著者
八尾 隆史 津山 翔 赤澤 陽一 上山 浩也
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1088-1094, 2019-07-25

要旨●十二指腸粘膜は正常では小腸型粘膜であるが,異所性胃粘膜や胃上皮化生をしばしば伴い,十二指腸で発生する腫瘍は腸型および胃型形質ともに存在することから,胃と同様の病理診断基準を用いることが可能と考えられる.早期病変の観察に基づく経験から導かれた病理診断基準に,胃上皮性腫瘍の形質発現や細胞増殖動態,遺伝子異常などのエビデンスを加え,構造異型の乏しい高分化上皮性腫瘍の病理組織学的診断基準(腺腫と癌の鑑別診断基準)をここで提唱する.
著者
岩上 裕吉 上堂 文也 松浦 倫子 庄司 絢香 三宅 宗彰 松枝 克典 井上 貴裕 脇 幸太郎 中平 博子 七條 智聖 前川 聡 金坂 卓 竹内 洋司 東野 晃治 石原 立 北村 昌紀
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.584-592, 2020-05-24

●「考える内視鏡診断」のポイント・SMT様の隆起性病変の診断では,まず大きさ,表面の弧の形状,隆起の立ち上がりの性状から主座を推測する.さらに,病変の部位,個数,隆起の形状,陥凹の有無と性状に着目し鑑別診断を行う.・EUSでは,病変の局在(非腫瘍胃壁構造との連続性),辺縁性状,内部エコー像を観察する.・NETは発赤や陥凹など上皮に変化を伴うことが多く,大きなものは不整形で陥凹を伴うことが多い.黄色調,表面に血管拡張を伴うことがある.EUSで第2層に連続する低エコー腫瘤として観察される.・GISTは球形で丈が高く,頂部に深い円形の潰瘍を伴うことがある.第4層に連続する低エコー腫瘤として観察される.・転移性胃癌は多発し,丈が低く陥凹を伴うことが多い.・組織診断のため,狙撃生検やボーリング生検,EUS-FNAを試み,診断困難であれば内視鏡的切除も考慮する.
著者
入口 陽介 小田 丈二 冨野 泰弘 依光 展和 園田 隆賀 岸 大輔 橋本 真紀子 中河原 亜希子 霧生 信明 清水 孝悦 水谷 勝 山里 哲郎 並木 伸 長濱 正亞 山村 彰彦 細井 董三
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.779-793, 2020-05-25

要旨●スキルスとは,病理組織学的に癌組織の間質に線維性組織増生が顕著な状態の総称であり,スキルス胃癌は臨床的に「胃癌取扱い規約」の肉眼型の4型を指すことが多い.そこで,本邦における4型胃癌の経時的な発生頻度,形態学的・病理組織学的特徴を検討した.全国集計による進行胃癌の肉眼型別・年次推移をみると,4型胃癌は,1984年度13.8%から2014年度6.5%に減少していた.また,当センターにおいて過去29年間に経験した4型胃癌93例を対象として,原発巣(粘膜内進展部)の部位と背景粘膜から,①胃底腺型,②腺境界型,③幽門腺型の3型に分類し,2007年度を境に前期45例,後期48例に分けて検討した.後期では胃底腺型が特に減少し,腺境界型,幽門腺型の割合が増加していた.胃底腺型は,前後期ともに原発巣の大きさが25cm2以下で陥凹は深く組織型は未分化型腺癌が多かった.一方,腺境界型は,前後期ともに原発巣の大きさが50cm2以上で陥凹は浅かったが,後期では組織混在型の割合が増加していた.幽門腺型は原発巣の大きさに比較して粘膜下層以深の面積は大きくなく,前後期ともに組織混在型が約30%に認められた.H. pylori感染状態の検討では,前期はすべて現感染であったが,後期では現感染42例,未感染2例(胃底腺型2例),除菌後4例(胃底腺型1例,腺境界型2例,幽門腺型1例)であった.以上から,スキルス胃癌,4型進行胃癌の正確な診断のためには,原発巣の部位・背景粘膜の相違による形態学的・病理組織学的特徴を十分に理解して,スクリーニング,精密検査を行うことが重要である.

