著者
山川 慶 金城 英雄 島袋 孝尚 西田 康太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.813-817, 2021-09-25 (Released:2021-11-12)
参考文献数
6

我々は広範囲脊柱管狭窄および黄色靭帯骨化症を合併した軟骨無形成症の1手術例を経験した.症例は42歳女性で主訴は両下肢の筋力低下としびれである.神経学的所見では両側大腿後面から下腿外側のしびれ,前脛骨筋,長母趾伸筋でMMT 1と著明な低下,両側膝蓋腱,アキレス腱反射の減弱を認めた.画像所見ではMRIでTh10/11,L1/2,2/3,3/4,4/5に脊柱管狭窄を認め,CTでTh10/11に黄色靭帯骨化を認めた.術式はTh10/11に対し椎弓切除術を,L1/2-L4/5に対し棘突起縦割式後方除圧術を行った.L4/5は腰椎の過前弯と骨盤前傾により術野が非常に深く除圧に難渋した.術後3日目,ドレーン抜去後の硬膜外血腫による下肢の痺れの増悪を認めたが術後2週目で改善した.下肢筋力に関して術後6ヵ目の時点では明らかな改善は得られていない.今後,脊柱変形に注意して経過を観察する必要がある.
著者
藤本 泰毅 島袋 孝尚 山川 慶 金城 英雄 當銘 保則 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.195-199, 2020

<p>【要旨】症例は39歳,女性.1年9ヵ月前より両下肢しびれ,2ヵ月前より右下肢筋力低下が出現し,他院を受診した.MRIにて胸椎硬膜内髄外腫瘍を指摘され当科へ紹介された.両鼠径部以下のしびれ・感覚鈍麻,右下肢腸腰筋以下にMMT3の筋力低下を認めた.MRIでT10/11高位に右腹側にT1・T2で等信号,ほぼ均一に造影される硬膜内髄外腫瘍があり,さらにその左背側には信号強度の異なる腫瘍を認め,脊髄は強く圧排されていた.手術はT10・11還納式椎弓形成を用いて腫瘍摘出術を施行した.術中迅速病理では右腹側は髄膜腫,左背側は神経鞘腫であった.肉眼的に腫瘍を全摘後,硬膜焼灼処置を行った.永久病理結果も術中迅速病理と同様であった.術後3ヵ月のMRIでは腫瘍再発を認めず,術後1年の現在は両下肢しびれ軽減し,下肢筋力も正常である.</p>
著者
今井 さくら 島尻 郁夫 比嘉 勝一郎 親富祖 徹 島袋 孝尚 金城 英雄 金谷 文則 金城 幸雄 宮平 誉丸 大城 義竹
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.563-566, 2019

<p>頚椎特発性硬膜外血腫は初診時片麻痺で発症する場合があり,脳梗塞と誤診され抗血栓療法が行われると麻痺が悪化することがある.また脊椎手術の患者の高齢化に伴い,抗凝固薬や抗血小板薬を内服している患者が増加しており,周術期の休薬の是非や休薬期間が解決すべき課題となっている.今回初診時脳梗塞と誤診され抗血栓療法により麻痺が悪化した1例と,抗血小板薬の休薬により術後脳梗塞を発症した1例を経験したので報告する.【症例1】80歳男性.突然後頚部痛が出現し救急搬送,右半身麻痺を認め,TIAが疑われヘパリン点滴治療が開始された.麻痺は徐々に増悪し,頚椎MRIで頚椎硬膜外血腫を認めた.緊急手術により術後麻痺は改善した.【症例2】84歳男性.後頚部痛と左半身麻痺を認め救急搬送,頚椎特発性硬膜外血腫と診断した.緊急手術により麻痺は改善傾向であったが,術後4日目に意識レベル低下と右半身麻痺を認め,頭部MRIで広範囲脳梗塞を認めた.</p>
著者
山川 慶 野原 博和 宮里 剛成 島袋 孝尚 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.574-577, 2019

<p>我々は比較的稀なガス含有腰椎椎間板ヘルニアの1手術例を経験した.症例は54歳男性で主訴は右臀部から下肢への放散痛である.CTでL4/5椎間板及びL5椎体レベルの脊柱管内やや右側にガス像を認め,MRIでL5椎体レベルにT1,T2,STIRで境界明瞭な低信号の腫瘤を認めた.以上からガス含有腰椎椎間板ヘルニアと診断し手術を行った.術中所見で右L5神経根の肩口から腋窩部にかけてガス含有椎間板ヘルニアを認めた.L5神経根は圧排され緊張が強く可動性がほとんど見られなかった.硬膜とヘルニア腫瘤の癒着を剥離している際に「パン」と破裂音とともにヘルニア腫瘤が縮小.縮小した腫瘤はピースバイピースで摘出した.病理組織像は硝子化をともなった線維結合組織であった.術後12日目のCTではL4/5椎間板腔,脊柱管内にガス像を認めたが3カ月目ではほとんど消失していた.現在右下肢痛無く経過している.</p>
著者
比嘉 勝一郎 山川 慶 島袋 孝尚 金城 英雄 金谷 文則 屋良 哲也 勢理客 久 仲宗根 朝洋 宮里 剛成 野原 博和
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.258-262, 2019

