著者
牧 輝弥 保坂 健太郎 北 和之 石塚 正秀 渡辺 幸一 五十嵐 康人 當房 豊
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

氷雲の形成を促す「氷晶核(氷核活性を持つ粒子)」の発生源は不明であり,その粒子密度は気候変動予測での不確定因子となる。その為,近年,分析・観測技術の向上に伴い検出可能となった大気浮遊微生物(バイオエアロゾル)の氷核活性へ学術的関心が集まるようになった。特に,微生物活性が高い森林からは氷核活性微生物が頻繁に放出されると推測されている。しかし,微生物の森林からの放出量は定かでなく,森林が氷晶核の主要発生源とは断定できない。そこで,本研究では,観測機器を完備した森林観測サイトにおいて,地上観測と高高度大気観測を併用することで,森林地表から高高度までの浮遊微生物の鉛直分布を明かとし,氷核活性微生物の森林からの放出量を追究しつつある。2019年度は,筑波実験植物園において,森林内と森林上空を浮遊する大気粒子を,ヘリコプターと建物屋上を併用して捕集した。大気粒子から微生物のゲノムDNA直接抽出し(培養を経ない),解析した結果,森林内には,数百種以上の細菌と真菌が浮遊しており,真菌(特にキノコ)が樹冠上から上空にまで浮遊し垂直分布していることが明らかになった。大気粒子試料から,20種程度の真菌と細が分離培養され,その内,3種で高い氷核活性が認められたため,氷核活性微生物が森林外へと放出されている強力な手がかりが得られた。今後,定量PCRによる氷核活性微生物の定量に取り組む。こうした風送微生物に関する研究成果への学術的評価は高く,大気科学雑誌Atmos. Environ.やエアロゾル研究(牧代表主著)に論文発表された。また,充実した研究成果から導き出される「微生物・キノコと雲形成の関連性」は社会的注目度も高く,科学テレビ番組(例:林先生の初耳学:MBSテレビ,ガリレオX:BSフジ)に取りあげられ,研究紹介執筆(空飛ぶ微生物ハンター:汐文社)や招待講演の依頼を受ける機会に恵まれた。
著者
西岡 拓哉 北 和之 林 奈穂 佐藤 武尊 五十嵐 康人 足立 光司 財前 祐二 豊田 栄 山田 桂太 吉田 尚弘 牧 輝弥 石塚 正秀 二宮 和彦 篠原 厚 大河内 博 阿部 善也 中井 泉 川島 洋人 古川 純 羽田野 祐子 恩田 裕一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

背景・目的東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、原子炉施設から多量の放射性物質が周辺地域に飛散・拡散し土壌や植生に沈着した。地表に沈着した放射性核種が今後どのように移行するか定量的に理解していくことが、モデル等により今後の推移を理解する上で重要である。重要な移行経路の一つとして地表から大気への再飛散がある。我々のグループのこれまでの観測で、山間部にある高線量地域では、夏季に大気中の放射性セシウムが増加していることが明らかになっている。夏季の森林生態系からの放射性セシウム再飛散過程を明らかにすることが本研究の目的である。観測2012年12月より浪江町下津島地区グラウンドにおいて約10台のハイボリュームエアサンプラーによって大気エアロゾルを高時間分解能でサンプリングし、Ge検出器で放射能濃度を測定している。この大気エアロゾルサンプルの一部を取り出し化学分析及び顕微鏡観察を行っている。2015年よりグラウンドおよび林内で、バイオエアロゾルサンプリングを月に1-2回程度実施している。また、感雨センサーを用い、降水時・非降水時に分けたサンプリングも行っている。200mくらい離れた林内でも同様の観測を行っている。さらに、パッシブサンプラーによる放射性核種の沈着フラックスを測定するとともに、土壌水分と風速など気象要素を自動気象ステーション(AWS)にて、エアロゾル粒子の粒径別濃度を電子式陰圧インパクタ(Electric Low-Pressure Impactor, ELPI)、黒色炭素エアロゾル濃度および硫酸エアロゾル濃度をそれぞれブラックカーボンモニタおよびサルフェートモニタにて連続的に測定している。結果と考察2015年夏季に行った観測と、そのサンプルのSEM-EDS分析により、夏季の大気セシウム放射能濃度は炭素質粒子濃度と正相関していることが分かった。夏季には粒径5μm程度の炭素質粒子が多く、バイオエアゾルサンプリングとその分析の結果、真菌類の胞子、特にキノコが主な担子菌類胞子が多数を占めていることが分かった。但し、降水中には、カビが多い子嚢菌類胞子がむしろ多い。大気粒子サンプルの抽出実験を行った結果、夏季には放射性セシウムの半分以上が純水で抽出される形態(水溶性あるいは水溶性物質で付着した微小粒子)であることもわかった。そこで、2016年夏季には、大気粒子サンプル中の真菌類胞子の数密度と大気放射能濃度の関係を調べるとともに、キノコを採取してその胞子の放射能濃度を測定して、大気放射能濃度が説明できるか、また大気粒子サンプルと同様に、半分程度の純水抽出性を持つか調べた。その結果、大気放射能濃度と胞子と思われる粒子の個数とは明瞭な正相関を示し、降水時には子嚢菌類が増加することが示された。また、採取したキノコ胞子の放射性セシウムは、半分以上純水で抽出され、大気粒子サンプルと同様に性質を示すこともわかった。但し、採取した胞子は放射能は高いものの、それだけで大気放射能を説明できない可能性がある。
