著者
渡邊 明寿香 仲座 舞姫 石原 綾子 山本 和儀 伊藤 大輔
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.137-147, 2019-09-30 (Released:2020-06-25)
参考文献数
36

本研究の目的は、職場復帰後に生じると想定される問題に焦点を当てた介入コンポーネントを付加した集団認知行動療法の効果を検証することであった。うつ症状を主訴とした休職者21名(男性11名、女性10名、平均年齢40.52±8.45歳)に対して、週1回150分、計8回のプログラムが実施された。プロセス変数として、自動思考、認知的統制、行動活性化、環境中の報酬知覚、被受容感・被拒絶感に関する各尺度と、効果変数として、抑うつ・不安、社会機能、職場復帰の困難感に関する各尺度を介入前後で実施した。分析の結果、プロセス変数の改善がみられ、本プログラムの妥当性が示唆された。また、本研究のプログラムによって、抑うつや不安症状、社会機能の改善とともに、部分的には職場復帰の困難感が改善されたことが示された。さらに本プログラムの参加者の復職率は高く、脱落率は低かったことからも、職場の問題に焦点化した集団認知行動療法の有効性が示唆された。
著者
伊藤 大輔 渡邊 明寿香 竹市 咲乃 石原 綾子 山本 和儀
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.334-338, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
18

筆者らは, 心療内科クリニックのショートケアにおいて, 主にうつ症状によって休職に至った者を対象に, 職場に焦点化した集団認知行動療法 (WF-CBGT) の効果を予備的に検証した. WF-CBGTは, 職場での問題を積極的に扱いながら, 行動活性化療法, 認知療法および問題解決療法などを含んだ合計8回 (1回150分) のプログラムであった. 参加に同意した対象者16名は, 介入前および介入後に, 抑うつと不安症状, 社会適応状態, 職場復帰の困難感に関する自記式尺度に回答した. 分析の結果, 職場で必要な体力面の困難は有意傾向であったが, うつと不安症状, 社会適応状態, 職場復帰後の対人面の困難と職務に必要な認知機能面の困難については介入後に有意に改善することが示され, 中程度以上の効果サイズが得られた. さらに, プログラムを完遂した多くの参加者が職場に復帰し, 復職3カ月後も就労を維持していることが確認された. このことから, WF-CBGTは, 復職支援に有用な介入である可能性が示唆された.
著者
渡邊 明義 津田 徹英 早川 泰弘 三浦 定俊 淺湫 毅 中村 康 佐野 千絵 斎藤 英俊
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

