- 著者
-
橋戸 円
井上 栄
川名 尚
- 出版者
- 一般社団法人 日本感染症学会
- 雑誌
- 感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.7, pp.785-789, 1995
単純ヘルペスウイルス (HSV) 感染細胞抗原を用いたELISAで, 性器ヘルペス患者血清抗体のHSVに対する型特異性を検討した. あらかじめ型特異蛋白であるgG-1とgG-2を抗原としたイムノドットにより, 1) HSV-1が分離され, かつgG-1抗体のみが単独陽性の群 (25例;1型群と呼ぶ), 2) HSV-2が分離され, gG-2抗体のみ単独陽性の群 (19例;2型群), 3) HSV-2が分離され, gG-1およびgG-2抗体とも陽性の群 (19例;両型群), の3群に分類した63例の血清について, HSV-1とHSV-2感染細胞抗原に対するIgM, IgA, IgG1, IgG3抗体の値 (吸光度) をそれぞれ比較検討した. 3群の血清のIgG抗体の反応性は2グループに大別された. すなわち, 2型群血清はHSV-1とHSV-2感染細胞抗原にほぼ同程度に反応した. それに対して, 1型群および両型群の血清はいずれもHSV-2感染細胞抗原よりもHSV-1感染細胞抗原に強く反応した. IgM抗体の型特異性は明瞭でなかった. 両型群に属する血清のIgG抗体がHSV-1感染細胞抗原の方に強く反応した理由としては, 過去に感染したHSV-1に対するメモリーB細胞が交差反応抗原であるHSV-2によって活性化されたためと考えられた (抗原原罪現象). 血清中の抗体から感染したHSVの型を推定することは, 感染細胞抗原を用いるELISAでは難しいことが確認された.