著者
新崎 義人 嶺井 陽 砂田 和幸 上門 あきの 仲榮眞 盛保 古川 浩二郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.105, 2021

<p>【はじめに】</p><p>近年、重症下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia 以下CLTI)症例に対する治療は、血行再建、創傷治癒、再生医療の発展により切断部位を最小限とし下肢を温存する救肢が求められている。CLTIをはじめとした足部潰瘍は難治性とされ、一度治癒に至っても再発率が高く、装具や足底圧計測器等を用いて再発予防を念頭に置いた評価、運動療法を行う必要がある1)2)。今回、閉塞性動脈硬化症によるCLTI に対し左下肢総大腿動脈- 膝窩動脈バイパス術、左第3-5 趾切断を施行された症例に対し歩行や足底圧の評価、短下肢装具の作成と患者教育を実施したので報告する。</p><p>【経過】</p><p>症例は70 代男性で既往歴に左被殻出血による右片麻痺(Brunnstromstage 上肢III、手指II、下肢III)を呈している。歩行時に左足をぶつけ、足趾に創傷及び潰瘍を形成した。精査の結果、CLTI と診断され、左下肢総大腿動脈- 膝窩動脈バイパス術、左第3-5 趾切断および植皮を施行された。術後1 日目(1POD)より理学療法を開始し、2POD より歩行を開始した。歩行はT-cane を使用しており、その特徴として術側である非麻痺側の立脚期に術創部への荷重が過多となっていた。歩行による再潰瘍形成が懸念されたため、足圧分布測定システム(go-tec 社:GP mobile date)を使用して裸足の状態、短下肢装具及び除圧パットを装着した状態での各々の歩行時の左下肢前足部への荷重負荷量を測定した。荷重負荷量の最大ピーク圧は裸足では1.6N/cm2、短下肢装具及び除圧パットでは、0.1N/cm2 であった。患者指導の際には、歩行指導として術側前足部に圧が集中しないように、揃え型歩行を促した。術創部の自己管理指導としては、毎日の創部観察を促した。その後53POD で創部管理の為、他院への転院となり、60POD で自宅退院となった。84POD の当院外来時では患部の創傷は無く、歩行を含むADL は自立していた。</p><p>【結語】</p><p>CLTI に対する運動療法についての報告は稀少であり、現時点では画一されたプロトコールや介入手法は確立されていない。またフットケアにおいても同様であり、対象者に応じた評価・介入が重要である。本症例においては、足圧分布測定システムを用いた評価、創部管理の介入が再潰瘍形成防止の一助となったと考える。</p><p>【参考文献】</p><p>1) 榊 聡子:重症下肢虚血の理学療法 トータルフットマネジメントの実際. PTジャーナル・第50 巻第9 号827-832, 20162) 松本純一:足部潰瘍の自己管理指導の実際. PTジャーナル・第50 巻第9 号 833-838, 2016</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>症例およびその家族に理学療法介入および本学会への症例報告に関する説明を実施し、同意を書面で得た。</p>
著者
平田 晃己 嶺井 陽 南部 路治 佐久間 博明 池宮 秀一郎 新里 朋子 石原 綾乃 相澤 直輝 大屋 祐輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.A-98_2-A-98_2, 2019

<p>【背景および目的】</p><p>当院では, 心肺運動負荷試験(以下CPX)実施中に, 毎分ごと被験者が指さしでBorg scaleを表出し自覚的運動強度評価を確認する. 症例によっては運動と同時にBorg scaleを表出するというdual taskが困難な場合がある. 我々はCPX中のBorg scaleの確認が困難となる因子を検討した.</p><p> </p><p>【対象と方法】</p><p>当院にて2014年1月7日から2017年12月6日の期間に症候限界性CPXを実施した心大血管症例を対象とし, AT到達時にBorg scale確認の可否によって可能群(のべ206名, 男性163名, 女性43名, 55.5±14.5歳)と不可能群(のべ21名, 男性15名, 女性6名, 72.7±11.1歳)に分けた. はじめに2群間の基本情報(年齢, 性別, NYHA , BMI, β遮断薬の有無, CPX経験回数), ラボデータ(NT-proBNP , Hb , eGFR , Alb , Na , K , Cl , AST, ALT , CRP), 心エコー検査結果(LVEF, E/A), CPXデータ(Peak VO<sub>2</sub>/W, Peak P<sub>ET</sub> CO<sub>2</sub> , VE/VCO<sub>2</sub> Slope)に関して単変量解析を実施した. 次にBorg Scale確認の可否を従属変数, 各項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施し, 抽出された因子に対してROC解析を実施した. 統計解析ソフトはJMP Pro ver13(SAS)を用いて5%未満を有意水準とした.</p><p> </p><p>【結果】</p><p>可能群に対して不可能群では, 年齢が有意に高く(P<0.01), CPX経験回数が有意に少なかった(P<0.01). Peak VO<sub>2</sub>/Wは有意に低かった(P<0.01). ロジスティック回帰分析の結果, 年齢が独立因子として抽出された(単位OR:1.13 , 95%CI:1.06-1.20 , P<0.001). 年齢に対するROC解析の結果ではカットオフ値が73歳(AUC:0.84 , 感度:0.71 , 特異度:0.88)であった.</p><p> </p><p>【考察および結論】</p><p>dual taskは, 各課題に対する処理能力と適切な注意配分・分割が必要とされる. 不可能群は, 運動耐容能の低下を認めており, CPX中のペダリングに対する負担が強く, 一方のBorg Scale表出が困難になったと考える. CPX実施においてBorg確認を困難にさせる因子は年齢であり, そのカットオフ値は73歳であった. 73歳以上の症例で初めてCPXを実施する際には, 丁寧な説明と準備が必要と考える.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は琉球大学臨床研究倫理審査において承認されており(承認番号1078), 「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施している. 研究の意義, 目的, 方法, および個人情報保護の手続きを院内に掲載し, オプトアウトできるよう環境を整え, 研究に対しては特に説明と同意は行っていない.</p>