彩色文化財の技法と材料について、日本とドイツの美術史研究者、伝統技術者、自然科学者が共同して研究調査を行った。研究期間中は互いの研究者が双方の国を毎年一回ずつ訪問し、あらかじめ選定しておいた現地で詳細な調査を行い、シンポジウムを開催し討議を行うなどして研究をすすめた。研究対象は、ドイツ側では主に南ドイツ(バイエルン地方)の中世彩色木造彫刻を取り上げたが、日本側では彫刻に限らず、絵画、工芸、建造物など広く関心を持って調査を行った。また彩色文化財そのものだけでなく、彩色に用いる顔料の製造工場や、金箔工房など、また各地の修復工房や作業現場でも調査研究を行い、彩色材料やその技法、修復技術への応用などについても相互の理解を深めるようにした。顔料分析については、ドイツにおいてはサンプリングによる試料の分析を積極的に行ったが、わが国の文化財については試料採取が困難なために、現場で試料を採取しないでそのまま顔料分析できるポータブル蛍光X線装置を開発した。この手法は対象作品表面からの測定になるため、彩色層に顔料を混合して用いているのか複数の顔料層か分析結果からだけでは判別できないが、実体顕微鏡を用いた観察と組み合わせることによって、確度の高い情報を得ることができた。本研究を通して、報告書に示すように多くの研究成果をあげることができた。一例としては、源氏物語絵巻物の顔料分析を初めて行い、白色顔料に従来想定されていた鉛を含む白色顔料(おそらく鉛白)だけでなく、カルシウムを含むもの(おそらく胡粉)、軽元素しか含まないもの(おそらく白土)、それにこれまで知られていなかった水銀を含む顔料の4種類を用いていることや、日本の彫刻彩色に緑色顔料として岩緑青以外に、砒素と銅を含むものや軽元素だけの顔料を用いていることを、初めて明らかにしたなどをあげることができる。
著者
二宮 和彦 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 箕輪 はるか 藤田 将史 大槻 勤 高宮 幸一 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 竹内 幸生 土井 妙子 千村 和彦 阿部 善也 稲井 優希 岩本 康弘 上杉 正樹 遠藤 暁 大河内 博 勝見 尚也 久保 謙哉 小池 裕也 末岡 晃紀 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 高瀬 つぎ子 高橋 賢臣 張 子見 中井 泉 長尾 誠也 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇 渡邊 明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として、福島県の帰還困難区域を中心として、100箇所で空間線量の測定と土壌の採取のフィールド実験を行い[1]、同時に計27箇所で土壌コア試料を採取した。本発表では、このコア土壌試料について分析を行ったので、その結果を報告する。土壌採取は円筒状の専用の採土器を用いて行い、ヘラを用いて採取地点で2.5 cmごとに土壌を切り取って個別にチャック付き袋に保管した。採取地点により、土壌は深さ20-30 cmのものが得られた。土壌を自然乾燥してからよく撹拌し、石や植物片を取り除いたのちにU8容器へ高さ3 cmに充填した。ゲルマニウム半導体検出器を用いてガンマ線測定し、土壌中の放射性セシウム濃度を定量した。なお、各場所で採取した試料のうち最低でも1試料は、採取地点ごとに放射性セシウム比(134Cs/137Cs)を決定するために、高統計の測定を行った。深度ごとの測定から、放射性セシウムは土壌深部への以降が見られているものの、その濃度は深度と共に指数関数的に減少していることが分かった。一方で土壌深部への以降の様子は土壌採取地点により大きく異なることが分かった。また、本研究の結果は同一地点で表層5 cmまでの土壌を採取して得た結果ともよく整合した[1]。[1] K. Ninomiya et. al., Proceedings of the 13th Workshop on Environmental Radioactivity 2017-6 (2017) 31-34.
著者
渡邊 明
出版者
福山市立大学都市経営学部
雑誌
都市経営 : 福山市立大学都市経営学部紀要 = Urban Management : Bulletin of the Faculty of Urban Management, Fukuyama City University (ISSN:2186862X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.83-100, 2013-03-15