著者
箕輪 はるか 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 二宮 和彦 稲井 優希 大槻 勤 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 高宮 幸一 竹内 幸生 土井 妙子 上杉 正樹 遠藤 暁 奥村 真吾 小野 貴大 小野崎 晴佳 勝見 尚也 神田 晃充 グエン タットタン 久保 謙哉 金野 俊太郎 鈴木 杏菜 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 髙橋 賢臣 竹中 聡汰 張 子見 中井 泉 中村 駿介 南部 明弘 西山 雄大 西山 純平 福田 大輔 藤井 健悟 藤田 将史 宮澤 直希 村野井 友 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 山守 航平 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【はじめに】日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として本研究プロジェクトを実施した。2016年6月から9月にかけて、のべ9日間176名により、帰還困難区域を中心とする福島第一原子力発電所近傍105箇所において、空間線量率の測定および土壌の採取を行った。プロジェクトの概要については別の講演にて報告するが、本講演では福島県双葉郡大熊町・双葉町の土壌中の放射性セシウム134Csおよび137Csのインベントリ、土壌深部への移行、134Cs/137Cs濃度比、また空間線量率との相関についての評価を報告する。【試料と測定】2016年6・7月に福島県双葉郡大熊町・双葉町の帰還困難区域内で未除染の公共施設36地点から深さ5 cm表層土壌を各地点5試料ずつ採取した。試料は深さ0-2.5 cmと2.5-5 cmの二つに分割し、乾燥処理後U8容器に充填し、Ge半導体検出器を用いてγ線スペクトルを測定し、放射性物質を定量した。【結果と考察】137Csのインベントリを航空機による空間線量率の地図に重ねたプロットを図1に示す。最大濃度はインベントリで137Csが68400kBq/m2、比放射能で1180kBq/kg・dryであった。インベントリは空間線量率との明確な相関がみられた。深部土壌(深さ2.5-5.0 cm)放射能/浅部土壌(深さ0-2.5 cm)放射能の比はおおむね1以下で表層の値の高い試料が多かったが、試料ごとの差が大きかった。また原子力発電所より北北西方向に134Cs/137Cs濃度比が0.87-0.93と明確に低い値を持つ地点が存在した。
著者
梶野 瑞王 石塚 正秀 五十嵐 康人 北 和之 吉川 知里 稲津 將
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

はじめに2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い大気中に放出された放射性Csは、東北・関東地方において広範囲に沈着した。事故約1年半後の2012年12月以来、避難指示区域内に位置する福島県浪江町・浪江高校津島分校の校庭において、放射性Csの大気濃度の長期間変動と、陸面に沈着した放射性Csの再飛散を評価するために、連続観測が行われて来た。本研究では、約30年と半減期の長い137Csを対象として、再飛散モジュールを実装した3次元物質輸送モデルと、避難指示区域内(浪江高校)と区域外(茨城県つくば市)の2地点の長期間大気濃度観測結果を用いて、東北・関東地方における再飛散を伴う137Csの収支解析を行った。期間は2012年12月から2013年12月までの約1年間を対象とした。手法モデル:ラグランジュ型移流拡散モデル(梶野ら, 2014)を用いた。気象庁メソ解析データ(GPV-MSM)を用いて、放射性物質の放出、輸送、沈着、反応、放射性壊変を解く。土壌からの再飛散は、浪江高校校庭におけるダストフラックス観測に基づいて開発された再飛散モジュール(Ishizuka et al., 2016)を用いた。