5 0 0 0 創刊の辞

著者
村上 忠重
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.9-10, 1966-04-25

学会の機関誌を除くと,我が国では,消化器病学の専門誌が一向に育たないというジンクスがある.消化器病がとくに多いという我が国にあっては,不思議な現象のように感じられる.しかしそれにはそれ相当の理由があるであろう.たとえば消化器病の患者が余りにも多すぎ,余りにも一般的に過ぎるために,却って専門化しにくいとも考えられる.あるいはまた,消化器病には内科も放射線科も外科も病理も関与していて,その論文はそれぞれの分野の専門誌によって,すでに十分に消化されているのかも知れない.これらの現象はまた消化器病の専門家が現在十分に独立していないということにも通じよう. しかし最近は医学全体の専門化の傾向に推進されて,消化器病の専門化も静かにではあるが次第に進められつつあるように思われる.そしてそれには早期胃癌の診断学の発達が大きな拍車の一つになった.これまである程度片手間にでもできないことのない消化器病ではあったが,こと早期胃癌の診断に関する限り,X線の精密検査といい,胃カメラといい,ファイバースコープといい,さらには,生検,細胞診といい,何れも,もはや片手間にはできない知識と技術を必要とするようになった.そしてこの専門知識が現在の目本全国をあげての癌恐怖症に対する,唯一の現実的な解答だとすると,やはりこの道への専門化はさらに促進されなければならない事業である.この意味だけでも消化器病の専門誌が誕生すべき機運にあるといえるはずである.
著者
村上 忠重
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.9, 1977-01-25

11年前創刊の辞に,表題を取りあえず「胃と腸」とするが,いずれ「胃と腸」にする日が来るであろうし,またなるべく早くそうありたいという夢を記した. 10巻1号には創刊以来足かけ10年の経緯を振り返り,そろそろ「胃と腸」にしたいがもう暫く時期を待ちたいと述べた.それは編集委員の中に異論があって,「胃と腸」としたい気持は分るが,現実には内容がそこまで行っていないのではないかという自己批判があったからである.
著者
山野 泰穂 田中 信治 菅井 有 松下 弘雄 斎藤 彰一 三澤 将史 堀田 欣一 竹内 洋司 佐野 寧 永田 信二 河野 弘志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1648-1669, 2020-12-25

Introduction山野 本号は「大腸鋸歯状病変の新展開」ということで,本誌ではしばしば鋸歯状病変に関して特集されていますが,大腸鋸歯状病変,さらにはSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)に関しては概ね市民権を得ており,多くの内視鏡医が知っている病変であると思います.SSA/PはMSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変であろうと分子生物学的にも解析が進んでおり,adenoma-carcinoma sequence,de novo pathwayに次ぐ第三の発癌ルートserrated neoplastic pathwayとしてmalignant potentialも高いのではと考えられています. 一方,実臨床では鋸歯状病変,特にSSA/Pは本当に悪性度が高いのかという疑問があります.これまで長い間,SSA/Pは過形成性ポリープと見分けがつかず,非腫瘍として扱われ放置されてきた歴史,むしろadenomaのほうが前癌病変として問題であると考えられてきた歴史があります.
著者
山野 泰穂 松下 弘雄 田中 義人 吉川 健二郎 原田 英嗣 吉田 優子 加藤 文一朗 久保 俊之 菅井 有 仲瀬 裕志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.48-56, 2019-01-25

要旨●大腸腫瘍性病変に対する拡大内視鏡診断は腺腫・早期癌に対する質的診断,量的診断において欠くことのできない診断手法となった.しかし,SSA/Pという新たな疾患概念の登場により,鋸歯状病変の拡大内視鏡診断は新たなステージを迎えている.今回筆者らはHPを除いた大腸鋸歯状病変180病変に対して従来のpit pattern分類にII型・IV型の亜分類(開II型,伸II型,鋸IV型)を加えて分類し,病変全体の均一性の観点からpit pattern単一群とpit pattern複合群とに分けて検討した.その結果,単一群において,SSA/Pでは81病変中69病変(85.2%)と高率に開II型を示し,TSAでは12病変中10病変(83.3%)と高率に鋸IV型を示すことが判明し,各々高い感度,特異度,陽性的中率を認めた.一方,複合群においては,SSA/P+CDでは31病変中24病変(77.4%)と高率に開II型+鋸IV型を示し,開II型+何らかのpit(α)で,またTSAでは何らかのpit(α)に鋸IVが付随することで高い感度と陰性的中率を示したが,特異度,陽性的中率は劣っていた.Ca in SSA/Pでは開II型+VI型が高率に認められたが,Ca in TSAでは特徴は見い出せなかった.その理由として,TSAの病理組織学的診断上の問題などの関与が示唆された.以上より,大腸鋸歯状病変に対する拡大内視鏡観察では均一性の確認が重要であり,複合したpit patternを有する病変では慎重な対応が望まれると結論した.