<p>脊椎術後に発生する髄液漏には様々な経過があり,それぞれの状態に応じた治療がなされるが,時として治療に難渋する.今回,脊椎術後に発生した髄液漏の3例を経験したので報告する.【症例1】49歳女性.頚椎神経鞘腫再発に対し手術を施行,術後5週目創部に14 cm大の髄液漏による偽性髄膜瘤を生じた.頭痛はなく頚椎カラーの装用で経過観察行った.著変なく経過したが,腫瘤は術後9ヵ月目に数日で急速に縮小した.【症例2】63歳女性.頚椎後縦靭帯骨化症に対し椎弓形成術を施行,椎弓を持ち上げる際に髄液の漏出があった.術後ドレーン内に髄液を認め髄液漏と診断,腰椎スパイナルドレナージを行い改善した.【症例3】86歳男性.頚椎症性脊髄症の術後感染でデブリドマンを行った際に硬膜を損傷し,術後創部より髄液の漏出が持続した.数回手術を行うも改善しなかったが,ファーラー位を継続したところ徐々に髄液漏は減少し,遊離脂肪移植術を行い改善した.</p>
著者
比嘉 勝一郎 金城 英雄 前原 博樹 島袋 孝尚 中島 慶太 當銘 保則 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.636-640, 2018

<p>Langerhans cell histiocytosis(以下LCH)は,Langerhans細胞の増殖を特徴とする原因不明の疾患で,骨腫瘍全体の1%以下と稀である.今回,われわれは脊椎に発生したLCHの3例を経験したので報告する.【症例1】13歳男児.1ヵ月半前から胸背部痛があり受診した.Xp上T2椎体は圧潰し,PET-CTでT2・T9・S1椎体にFDGの集積がみられた.T2椎体の生検を行い単臓器多病変型のLCHと診断した.化学療法を行い,初診後4年の現在,再発はない.【症例2】8歳女児.1ヵ月前から両季肋部痛があり受診した.Xp上T9椎体は圧潰し,PET-CTで同部位にFDGの集積がみられた.生検を行い単臓器単病変型のLCHと診断した.BP製剤の内服を行い,初診後1年4ヵ月の現在,再発はない.【症例3】27歳男性.2ヵ月前から頚部痛と右上肢のしびれがあり受診した.MRI上C7椎弓右側に信号変化があり,PET-CTで同部位にFDGの集積がみられた.生検を行い単臓器単病変型のLCHと診断,初診後7ヵ月の現在,経過観察中である.</p>
著者
中島 慶太 金城 英雄 比嘉 勝一郎 島袋 孝尚 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.641-644, 2018

<p>症例:22歳女性.4ヵ月前より右下肢痛が出現し,近医整形外科を経て婦人科を受診した.骨盤内に腫瘍を認めたため当科に紹介された.初診時右大腿部外側に軽度の疼痛があり,アキレス腱反射は消失していたが,明らかな筋力低下はなく腹部膨満感などはなかった.MRIで骨盤内に直径約10cmの右S1神経孔に連続する腫瘍を指摘された.透視下に右S1神経孔より針生検を行い神経鞘腫と診断した.手術前日に栄養動脈の塞栓術を施行した.手術はまず腹臥位で後方よりアプローチし右仙骨椎弓を切除し,神経根尾側の腫瘍と神経根,仙骨前面との癒着を剥離した.その後砕石位で前方より経腹膜的にアプローチした.仙骨前面との癒着のため一塊で摘出できず,被膜内で核出し容量を減少した後に被膜ごと切除した.出血量は680mlで輸血は行わなかった.病理は神経鞘腫で悪性所見はなかった.術後明らかな神経脱落症状を認めず,術後2週で独歩にて退院,術後3ヵ月で再発はない.</p>
著者
比嘉 浩太郎 池間 康成 小浜 博太 島袋 孝尚 米田 晋 立花 真理 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.387-390, 2017

当院では前十字靭帯(以下ACL)損傷に対して解剖学的二重束再建を行っており,大腿骨孔はtranstibial法で作成している.H22年4月からH25年3月までに施行した解剖学的二重束ACL再建術を施行した16例中,術中に起きた合併症3例について報告する.症例1.大腿骨骨孔作成時にガイドピンの先端が大腿骨内で折損した.ガイドピンをハンマーで叩いて刺入したため髄内釘になってしまい,大腿骨内で折損した.症例2.術後のX線像にて大腿骨の前内側骨孔外に金属粉と思われる陰影を認めた.ガイドピンが弯曲したままドリルした事が原因と考えられた.症例3.脛骨の後外側骨孔を作成時,骨孔作成ガイドを倒しすぎたため顆間隆起を損傷した.【まとめ】解剖学的二重束ACL再建術において術中合併症を生じた3例を報告した.transtibial法で大腿骨孔を作成する場合は,ガイドピンが適切に挿入されていることと脛骨骨孔作成時は関節面の軟骨損傷を防ぐため骨孔刺入角度に注意する必要がある.