植生からの再飛散については、メカニズムが明らかになっていないため、放出率は一定として137Csの航空機モニタリング結果による地表面沈着量(減衰率は放射性壊変のみ考慮)と森林面積および植物活性の指標としてGreen Fraction(Chen and Dudhia, 2001)を掛け合わせたものを用いた。観測:大気濃度は、浪江高校校庭および茨城県つくば市の気象研観測露場(Igarashi et al., 2015)でハイボリウムエアサンプラーを用いて捕集されたエアロゾル中の137Cs濃度の測定値を用いた。サンプリングの時間間隔はそれぞれ、浪江高校は1日間、気象研は1週間である。結果浪江における137Cs濃度は、冬に低く(0.1 – 1 mBq/m3)夏に高い(~1 mBq/m3)傾向が見られ、つくばにおける濃度(0.01-0.1 mBq/m3)に比べて1桁程度高かった。モデルにより計算された2地点間の濃度比は、観測の濃度比と整合的であった。土壌からの再飛散は、逆に冬に高く夏に低くなる傾向があり、絶対値は冬季の浪江の観測値を説明できるレベルであるが、夏季の濃度ピークを1-2桁程度過小評価した。解析期間中の原子炉建屋からの放出量は約106 Bq/hr程度(TEPCO, 2013など)であり、浪江の観測値を説明できるレベルではなかった(2-3桁程度過小評価)。植生からの再飛散計算結果は、浪江の季節変動をよく再現し、10-7 /hrの放出率を仮定すると、観測濃度の絶対値と同レベルとなった。依然、事故から5年が経過した現在でも再飛散のメカニズムは明らかにされておらず、観測・実験に基づいたメカニズムの解明研究の発展が望まれる。参考文献Chen and Dudhia, Monthly Weather Review, 129, 569-585, 2001.Igarashi et al., Progress in Earth and Planetary Science, 2:44, 2015.Ishizuka et al. Journal of Environmental Radioactivity, 2016, in press.梶野ら, 天気, 61, 79-86, 2014.TEPCO, 2014 原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果(平成26年3月)
著者
二宮 和彦 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 箕輪 はるか 藤田 将史 大槻 勤 高宮 幸一 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 竹内 幸生 土井 妙子 千村 和彦 阿部 善也 稲井 優希 岩本 康弘 上杉 正樹 遠藤 暁 大河内 博 勝見 尚也 久保 謙哉 小池 裕也 末岡 晃紀 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 高瀬 つぎ子 高橋 賢臣 張 子見 中井 泉 長尾 誠也 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇 渡邊 明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として、福島県の帰還困難区域を中心として、100箇所で空間線量の測定と土壌の採取のフィールド実験を行い[1]、同時に計27箇所で土壌コア試料を採取した。本発表では、このコア土壌試料について分析を行ったので、その結果を報告する。土壌採取は円筒状の専用の採土器を用いて行い、ヘラを用いて採取地点で2.5 cmごとに土壌を切り取って個別にチャック付き袋に保管した。採取地点により、土壌は深さ20-30 cmのものが得られた。土壌を自然乾燥してからよく撹拌し、石や植物片を取り除いたのちにU8容器へ高さ3 cmに充填した。ゲルマニウム半導体検出器を用いてガンマ線測定し、土壌中の放射性セシウム濃度を定量した。なお、各場所で採取した試料のうち最低でも1試料は、採取地点ごとに放射性セシウム比(134Cs/137Cs)を決定するために、高統計の測定を行った。深度ごとの測定から、放射性セシウムは土壌深部への以降が見られているものの、その濃度は深度と共に指数関数的に減少していることが分かった。一方で土壌深部への以降の様子は土壌採取地点により大きく異なることが分かった。また、本研究の結果は同一地点で表層5 cmまでの土壌を採取して得た結果ともよく整合した[1]。[1] K. Ninomiya et. al., Proceedings of the 13th Workshop on Environmental Radioactivity 2017-6 (2017) 31-34.
