著者
川原 由佳里 奥田 清子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.91-100, 2009-12-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
29
被引用文献数
3

本研究の目的は,看護におけるタッチ/マッサージに関する文献の統合的レビューを通じて,この領域における研究の進展状況と成果を確認することである.Cooperの統合的レビューの方法ならびに van Tulder et al.による研究のバイアスのリスクの評価基準を用いて分析を行った.その結果,ストレス状況下における看護師によるタッチにはストレス,不安,苦痛を軽減する効果があること,ナーシングホームやホスピスの入居者,がん患者へのハンドマッサージやフットマッサージには安楽や症状緩和の効果があること,全身/背部マッサージにはリラクセーション,疼痛緩和,皮膚温上昇の効果があることが明らかにされた.また会話しながらのタッチは会話のみの場合よりもストレス緩和の効果が高いなどの実践への示唆が得られた.研究の状況,母集団,タッチ/マッサージの方法,コントロール群,評価の指標やタイミングがいまださまざまであり,今後より厳密なコントロールのもとに追試を行っていく必要があることが考察された.
著者
川原 由佳里 田中 幸子
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

諸外国における高度看護実践の発展プロセスを調査した。海外での関連史資料の調査と米国の看護史専門家への聞き取り調査を行った。結果、高度実践看護は様々な変遷を辿り、関係職種との衝突と調整を経て、現行の教育認証、資格認定、権限を整備してきたこと、日本での導入においては看護学の基盤に基づく教育、保健師助産師看護師法での資格規定、検査、診断、処方に関する権限の医師法・薬剤師法を含めた法体系のもとでの整備が必要であり、とりわけ医師による医業独占を廃し、必要な権限を獲得すると同時に、ケアサイエンスとしての看護のアイデンティティと実践の基盤をより確かにすることが重要と考えられた。
著者
川原 由佳里 守田 美奈子 田中 孝美 奥田 清子 本江 朝美 田中 晶子 五味 己寿枝
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.46-55, 2009-06-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究の目的は, ①触れるケアをめぐる看護師の経験, ②臨床のなかでの触れるケアの位置づけ, そしてアロマセラピストの語りとの比較を通じて③看護における触れるケアの特徴を明らかにすることである. 看護師 13 名とアロマセラピスト 4 名に面接を行い, 参加者の語りを身体論的な観点から分析した. 結果, 看護師は生活援助やコミュニケーション等のさまざまな場面で, 直観的に相手のニーズを把握し, 即応的に触れるケアを行っていた. 触れている最中, 看護師は自らの手に感じられる相手の状態に集中し, 相手の心身の変化を感じとっていた. 看護師たちは触れるケアの効果を確信をもって語り, そうしたケアに看護職としての喜びを見出していたが, 治療中心, 効率性優先の臨床では, 触れるケアは特別な価値をもつものとは認識されず, その体験を誰かと共有することも少なかった. 看護師自身にも触れるケアの価値そのものが認めづらい現状が明らかになった.
著者
守田 美奈子 吉田 みつ子 川原 由佳里 樋口 康子 吾妻 知美 西村 ユミ 池川 清子 稲岡 文昭 坂本 成美
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、看護学の体系化に向けて最も重要な学的基盤としての看護哲学の確立をめざすことを目的とした。ここ数十年の間に、わが国においても看護の研究論文は増え、新たな看護の知も蓄積されつつある。看護という現象が、経験の中にうずもれ、学的な体系として整理されにくかった大きな理由は、看護という現象の複雑さや深みというものが、既存の理論や従来の科学的学問観で捉え、明らかにしていくことに困難さを伴うものであったからだといえる。しかし、その違和感を問うことに看護の学的基盤を創るエッセンスがあり、「看護とは一体何なのか、どのような現象なのか、どのような特徴があるのか」といった問いを追究することがことが必要なのである。本研究は、このような問題意識から始まり、これまでの看護理論家の思索の足跡をたどりながら、それを問い直し、対話をはかることによって次の各課題についての考察した。1.看護哲学の必要性(看護哲学の課題、わが国の看護哲学に求められているもの)2.看護のアート(「看護のアート」とは何か、看護のアートにおける「技術」の概念看護における全体性の概念、患者理解における直観概念の意義3.看護学の知のスタイル(看護のリアリティ、看護におけるアクチュアリティ)4.看護の科学と哲学(複雑系の科学の可能性、カオス理論と看護研究)