスによる情報漏えいも防止できることを確認した.In recent years information leakage problems via P2P (peer-to-peer) file sharing systems, such as Winny, emerge as a social issue. Countermeasure systems that prohibit the use of P2P file sharing systems have been launched. However, we consider the solutions are NOT feasible according to analysis of the use of P2P file sharing systems. In this paper we propose a file access control software agent that provides users to use P2P file sharing software in safety. The agent is installed on each PC including those for private use. It monitors all file accesses and blocks them from unauthorized applications. For example, ONLY Microsoft Word and Explorer are allowed to access *.doc files. Users have been sharing files such as MP3 files, AVI files and so on using a P2P file sharing system. On the other hand, users have confidential files that should not be shared on P2P file sharing system. We can avoid such inappropriate sharing by blocking accesses to confidential files. The agent monitors GUI operations and analyzes process behaviors to detect such critical accesses. We have experimented and confirmed that the agent can detect illegal accesses to confidential files without inhibiting P2P file sharing systems for their private use.
著者
柴田 晃宏 富沢 伸行 二瓶 克己 島津 秀雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.414-415, 1997-09-24
被引用文献数
1

本稿では, ユーザサポート部門のための情報検索ツールであるWWW版Help Desk Builderの開発方針について示す。情報機器等のハイテク機器の社会への浸透に伴い, メーカではエンドユーザに対する技術サポートの問題が顕在化してきている。パソコンを例にあげると, コンピュータの専門知識のない一般ユーザにとっては製品の機能よりも利用段階での技術サポートの方が切実な問題であるため, 電話, FAX等によるヘルプデスクサービスが提供されている。とこるが最近の急激なパソコンの普及に伴ってヘルプデスク利用者が急増し, 即時の対応が困難になってきている。そこでヘルプデスク業務を効率化させる種々の機能を持った支援システムが構築されている。これに関しては, 問い合わせ処理の迅速化, 問題解決事例ベース検索等の機能を持つケライアントサーバ版Help Desk Builderを既に開発し, 製品化した。一方で, こういった一対一の対話による丁寧な支援が常に必要なのかどうか見直す必要も出てきている。例えば, 企業内の情報システム導入に伴う技術サポートにおいてシステムのユーザの問題解決をヘルプデスクだけで対処しようとすると, 当面の問題としてその立ち上げや運用のコストが容認し難い規模に膨らんでしまう。この場合, できるかぎりユーザ自身に問題を解決してもらうのが現実的な対処法となる。そこで, 過去の問題解決の事例や技術情報を利用者側に直接公開して問題解決を支援するなどの取り組みが行われ始めている。ヘルプデスクからユーザに対しての情報公開は, 上記の例の社内向けサポートに限らず, メーカの一般ユーザサポートの場合も同じく重要である。そこで我々は, 社内ネットワークやインターネットを経由してユーザサポート情報を幅広いユーザに対し公開するためのツールWWW版Help Desk Builderを開発した。
著者
柴多 直樹 島津 秀雄 高島 洋典
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.2246-2247, 1989-10-16
被引用文献数
1

筆者らは先に文献において、対象を長調の童謡に絞り、扱う音階と和音は自然長音階とその上の三和音と限定してニューラルネット(以下ANNと略記)によって行った和音付けについて報告した。そこで得られた知見をもとに、取り扱う音階を12音音階に拡張し、また当所で開発した自動編曲システムに実装して作成した演奏出力につき主観評価を行った結果について報告する。
著者
藤田 直毅 西村 健士 島津 秀雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.35-36, 1997-03-12

ベクトル空間法は, 文書内の単語の出現頻度などを基に文書をあるベクトル空間の一点に対応させ, 対応する点と点との距離に基づいて文書の検索を行なう手法で, 1960年代から実験されてきた SMART が本手法の適用例として有名である. SMART の応用例は, USENET 上の FAQ を対象とした検索システムFAQ Finder が知られている. ベクトル空間法の特徴としては, 表面的ではあるが意味的な検索ができること, 対象文書中に構文解析ができないような文や図表を含んでいても動作する頑強性を備えていること等が挙げられる. 本稿では, 1本手法をヘルプデスクにおける支援システム, 特に電子メールを利用して顧客対応を行うシステムヘ適用した事例を紹介する. はじめに, ヘルプデスクで日々生成される文書, つまり, 問い合わせとその回答との組の Q & A 事例を対象とする検索の問題点について整理し, 次に, 実際に本手法を適用して開発した類似文書検索システムを紹介する.
著者
西村 健士 島津 秀雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.265-266, 1992-09-28

われわれは、科学技術論文中に記述されている種々の情報 : 分野の課題、研究手法、新規性、応用のヒントなど(これらを"主題"と呼ぶことにする)を予め設定しておき、各主題が論文のどの部分に書かれているか自動的に判定し、節のタイトルと各主題とをメニューとして提示する要約システムを提案した。同システムでは、読み手がメニューの一項目を選択すると、その主題に対応する原文部分が反転表示される。[figure]図1のシステムを構築するに当たっては、「情報処理学会第12回全国大会講演論文集3」中の論文100件(以降、題材Aと呼ぶ)の序節と最終節を対象に、主題の分類作業と主題自動認識手法の検討を行なった。その結果、「以下に手順を説明する」など、主題の記述範囲を明示的に示す表現("キー・センテンス"と呼ぶ)を集中的に解析するのが有効であることを報告した. 図2にシステムの主題認識部の処理フローを示す。図2において、 表現パターンの照合は形態素解析後に文節に付与された各種属性(主に主題表現や主述語の自立語概念)をもとに行なわれる。題材A論文は情報工学分野に限られていた。本稿では、1. 主題分類とその論文中での出現パターン2. 主題分類認識におけるキー・センテンス利用の有効性の2つに関して本手法の分野移行性を評価したので報告する。新たな題材として、「日本機械学会論文集58巻551号」(1992-7)のA編、B編、C編のそれぞれから5件(以降、題材Bと呼ぶ)、「応用物理第6上巻」(1992)の第1号から第7号までの「研究紹介」欄から15件(以降、題材Cと呼ぶ)、計30件の論文を無作為に抽出した。題材C中には、最新研究成果の発表を目的とするものの他に、最近の技術動向の概説記事も含まれている。以下、序節と最終節に分けて検討結果を説明する。