著者
北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 二宮 和彦 稲井 優希 箕輪 はるか 大槻 勤 木野 康志 小荒井 一真 斎藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 高宮 幸一 竹内 幸生 土井 妙子 阿部 善也 岩本 康弘 上杉 正樹 遠藤 暁 大河内 博 勝見 尚也 神田 晃充 久保 謙哉 小池 裕也 末岡 晃紀 鈴木 杏菜 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 高瀬 つぎ子 高橋 賢臣 張 子見 中井 泉 長尾 誠也 南部 明弘 藤田 将史 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇 渡邊 明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【研究背景】 2011年3月に起こった、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県を中心とする陸域に大規模な放射能汚染が起こった。事故後の2011年6月には、日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした有志の研究グループが、汚染状況の把握のための土壌採取のフィールド実験を実施した。これにより初期の汚染状況が明らかとなったが、航空機サーベイ等による汚染状況の把握は継続して行われているものの、実際に土壌を採取して汚染状況の詳細を把握する大規模な調査はそれ以降行われていない。事故から5年以上が経過し、土壌に沈着した放射性核種(主に放射性セシウム:134Csおよび137Cs)は環境中でその化学形態等を変化させ、土壌の深部への浸透や流出により、初期とは異なる分布状況に変化していることが予想される。帰還困難区域の除染作業が開始されようという状況で、土壌の放射性核種の汚染状況を把握するのはきわめて重要である。そこで本研究では、福島県内の帰還困難区域を中心として土壌採取のフィールド実験を行い、その分析により現在の汚染状況の把握することを目的に実施した。【調査概要】 本研究プロジェクトは、2016年6月から9月にかけての9日間、のべ176名で実施した。福島県内の帰還困難区域を中心として、公共施設等を選定したうえで、各自治体との情報交換を行い、除染が行われていない地点全105か所を土壌採取場所として選択した。まずはNaIシンチレーターもしくは電離箱を用いて地面から1 mおよび5 cmの空間線量の測定を行い、専用の採土器を用いて表層より5 cmの土壌を採取した。試料採取場所におけるばらつきを評価するために、1地点ごとに5試料の採取を実施し、5年間の環境中での放射性核種の移動状況を評価するために、土壌は表層部の0.0-2.5 cmと、深部の2.5-5.0 cmに分けて採取した。また放射性核種の移行過程をより詳しく調べるために、4地点につき1地点程度、深さ30 cmのコア試料の採取も行った。本講演では、この調査について概要を説明し、事故直後と5年後の比較などいくつかの初期結果について簡単に紹介する。より詳細な結果については、別の講演にて報告が行われる。
著者
五十嵐 康人 大河内 博 北 和之 石塚 正秀 吉田 尚弘 三上 正男 里村 雄彦 川島 洋人 田中 泰宙 関山 剛 眞木 貴史 山田 桂太 財前 祐二 足立 光司 中井 泉 山田 豊 宇谷 啓介 西口 講平 阿部 善也 三上 正男 羽田野 祐子 緒方 裕子 吉川 知里 青山 智夫 豊田 栄 服部 祥平 村上 茂樹 梶野 瑞王 新村 信雄 渡邊 明 長田 直之 谷田貝 亜紀代 牧 輝弥 佐藤 志彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

初期の放射性Cs放出には従来想定されていた水溶性サブミクロン粒子に加え,直径数μmの不溶性粗大球状粒子が存在することを初めて明らかにした。典型的な里山では再飛散由来のCs濃度は,都市部での結果と異なり,夏季に上昇し,冬季には低かった。夏季のCs担体は大部分が生物由来であることを初めて見出した。放射性Csの再飛散簡略スキームを開発し,領域エアロゾル輸送モデルを用いて森林生態系からの生物学的粒子による再飛散,ならびに事故サイトから継続する一次漏えいも含め,フラックス定量化-収支解析を行った。その結果、他のプロセス同様、再飛散は、地表に沈着したCsの減少や移動にほとんど寄与しないことがわかった。
著者
畠山 史郎 片平 菊野 高見 昭憲 菅田 誠治 劉 発華 北 和之
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.158-170, 2004-05-10
被引用文献数
10

