著者
鈴木 みずえ 松井 陽子 大鷹 悦子 市川 智恵子 阿部 邦彦 古田 良江 内藤 智義 加藤 真由美 谷口 好美 平松 知子 丸岡 直子 小林 小百合 六角 僚子 関 由香里 泉 キヨ子 金森 雅夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.487-497, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
34

目的:本研究の目的は,パーソン・センタード・ケアを基盤とした視点から認知症高齢者の転倒の特徴を踏まえて開発した転倒予防プログラムの介護老人保健施設のケアスタッフに対する介入効果を明らかにすることである.方法:2016年5月~2017年1月まで介護老人保健施設で介入群・コントロール群を設定し,認知症高齢者に対する転倒予防プログラムを介入群に実施し,ケアスタッフは研修で学んだ知識を活用して転倒予防に取り組んだ.研究期間は,研修,実践,フォローアップの各3カ月間,合計9カ月間である.対象であるケアスタッフにベースライン(研修前),研修後,実践後,フォローアップ後の合計4回(コントロール群には同時期),転倒予防ケア質指標,学際的チームアプローチ実践評価尺度などのアンケートを実施し,割付条件(介入・コントロール)と時期を固定因子,対象者を変量因子,高齢者施設の経験年数,職種を共変量とする一般線形混合モデルを用いた共分散分析を行った.結果:本研究の対象者のケアスタッフは,介入群59名,コントロール群は70名である.転倒予防プログラム介入期間の共分散分析の結果,転倒予防ケア質指標ではベースライン63.82(±11.96)からフォローアップ後70.02(±9.88)と最も増加し,有意な差が認められた.介入効果では,認知症に関する知識尺度の効果量が0.243と有意に高かった(p<0.01).結論:介入群ではケアスタッフに対して転倒予防ケア質指標の有意な改善が得られたことから,転倒予防プログラムのケアスタッフに対する介入効果が得られたと言える.
著者
松本 智里 加藤 真由美 兼氏 歩 福井 清数 髙橋 詠二 平松 知子 谷口 好美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.309-317, 2018 (Released:2019-03-09)
参考文献数
37

目的:女性変形性股関節症患者の術前後の歩容の自己評価と心理社会的側面を,人工股関節全置換術(THA)患者と低侵襲寛骨臼骨切り術(SPO)患者の2つの視点から比較し検討した.方法:術後6~12ヶ月の女性THA患者とSPO患者に無記名自記式質問紙調査を行い,術前と術後の歩容の自己評価と心理社会的側面を比較した.結果:THA患者70名,SPO患者10名から回答を得た.THA患者とSPO患者の歩容の自己評価はともに術前より術後に改善した.術前の歩容の自己評価と関連したのは,THA患者は跛行への思いと杖歩行への思い,抑うつであった.術後の歩容の自己評価と関連したのは,THA患者は自尊感情と抑うつ,公的自己意識,全体的健康感で,SPO患者は全体的健康感のみであった.結論:女性変形性股関節症患者の歩容の自己評価をアセスメントすることは心理社会的側面の支援の一助となると示唆された.術式によって関係する心理社会的側面の項目には違いがあり,各々の時期や特徴に合わせたケアの必要性が考えられた.
著者
鈴木 みずえ 加藤 真由美 谷口 好美 平松 知子 丸岡 直子 金盛 琢也 内藤 智義 泉 キヨ子 金森 雅夫
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.27-38, 2021-03-10 (Released:2022-04-03)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,パーソン・センタード・ケアを基盤とし,さらに認知症高齢者の転倒の特徴を踏まえて開 発した転倒予防教育プログラムの介護老人保健施設に入所する認知症高齢者に対する介入効果を明らかにすることである。【方法】2016 年6 月~2017 年5 月まで北陸地方の介護老人保健施設で介入群・コントロール群を設定し,認知症高 齢者に対する転倒予防教育プログラムを介入群に実施し,ケアスタッフは研修で学んだ知識を活用して転倒予防に取り組んだ。研究期間は,ベースライン,研修,実践,フォローアップの各3 か月間,合計12 か月間である。【結果】本研究の介入群は18名(男性5名:27.8 %,女性13 名:72.2 %)コントロール群は14名(男性2名: 14.3 %,女性12 名:85.7 %)であった。平均年齢は,コントロール群は84.79(± 6.59)歳,介入群は86.67(± 7.77)歳であった。転倒率・転倒件数に関しては,介入群の転倒率はベースライン期間66.7 %に対して実践期間は41.2% と減少,転倒件数ではベースライン期間19 件から実践期間10 件と減少していた。介入群をベースライン時のGBS スケール下位尺度C(感情機能),D(認知症の症状)の得点で高群,低群の2 群に分けた結果,高群において転倒件数が有意に減少していた。【考察】本研究はBPSD 高群に対して転倒率が有意に減少したことから,BPSD に関連した転倒予防に効果的なこと が示唆された。
著者
秋月 仁美 坂本 奈穂 西 あずさ 榊 友希 出戸 亜沙子 永田 真由美 吉田 有希 笹川 寿之 平松 知子 正源寺 美穂
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.79-85, 2006-11-01
被引用文献数
1

本研究では健康度自己評価に関連する因子を明らかにするため,A県に居住する健康な高齢者897名を対象に質問紙調査を行った(男性214名,女性683名,有効回答率83.7%).多重ロジスティック回帰分析の結果,健康度自己評価と病気・障害の有無のそれぞれに関連する因子として以下の結果を得た.1.健康度自己評価が高いことに関連する因子として,病気や障害がない,日常動作に困難を感じない,痛みによる生活への影響がない,自分は若いと感じている,生活に満足している,付き合いがある,趣味がある,熟眠感がある,毎日運動を行っていることがあげられた.2.病気や障害がないことに関連する因子として,70〜74歳あるいは85歳以上,女性,服薬をしていない,日常動作に困難を感じない,心配や不安がない,食欲があることがあげられた.これらの結果から地域の健康な高齢者の健康を維持するためには,身体的健康だけではなく,心理的,社会的,そして日常生活に伴って感じられる自分自身に対する満足感や,自分自身の意志によって行われる保健行動も重要である可能性が示唆された.
著者
大島 あゆみ 宮中 めぐみ 泉 キヨ子 平松 知子 加藤 真由美
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.53-61, 2005-11-01
被引用文献数
2

本研究の目的は,老人性難聴をもちながら地域で生活している高齢者の体験の意味を明らかにすることとした.対象は耳鼻科医に老人性難聴の診断を受け,地域で生活している高齢者17名である.方法は半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,難聴高齢者は何とかして聞きたいと積極的に工夫して聞いていた.一方では,すべてを聞こうとは思わないと聞かなくてもよいと思えることを自ら選択していた.また,聞こえづらさにより趣味や仕事,人との関わりに影響を受けるだけでなく,身の危険も感じていた.補聴器は思いどおりにならないとしながらも,自分が補聴器に合わせて慣れなければならないと,開きたい場面で補聴器を利用していた.さらに,難聴高齢者は聞こえそのものや他人と比較し自分を捉え,今後も何とか死ぬまで聞こえを保持したいと思いながら,地域で生活していることが明らかになった.以上より,難聴高齢者がさまざまな思いをあわせもち地域で生活していることを理解し,「聞きたい」という強みを支える援助の必要性が示唆された.