著者
山國 徹 川畑 伊知郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.5, pp.229-233, 2015 (Released:2015-05-10)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

超高齢化社会を迎えた我が国の高齢者認知症の人口は今や約462万人に上るともいわれ,認知症の克服は喫緊の国家的課題となっている.著者らはアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の克服のため,初期のADの分子的病態に注目してその進行を阻止する活性をもつ天然薬物の探索研究および薬理研究を進めてきた.本稿ではADにおいて臨床研究の取り組みがなされているノビレチン高含有陳皮(N陳皮)の抗認知症作用についてその薬理学的解析結果を解説し,ノビレチン単体に対する「N陳皮の優位性」に関するエビデンスを紹介する.また,認知症の周辺症状の漢方治療薬抑肝散加陳皮半夏について,N陳皮配合処方エキスの抗認知症作用の特徴を簡潔に解説する.本総説では生薬や漢方処方の抗認知症作用に関する薬理学データに基づいてこれらの薬剤のもつ「多成分系薬剤の優位性」を考察したい.
著者
福永 浩司 松崎 秀夫 川畑 伊知郎 篠田 康晴
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自閉症スペクトラム症(ASD)の頻度は約1%で、男性有意に発症する難治性小児疾患である。対症療法以外に根本的治療法はない。病因の一つにミトコンドリア機能異常が知られており、ミトコンドリア関連遺伝子の変異も明らかにされている。本研究では(A)ミトコンドリア機能改善薬5-アミノレブリン酸(5-ALA)のASDマウスにおけるミトコンドリア機能および社会性行動改善の機序を明らかにする。(B) TAAR1受容体アゴニストのASDマウスの社会性行動改善作用とその機序を解明する。(C) 自閉症者リンパ球のミトコンドリア機能がバイオマーカーになるか検証する。
著者
川畑 伊知郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集 第94回日本薬理学会年会 (ISSN:24354953)
巻号頁・発行日
pp.1-YAL1, 2021 (Released:2021-03-21)

高齢化社会をむかえパーキンソン病の増加が社会問題であるが、根本的治療薬は未開発でありその開発が期待されている。私たちはパーキンソン病の発症機構の解明と治療薬の開発において、ドパミン神経選択的な変性メカニズムの解明、ドパミン機能を制御する新たな分子機構の発見、新たな創薬標的を用いた治療薬の薬理学的研究に取り組んできた。具体的に、ドパミン生合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素が中脳ドパミン神経で消失する新たな分子機構、消失したドパミン生合成酵素を回復するための新たな創薬標的の探索とドパミン作動性機能を制御する新規シグナルネットワーク、さらにパーキンソン病の原因タンパク質αシヌクレインが中脳ドパミン神経に取り込まれ伝播する新たなメカニズムを明らかにし、パーキンソン病の予防・治療応用が期待される。これらの研究成果から、パーキンソン病を含むレビー小体疾患の克服とその創薬研究、今後の展望について紹介する。
著者
川畑 伊知郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.945, 2021 (Released:2021-10-01)
参考文献数
3

近年,超高齢社会の到来によるパーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者の増加が社会問題となっており,その発症メカニズムの研究も進んでいる.PDに見られる進行性の神経変性は,線維型αシヌクレインの脳内伝播に関連していると考えられている.αシヌクレインはシナプスの機能制御や神経の可塑性に関与すると推定されているが,凝集により神経毒性を発揮する.そのため,細胞外のαシヌクレインを除去することは,その伝播や凝集を抑制するための有力な方法となる可能性がある.本トピックスでは,最近報告されたアストロサイトによるαシヌクレインの新たな細胞内取込み制御と,その伝播との関連について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Filippini A. et al., Glia, 69, 681-696(2021).2) Lindstrom V. et al., Mol. Cell Neurosci., 82, 143-156(2017).3) Kawahata I. et al., Biomed., 9, 49-62(2021).
著者
川畑 伊知郎
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
2009

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