近年関東周辺山岳域で見られる森林衰退の原因・として大気汚染物質の影響が重要ではないかといわれている。しかし,この地域でのこれまでの観測は電源の都合により,長期的な観測が出来ず,そのため観潮時の天候に大きく影響されて,大気汚染の影響が十分把握されていない。本研究では電源に太陽電池を用いることにより,実際に森林被害の激しい前白根山山頂付近で,大気汚染物質であるオゾン(O_3)を,約3ヵ月にわたって長期的に観測することで,この地域でのO_3濃度変化を明らかにした。更に高濃度O_3が現れる頻度やその起源,それらが出現する気象条件を考察した。その結果,今回の観測では,期間中の最高濃度は1時間平均値で70ppb弱であり,過去に観測された100ppbを超えるような高濃度は観測されなかった。また,長期間の統計的なO_3濃度変化を調べることにより,この地点でO_3が高濃度になるのは夏季の卓越した南風に加えて,日射強度が大きい時であることが分かった。これは強い日射により,都市域で発生した一次汚染物質が光化学反応を起こしながら,広域な海陸風循環によって輸送されてきた為であると考えられた。また,9月以降の秋季には03の平均濃度が上がると共に日食化か小さくなった。これは山頂付近では自由対流圏大気の影響が大きくなり,アジアのバックグラウンドオゾンが輸送されていて,関東平野部からの汚染空気の寄与が小さくなるためと考えられた。
著者
小堺 孝和 加藤 裕之 中北 和之 金崎 雅博
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.15-00188, (Released:2015-08-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

The “buffet” which is the shock wave vibration on the wing at transonic speed has influence to the aerodynamic performance of the civil transport. It is significant because the wing cannot maintain its aerodynamic performance and it is also led to the stall. Therefore, several researches on the suppression of the buffet are carried out. A Vortex Generator (VG) is one of the way which can improve to the transonic buffet. It is simple device and widely applied to the commercial airplane. Conventionally, VGs are installed along the wing span. However, they increase the friction and the instruction drag. Thus, the number of VGs should not be beyond the minimum necessary. Another problem is that it is still expensive for the computational fluid dynamics to simulate the small size vortex accurately. Therefore, the optimization procedure of the VGs installation is developed with directly combining the wind tunnel evaluation result. To reduce the number of experimentations, the surrogate model based GA exploration is employed. The design objective is to maintain the linearity of the variation lift with changing angle of attack (lift curve), because the stall is appeared if the curvature of the lift curves become smaller. Eight initial designs are evaluated and five design samples are acquired. As this result, optimum samples can be explored with reducing the number of the experiment. Several samples successfully prevent the stall without increasing the drag. In addition, the design knowledge can be obtained regarding the optimum VG’s layout by visualization.