5 0 0 0 CT Colonography

著者
野﨑 良一 有馬 浩美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.740-741, 2021-05-24

CTC(CT colonography)が大腸癌術前検査のみならず,大腸スクリーニングにおける画像診断法として注目されている.術前検査として,CTCは注腸X線造影検査(barium enema ; BE)にとって代わろうとしている.盲腸まで内視鏡で観察できない,いわゆる全大腸内視鏡検査(total colonoscopy ; TCS)不成功例に対しても,CTCは有用な検査法である.大腸スクリーニングについてみると,大腸がん検診の精密検査法として本格的導入が間近となっている1). 本稿では大腸スクリーニング,大腸癌術前検査としてのCTCについて解説する.
著者
菅井 有 上杉 憲幸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1275-1285, 2021-09-25

要旨●腺窩上皮型腫瘍は腺窩上皮に類似する低グレードの腫瘍として本邦では以前から認知されてきた組織型である.しかし,本腫瘍の臨床病理像および分子異常についてはこれまで明らかにされてこなかった.腺窩上皮型腫瘍は異型性の観点から低グレードと高グレードに分類することができるが,本稿では低グレード腺窩上皮型腫瘍のみを扱った.本腫瘍の臨床病理像としては,腺窩上皮への類似性が特徴であることは論をまたないが,粘液形質の観点からもMUC5ACの発現が全例にみられた.一方で,腸細胞の転写因子であるCDX2が高頻度に発現していた.背景粘膜においても腸上皮化生を有する萎縮性胃炎が全例にみられた.分子異常としてはWnt系シグナル異常の指標であるβ cateninの核内蓄積が陰性で,p53過剰発現もほとんどの症例で陰性であった.またMSIもほとんどみられなかった.一方AI(allelic imbalance)は通常型低グレード腫瘍と比較しても高頻度であったが,メチル化異常は低〜中等度であった.本腫瘍は分化型腫瘍に分類されるが,通常型腫瘍とは異なる組織学的特徴を有していることのみならず,分子異常の観点からも独立性を指摘できる特異な腫瘍であると思われる.
著者
柴垣 広太郎 三代 剛 福山 知香 高橋 佑典 古谷 聡史 大嶋 直樹 川島 耕作 石村 典久 長瀬 真実子 荒木 亜寿香 門田 球一 石原 俊治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1287-1298, 2021-09-25

要旨●H. pylori未感染者に発生するラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍とH. pylori既感染者に発生する腺窩上皮型胃癌の臨床病理学的特徴を検討した.前者は萎縮のない胃底腺領域に発生する発赤小隆起で,いわゆるラズベリー様外観を呈し,NBI拡大観察で不整な乳頭状/脳回様構造を呈した.後者は萎縮粘膜に発生する粗大な発赤隆起で,前者より大きく形態も歪であった.NBI拡大観察で乳頭状/脳回様構造を呈したが,形態不整は高度であった.病理組織学的には,前者はよく分化した上皮内病変で,WHO分類では多くがlow-grade dysplasia相当であったが,Ki-67 labeling indexは異型度によらず高値を示した.後者は構造異型・細胞異型が高度で,脱分化や脈管侵襲も認められ,胃型胃癌としての高い悪性度を示した.
著者
中沢 啓 吉永 繁高 関根 茂樹 岡村 卓真 奥田 奈央子 小山 洋平 福士 剛蔵 山崎 嵩之 春日 健吾 川島 一公 水口 康彦 張 萌琳 江郷 茉衣 阿部 清一郎 野中 哲 鈴木 晴久 小田 一郎 斎藤 豊
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1036-1042, 2020-07-25

要旨●当院で胃型腺腫(幽門腺腺腫)と診断された25例25病変を検討した.H. pylori未感染胃に発生した症例(癌化例含む)は2例(8.0%)のみであり,23例(92.0%)はH. pylori現感染胃,もしくは既感染胃に発生した症例であった.全症例U領域もしくはM領域に位置しており,L領域の症例は認めなかった.色調は白色調,褪色調,発赤調,同色調までさまざまであり,特徴的な所見は認めなかった.肉眼型は隆起型,もしくは表面隆起型に鑑別できるものが大部分であった.全25例中12例(48.0%)に癌合併を認めており,胃型腺腫に対して内視鏡治療を行うことを検討すべきと考えられた.
著者
藤崎 順子 山口 和久 山本 智理子 堀内 裕介 大隅 寛木 吉水 祥一 片岡 星太 平澤 俊明 由雄 敏之 石山 晃世志 山本 頼正 土田 知宏 五十嵐 正広
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.778-787, 2016-05-25