これまでのナレッジ・マネジメントの取り組みの多くは,過去に創られた知識を蓄積・整理し,再活用するという視点で行なわれてきた.我々の研究は, 物語コーポレーションのようなナレッジ・マネジメントの先進企業が,情報や知識そのものの管理ではなく,知識を保有するコミュニティの働きを高めるマネジメントを徹底的に行なっていることに注目した. 小林会長とのヒアリングでは,知識創造と共有が行われるアクティブなコミュニティを創設し,それをビジネスのコンテクストに明確に位置付けるかということに重点を置いた経営をやっていることが示された.物語コーポレーションでは, 知識創造プロセスの活動に応じた「場(知のプラットフォーム)」の設定が重要な意味を持つことになることを分析した. 創出された「場」の中でのインターセクター・ディスカッションは, ①将来に向けて創造すべき知識資産を可視化し,②個々のナレッジ・ワーカーの意識や行動を把握することを中心に環境の変化に対応して機能の変化をさせること及びそれが構造の変化をおこすものであることを分析した.
著者
北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 二宮 和彦 稲井 優希 箕輪 はるか 大槻 勤 木野 康志 小荒井 一真 斎藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 高宮 幸一 竹内 幸生 土井 妙子 阿部 善也 岩本 康弘 上杉 正樹 遠藤 暁 大河内 博 勝見 尚也 神田 晃充 久保 謙哉 小池 裕也 末岡 晃紀 鈴木 杏菜 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 高瀬 つぎ子 高橋 賢臣 張 子見 中井 泉 長尾 誠也 南部 明弘 藤田 将史 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇 渡邊 明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【研究背景】 2011年3月に起こった、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県を中心とする陸域に大規模な放射能汚染が起こった。事故後の2011年6月には、日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした有志の研究グループが、汚染状況の把握のための土壌採取のフィールド実験を実施した。これにより初期の汚染状況が明らかとなったが、航空機サーベイ等による汚染状況の把握は継続して行われているものの、実際に土壌を採取して汚染状況の詳細を把握する大規模な調査はそれ以降行われていない。事故から5年以上が経過し、土壌に沈着した放射性核種(主に放射性セシウム:134Csおよび137Cs)は環境中でその化学形態等を変化させ、土壌の深部への浸透や流出により、初期とは異なる分布状況に変化していることが予想される。帰還困難区域の除染作業が開始されようという状況で、土壌の放射性核種の汚染状況を把握するのはきわめて重要である。そこで本研究では、福島県内の帰還困難区域を中心として土壌採取のフィールド実験を行い、その分析により現在の汚染状況の把握することを目的に実施した。【調査概要】 本研究プロジェクトは、2016年6月から9月にかけての9日間、のべ176名で実施した。福島県内の帰還困難区域を中心として、公共施設等を選定したうえで、各自治体との情報交換を行い、除染が行われていない地点全105か所を土壌採取場所として選択した。まずはNaIシンチレーターもしくは電離箱を用いて地面から1 mおよび5 cmの空間線量の測定を行い、専用の採土器を用いて表層より5 cmの土壌を採取した。試料採取場所におけるばらつきを評価するために、1地点ごとに5試料の採取を実施し、5年間の環境中での放射性核種の移動状況を評価するために、土壌は表層部の0.0-2.5 cmと、深部の2.5-5.0 cmに分けて採取した。また放射性核種の移行過程をより詳しく調べるために、4地点につき1地点程度、深さ30 cmのコア試料の採取も行った。本講演では、この調査について概要を説明し、事故直後と5年後の比較などいくつかの初期結果について簡単に紹介する。より詳細な結果については、別の講演にて報告が行われる。
著者
五十嵐 康人 大河内 博 北 和之 石塚 正秀 吉田 尚弘 三上 正男 里村 雄彦 川島 洋人 田中 泰宙 関山 剛 眞木 貴史 山田 桂太 財前 祐二 足立 光司 中井 泉 山田 豊 宇谷 啓介 西口 講平 阿部 善也 三上 正男 羽田野 祐子 緒方 裕子 吉川 知里 青山 智夫 豊田 栄 服部 祥平 村上 茂樹 梶野 瑞王 新村 信雄 渡邊 明 長田 直之 谷田貝 亜紀代 牧 輝弥 佐藤 志彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

初期の放射性Cs放出には従来想定されていた水溶性サブミクロン粒子に加え,直径数μmの不溶性粗大球状粒子が存在することを初めて明らかにした。典型的な里山では再飛散由来のCs濃度は,都市部での結果と異なり,夏季に上昇し,冬季には低かった。夏季のCs担体は大部分が生物由来であることを初めて見出した。放射性Csの再飛散簡略スキームを開発し,領域エアロゾル輸送モデルを用いて森林生態系からの生物学的粒子による再飛散,ならびに事故サイトから継続する一次漏えいも含め,フラックス定量化-収支解析を行った。その結果、他のプロセス同様、再飛散は、地表に沈着したCsの減少や移動にほとんど寄与しないことがわかった。
著者
福岡 捷二 渡邊 明英 關 浩太郎 栗栖 大輔 時岡 利和
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.740, pp.31-44, 2003-08-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10
被引用文献数
2

