著者
吉田 みつ子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.49-59, 1999-03-25 (Released:2012-10-29)
参考文献数
37
被引用文献数
10 7

本研究は、我が国のホスピスにおいて、看護婦が死にゆく患者及びその死にどのように対応しているか、その対応にはどのような「死」観が関与しているか、について明らかにしたものである。1ホスピスに勤務する看護婦14名を対象に、参加観察法と半構成的面接法によってデータを収集した。分析はデータをコード化、カテゴリー化することによって行い、その結果の一部として以下のような看護婦の「死」観と対応を抽出した。[良い看とり] は、看護婦相互の間で共有されていた患者の死の迎え方の理想像を示すものであり、看護婦は〈身体的症状がコントロールされた死の過程/穏やかな死に際〉〈死までの過程を有意義に過ごした死〉〈家族が納得する死〉〈臨終時に家族に見守られた死〉を望ましい死の迎え方だととらえていた。[良い看とり] は、看護実践の指針となっており、患者がそのような死を迎えることが出来るようかかわろうとしていた。また、看護婦が[良い看とり]ととらえたかどうかが彼らが抱く感情にも影響をもたらし、[良い看とり] の場合には肯定的感情を、そうならなかった場合には否定的感情を抱いていた。また看護婦は無意識のうちに患者に対して [良い看とり] となるよう期待していた。
著者
吉田 みつ子 遠藤 公久 守田 美奈子 朝倉 隆司 奥原 秀盛 福井 里美 竹中 文良
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.133-140, 2004-02-01

本研究は,がん患者のサポートグループの効果について,疾患部位や満期を混在した男性/疾患混合群(男性群),女性/疾患混合群(女性群),男女混合/疾患混合群(男女群)の3群を比較検討した.プログラムは,ミニレクチャー,グループ,自律訓練法で,週1回14O分の5回連続ヤッションとした.28名を分析対象とし,抑うつ症状(OES-D),前向き姿勢,がんへの心理的適応感(MAO),グループの雰囲気・参加度等を分析したところ,男性群は統計的に有意な変化はなかつたが,女性群,男女群はグループヘの参加によつて絶望感づ減少し,がんへの適応感づ増加した.以上より,心ずしも同一疾患のグループ編成でなくてもグループの効果が認められることが示唆された.
著者
守田 美奈子 吉田 みつ子 川原 由佳里 樋口 康子 吾妻 知美 西村 ユミ 池川 清子 稲岡 文昭 坂本 成美
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、看護学の体系化に向けて最も重要な学的基盤としての看護哲学の確立をめざすことを目的とした。ここ数十年の間に、わが国においても看護の研究論文は増え、新たな看護の知も蓄積されつつある。看護という現象が、経験の中にうずもれ、学的な体系として整理されにくかった大きな理由は、看護という現象の複雑さや深みというものが、既存の理論や従来の科学的学問観で捉え、明らかにしていくことに困難さを伴うものであったからだといえる。しかし、その違和感を問うことに看護の学的基盤を創るエッセンスがあり、「看護とは一体何なのか、どのような現象なのか、どのような特徴があるのか」といった問いを追究することがことが必要なのである。本研究は、このような問題意識から始まり、これまでの看護理論家の思索の足跡をたどりながら、それを問い直し、対話をはかることによって次の各課題についての考察した。1.看護哲学の必要性(看護哲学の課題、わが国の看護哲学に求められているもの)2.看護のアート(「看護のアート」とは何か、看護のアートにおける「技術」の概念看護における全体性の概念、患者理解における直観概念の意義3.看護学の知のスタイル(看護のリアリティ、看護におけるアクチュアリティ)4.看護の科学と哲学(複雑系の科学の可能性、カオス理論と看護研究)