要旨●2013年4月〜2014年3月までの間に,当院でESDを施行した症例中,除菌後発見胃癌症例166例の検討を行った.臨床的には陥凹型,分化型が多く,除菌後5年未満,5年以上に分けると,5年以上で発見された病変サイズは小さい傾向にあった.さらに,レトロスぺクティブに画像の解析が可能であった分化型優位の140例について検討を行った.術前にNBI拡大内視鏡検査にて範囲診断を施行し,ESDを行った結果,病理学的に水平断端陽性,もしくはマーキング上に病変範囲が乗っていた範囲誤診例だった症例は,5年未満で79例中1例(1.3%),5年以上で61例中3例(4.9%)と5年以上の症例で多かった.画像の検討が可能であった140例は,除菌後5年未満が79例,5以上〜10年未満が38例,10年以上が23例であった.NBI拡大内視鏡検査での胃炎様所見は,5年未満で34例(43.0%)にみられ,5年以上で25例(41.0%)であった.さらに,5年以上を5〜10年と10年以上に分けた場合,5〜10年で13例(34.2%),10年以上経過例では12例(52.2%)であり,10年以上で高い傾向を示した.病理組織学的に表層の非癌上皮が確認できた症例は,5年未満で27例(34.2%),5〜10年で8例(21.1%),10年以上で8例(34.8%)であった.今回の検討では除菌後長期例での胃炎様変化の出現率が高かった.
著者
鎌田 智有 春間 賢 井上 和彦 石井 学 村尾 高久 山中 義之 藤田 穣 松本 啓志 眞部 紀明 楠 裕明 畠 二郎 塩谷 昭子 高尾 俊弘
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.750-758, 2016-05-25

要旨●H. pylori感染胃炎に対する除菌治療が2013年2月に保険認可された.現在,除菌による胃癌の予防が期待されているが,その一方で除菌後に胃癌が発見される症例も臨床上少なくない.除菌後10年未満と除菌後10年以上で発見された症例での臨床的特徴を比較検討した結果,10年以上で発見された胃癌は腫瘍径20mm大以下の比較的小さな病変であり,2次癌の比率が有意に高率であった.共通する特徴として,両群共に非噴門部領域に発生する0-IIc型病変を中心とした分化型早期癌であり,胃体部には高度な萎縮性変化を伴っていた.このような症例では,除菌から長期が経過しても胃癌発生のリスクが残存することを理解しておくことが重要である.
著者
佐藤 千晃 谷山 裕亮 櫻井 直 日景 允 高屋 快 岡本 宏史 今野 卓朗 氏家 直人 小関 健 安藤 涼平 藤島 史喜 内藤 剛 海野 倫明 亀井 尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1439-1441, 2019-09-25

はじめに VC(verrucous carcinoma)は細胞異形成をほとんど示さないで増殖する扁平上皮の増殖病変であり,1948年にAckerman1)により提唱された.悪性であるのかどうかは長年議論があったが,現在では扁平上皮癌の一亜型と位置付けられている. 生検標本のみでは診断が不可能であり,よく良性疾患と誤診されることがある.間質浸潤は極めてまれとされ,臨床予後は摘出さえできれば極めて良好である.
著者
永田 信二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.236-237, 2016-02-25

症例の特徴 verrucous carcinomaは1948年にAckerman1)によって報告された白色調隆起性病変を形態学的特徴とする,予後のよい角化の強い高分化型扁平上皮癌である.発生部位は頭頸部,口腔,皮膚,生殖器,子宮などにみられるが,食道はまれである2).
著者
滝沢 耕平
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.680, 2021-05-24