著者
南 光太郎 堅田 元喜 北 和之 反町 篤行 保坂 健太郎 五十嵐 康人
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.208-218, 2020

<p> Following the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident, it has been recognized that bioaerosols with radioactive cesium may have released from radiologically contaminated forest into the atmosphere. In order to evaluate the above process, the emission rate of bioaerosol was inversely estimated using a numerical model named SOLVEG that includes the processes of emission, deposition, and turbulent transport of aerosols. For the inverse estimation, micrometeorological variables and bioaerosol number concentration and flux were observed at a Japanese temperate broad-leaved forest in summer. By tuning modelled emission rate of bioaerosols from forest floor, its best estimate was obtained at the agreement between calculated and observed concentrations below the canopy. General trends of calculated momentum, heat, and bioaerosol fluxes above the canopy were also reproduced in the simulation. In the numerical experiment without bioaerosol input at the top of atmosphere above the canopy, a certain amount (59%) of bioaerosol flux at the floor released above the canopy top, while the rest of the flux deposited onto both canopy and soil. This potential flux above the canopy top was 2.0±1.8×10<sup>-2</sup> μg m<sup>-2</sup> s<sup>-1</sup>, which may correspond to the re-emission rate proposed previously by the chemical transport model.</p>
著者
青山 茂義 宮北 和之 三河 賢治
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.56-63, 2019-11-28

新潟大学では,2019 年 3 月に無線 LAN システムを含む,全学のネットワークシステム更新を行った.更新時の重要な課題の一つは,情報基盤センターの障害や被災時などにも,学内の他部署のネットワークを継続利用可能にすることであり,無線 LAN の基幹システムに対しても,外部データセンター利用による BCP(Business Continuity Planning)対策を行った.また,もう一つの重要な課題は,速やかなセキュリティインシデントレスポンスをいかに実現するかであった.これは,有線 LAN のセキュリティシステム(人的セキュリティ体制含)と統合することにより実現した.また,スマートフォン端末を始めとするネットワーク端末普及による利用者増や授業アンケート等での多人数利用を想定して,同時利用者数 5,000 人まで対応可能な無線 LAN システムを構築した.本論文では,大学のように,多くのユーザの同時利用が想定される環境においてデータセンターを利用した無線 LAN システムに関する考察と報告を行う.
著者
御船 雄太 宮北 和之 中野 敬介
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.13, pp.1-6, 2014-11-13

比較的長い通信遅延を許容して情報伝送を行うためのネットワークを遅延耐性ネットワーク (Delay Tolerant Network: DTN) と呼ぶ.本報告では,無線端末同士の情報交換および移動により情報拡散を行うエピデミック伝送により実現される DTN を考える.エピデミック伝送の用途としてはある特定の端末に対する情報配信の他に,地域情報配信や災害時情報配信のように,ある特定の空間にいる不特定の端末への情報伝達も考えられる,このとき,特定の場所や空間に情報を "滞留" させておく必要があり,エピデミック伝送を用いた情報滞留が検討されている.本報告では,エピデミック伝送による情報滞留の応用として,商店街においてクーポンを情報滞留させ,景品の引換所に客を誘導することにより商店街全体で客を誘導することを考える.ここでは,情報の過度な拡散を防ぐために,端末の情報の送信を空間的に拡散制御しながら実現する情報滞留を考え,情報の魅力度,および景品の交換所の数や設置場所が客の誘導に与える影響について計算機シミュレーションにより評価する.A network that enables us to exchange information by tolerating a long delay time is called a Delay Tolerant Network (DTN). In this report, we consider DTNs realized by epidemic transmissions, in which information is spread by wireless transmission between nodes and mobility of the nodes. A DTN can be used to transmit information to unspecified nodes in a specific area. Such situations can be seen in information delivery in a local area and that in disaster situations. For this purpose, information has to be floated in the destination space so that nodes entering the space later get the information as well as nodes being there. In this report, we consider to steer nodes toward a shopping area by floating electric coupons that can be exchanged into a gift at exchange places in the shopping area. We consider to realize information floating by epidemic transmissions with spatial transmission control for suppressing useless information spreading, and evaluate the effects of attractiveness of information, the number and locations of exchange places on the effectiveness of steering the nodes by computer simulation.