我が国の洪水流は, 洪水位上昇時の時間変化率が大きい特徴を持っている. さらに, 大河川中下流域の河道横断面形状は低水路と高水敷からなる複断面形が採用されている. このことは複断面河道における洪水流の水理現象は, 洪水ごと, 河川ごとさらには, 河川の区間ごとに異なることを示しており, 複断面河道の洪水流を深く理解することが必要である. 本文では, 複断面河道における洪水流の非定常水理現象に焦点を当て, 洪水流の水理現象のうち, 特に河道内における貯留に及ぼす河道特性と洪水流特性の影響について詳細に検討した. これより, 洪水流の非定常性, 河道の平面形, 横断形などの断面形状および下流端条件が, 洪水流の流下に与える影響を明らかにし, 洪水流の河道内「貯留」の評価を行い, 今後の治水計画の新しい方向性を示した.
著者
松本 知大 渡邊 明子 髙木 寛 長谷川 靖司 中田 悟 田中 宏幸
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.9-14, 2018-03-31 (Released:2018-04-18)
参考文献数
11

我が国の関節疾患患者数は増加の一途を辿っており,健康寿命を縮め,介護が必要となる疾患であることから,有効な予防,改善策が望まれている.本研究では,関節軟骨成分の代謝に着目して,関節疾患に有効な食品素材の探索を行った.その結果,ノブドウエキスが炎症性サイトカインによるNFκBシグナルの亢進を抑制することで,ヒアルロン酸の代謝異常を改善することを見出した.また具体的な効果として,コラーゲン誘発関節炎マウスに対する関節炎発症抑制効果も示した.ヒト有効性試験においては,ノブドウエキス含有飲料を3ヶ月間摂取することで,生活活動時の膝関節の違和感,痛み,屈曲角度の改善がみられた.以上の結果より,ノブドウエキスには関節軟骨成分の代謝異常を改善する効果があり,ノブドウエキス含有飲料の摂取により関節疾患を予防,改善する効果が期待できる.
著者
小林 大 山口 宗慶 花井 知広 渡邊 明嗣 田口 亮 林 直人 上原 年博 横田 治夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.355, pp.39-44, 2003-10-01
被引用文献数
1

データの格納や提供といったサービスは今やIT基盤の中核であり,例えバグフィックスや機能向上のためのソフトウェア更新であっても,そのためにサービスを中断することは許容され難い,高可用なデータ格納・提供のためのアプローチの一つとして我々は自律ディスクを提案しているが,自律ディスクにおいてもサービスを停止すること無くシステム構成ソフトウェアの更新を行えることが肝要である.本稿では自律ディスクに対して高可用なシステム更新手法を提案する.提案手法では物理ノード内に複数の仮想ノードを構成し,仮想ノード間での論理的なデータ移動を用いることで無停止かつ僅かな性能低下でシステム更新を行うことが可能である.また本手法について実装し実験を行った結果を用いてその有効性を示す.
著者
吉原 朋宏 渡邊 明嗣 小林 大 田口 亮 上原 年博 横田 治夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.171, pp.185-190, 2005-07-06

我々が提案している並列Btree構造向けの並行性制御手法MARK-OPTが, アクセスパターンが各PE(Processing Element)で均一である環境において有効であることを示してきた.本稿では, アクセスパターンの偏りがある環境における従来手法との比較実験から, アクセス偏りによるMARK-OPTへの影響を考察し, MARK-OPTがアクセス偏りがある環境においても有効であることを示す.また, そのアクセス偏り除去のための有効な手段であるデータマイグレーションの並行性制御にMARK-OPTを用い, データマイグレーションが発生する頻度を変化させた場合の実験から, データマイグレーションによるMARK-OPTへの影響を考察し, MARK-OPTがデータマイグレーションの並行性制御として有効であることを示す.