適応 筆者は,十二指腸の10mm以下の腺腫と考えられる病変にはD-CSP(duodenal cold snare polypectomy)1)を,10mmを超える腺腫や癌を疑う病変に対してはunderwater EMRを選択することが多い.局注を用いないため,生検瘢痕を有する場合も適応外とはしていない.
著者
吉田 将雄 角嶋 直美 籔内 洋平 滝沢 耕平 川田 登 島田 清太郎 木村 英憲 佐藤 辰宣 塩月 一生 髙田 和典 岸田 圭弘 今井 健一郎 伊藤 紗代 堀田 欣一 小野 裕之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.622-629, 2020-05-24

●「考える内視鏡診断」のポイント・十二指腸は部位によって背景粘膜の構造が異なることを認識する.・隆起表面の大部分が周囲と同様の非腫瘍粘膜に被覆されており,粘膜下腫瘍(SMT)様隆起の形態を呈することを確認する.・通常観察では,SMT様隆起の辺縁の性状,病変のサイズ,色調,陥凹の有無,陥凹の境界,びらん・潰瘍形成の有無,単発・多発,病変の硬さ・可動性について観察する.・通常観察において粘膜表面に変化がみられた場合には,拡大内視鏡観察を行い,病変表面の腺管構造と血管構造を観察する.・超音波内視鏡検査(EUS)では,病変の存在する層,周囲の層構造との連続性,病変の境界,病変内部のエコーレベルや性状について評価する.
著者
三浦 義正 矢野 智則 坂口 美織 井野 裕治 角田 真人 Tsevelnorov Khurelbaatar 小林 泰俊 坂本 博次 林 芳和 砂田 圭二郎 大澤 博之 福嶋 敬宜 山本 博徳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1747-1755, 2018-12-25

要旨●小腸腫瘍の治療前評価における超音波内視鏡(EUS)の役割は,質的診断と腫瘍深度診断であり,内視鏡治療に直結するため重要である.しかし,小腸腫瘍は上皮性腫瘍,非上皮性腫瘍共に発見時に内視鏡治療になる可能性は低いため,臨床でのEUSの使用は限られる.一方,Helicobacter pylori陰性者が増加する中で,十二指腸腫瘍を発見・治療する機会が増えている.特に表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)の治療においては,腫瘍のサイズ,形態,リスク・ベネフィットを考慮して治療法を選択するが,EUSは手技の安全性を確保する上で重要である.本稿では,小腸腫瘍に対する診断・治療について,実臨床で比較的遭遇する疾患を中心に解説する.
著者
渡辺 英伸 味岡 洋一 太田 玉紀 本山 悌一 岩渕 三哉 本間 照
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.659-682, 1990-06-25

要旨 炎症性腸疾患を病理学的に鑑別するには,まず病変が肉眼的に,①縦走潰瘍型,②輪状潰瘍型,③円・卵円形潰瘍型,④玉石状所見・炎症性ポリポーシス型,⑤浮腫・充血・出血・びらん型,および⑥腫瘍様多発隆起型,の6基本肉眼型のどれに帰属するかを判定しなければならない.各基本肉眼型はいくつかの病変を含んでいる.次いで,基本肉眼型である基本病変の肉眼的特徴とその周辺粘膜の肉眼的特徴とを組み合わせることで,各疾患は肉眼的に診断できる.これに組織所見を加えることで,炎症性腸疾患の病理学的鑑別診断はより確実なものとなる.
著者
八尾 隆史
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.694, 2017-05-24

肉芽,肉芽腫の定義 肉芽は毛細血管に富んだ新生結合組織(幼弱な結合組織)であり(Fig. 1),肉眼的に顆粒状の盛り上がりを示すためgranulation tissueと呼ばれる. 肉芽腫という言葉は,もともとVirchow(1865年)が肉芽から成る限局性の腫瘤あるいは腫瘍という意味で用いたが,現在では炎症性のものを指している.肉芽腫には,普通の肉芽から形成されるものと,マクロファージないし類上皮細胞(腫大した組織球)の結節状増殖から成るものがある.後者は①サルコイドーシス型,②結核型,③偽結核型,④異物型の肉芽腫,⑤Aschoff結節(リウマチ熱での心臓の肉芽腫),⑥リウマトイド結節(関節リウマチで出現)に分類される.これらのうち,結核型は乾酪化,偽結核型(エルシニア腸炎など)は膿瘍化,リウマトイド結節は類線維素壊死という特徴的な中心壊死を伴う.膿瘍の定義 膿瘍は,臓器組織の内部で起こる限局性の化膿性炎症で,炎症局所の組織が崩壊した好中球から遊離される各種の分解酵素の働きで融解し,膿が貯留した病巣である(Fig. 3).