著者
山北 和之
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.157, pp.119-125, 1985 (Released:2010-05-07)
参考文献数
3

This report presents the longitudinal dynamics of underwater towed body system.Firstly, the longitudinal equations of motion of underwater towed body system were derived by treating the cable as lumped parameter system of discrete masses.Secondary, hydrodynamic characteristics of the hypothetical towed body, which is necessary for the analysis, were obtained experimentally. Utilizing above results, the longitudinal equations of motion of underwater towed body system under external disturbances were solved numerically.As the result, dynamic characteristics of underwater towed body system, mainly towed body response to the heaving towing point, were made clear.
著者
五十嵐 康人 北 和之 牧 輝弥 竹中 千里 木名瀬 健 足立 光司 梶野 瑞王 関山 剛 財前 祐二 石塚 正秀 二宮 和彦 大河内 博 反町 篤行
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

著者らは, 福島第一原発事故の放射能汚染による大気環境影響評価のため, 福島県内の汚染地域に設置された観測地点で放射性セシウムの大気への再飛散を研究してきた。その結果, 1) 都市部での観測結果と異なり, 典型的な里山である観測点では,特に夏季に放射性Csの大気中濃度が上昇し(Fig. 1),2)これを担う粒子は, 見た目や光学顕微鏡像からダストと思われたが, 意外にもその大部分が実は生物由来であること(Fig. 2)を見出した。真菌類が放射性Csをカリウムと誤認し濃縮する事実を考慮すると, 再飛散を支える実体として胞子が想定できる。仮に真菌胞子のみが137Csを運ぶとして, 胞子一個当たりの137Cs量を幾つかの仮定下で推定すると, 5×10-10-3×10-7 Bq/個となり, 森林から胞子が9×103-5×105個/m2/秒飛散する必要がある。この値は,Sesartic & Dallafior (2011) Table 2のForestの最大値387個/m2/秒よりも1~3桁も大きい。しかし実際, 今夏の予備観測で,バイオエアロゾル個数濃度は5-8×105個/m3に達することが確認され, 我が国の森林から予想以上のバイオエアロゾルの飛散が起きていることがわかった。さらに上記仮定に基づくと, 大気中137Cs濃度は2.5×10-4-0.15 Bq/m3となり, 現実の放射性Csの再飛散と凡そ辻褄が合う。これらから, 夏季におけるバイオエアロゾルによる放射性Csの再飛散を真剣に考慮すべきことがわかってきた。
著者
恩田 裕一 山本 政儀 山田 正俊 北 和之 竹中 千里 浅沼 順 中島 映至 篠原 厚 神田 穣太 五十嵐 康人
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

1.領域内の相互啓発と情報共有:全計画研究班の研究が円滑に進むよう統括を行った。WEB中継会議システムを活用して全構成員間のより緊密な連携を図った。 2.研究支援活動:「データベースワーキンググループ」を統括し、事故発生以降の環境データ、モデリングデータ、分析データを使いやすい形で整理し、関係研究者に提供した。また「分析チーム」を統括し、分析がIAEAスタンダードになるようproficiency testの結果を反映させた。3.公募:各計画研究の補完・推進を目的として採択した第ニ期公募案件について研究支援を行った。
著者
浅井 圭介 永井 大樹 沼田 大樹 姜 欣 近野 敦 近野 敦 中北 和之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,航空機の非線形領域における動安定性を調べる実験技術として,ハイブリッド・アプローチによる次世代動的風洞試験法を開発することを目的としている.従来のシリアルロボットに加えて,新規にHEXA型パラレルロボットとその制御系を開発し,それらを用いて縦運動と横運動が連成する2自由度の加振実験を実施した.これと並行して,非定常感圧塗料や蛍光ミニタフトなどの先進的な光学計測手法を開発し,非定常運動するデルタ翼面上の前縁剥離渦の崩壊や空気力への周波数の影響を実験で明らかにした.これら一連の実験により,非線形飛行力学の研究を行うための基盤技術を構築することができた.