著者
庄野 浩資 西川 朝也
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.317-330, 2004
被引用文献数
3

リンドウの切り花栽培において重要となる切り前,すなわち採花ステージの判断は,現状では収穫作業者の主観に依存しており,これが出荷商品の品質のばらつきを生む要因の一つとなっている.そこで本研究では,採花ステージの評価・判断のための客観的指標の開発を目的に,全8種類の画像情報を考案し,その有効性を検討した.考案した画像情報は,「頂花部構成要素の大きさ計測に基づく画像情報(4種類)」と「頂花部構成要素の個数計測に基づく画像情報(4種類)」である.前者は,頂花部の花弁あるいは蕾の面積から,後者は,頂花部の未熟および過熟な蕾の個数から採花ステージの評価を図る.具体的には,圃場にてリンドウ58個体分の画像を撮影し,そこから各画像情報を算出した.さらに,この結果とあらかじめ専門家が作成した採花ステージ評価結果との相関性を検討し,その有効性を検討した.結果として,6種類の画像情報において採花ステージとの相関性が認められ,重回帰分析による採花ステージの推定では,推定値と実測値との相関係数が0.9を超えるなど,画像情報の有効性を示唆する結果となった.将来的には,画像情報に基づく採花ステージの自動画像計測装置の開発など,リンドウ収穫作業の高精度および高効率化に寄与すると期待する.
著者
庄野 浩資 天羽 弘一 高倉 直
出版者
日本農業気象学会
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.87-92, 1989-09-10 (Released:2010-02-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

A method to detect cucumber fruits in the canopy using image processing technique has been studied, with the aim of robotic harvesting. This method distinguishes a fruit from the other parts of the plant, not by the difference in their colors, but by the difference in shapes.The brightness in the digitized image was differentiated in horizontal direction, and clipped into three values (+, 0, -) by two thresholds. Then ridge-lines were drawn between (+) value area and (-) value area.The ridge-line images ordinarily contain some noise from the other parts of the plant. Accordingly, two images for the same scene were taken, one was illuminated from the left and the other was illuminated from the right. The center line image was obtained by comparing the two ridgeline images in consideration of the shift of the fruit's ridge-line which was calculated by a model. After the noise was reduced in the center line image, the center line of the fruit remained.This method contains four unknown parameters, and it was found that these parameters have the optimum value. But there were some deviations in the optimum values obtained from different images. The deviations were not so severe as to make the detection impossible in our experiment, but in general it is necessary to determine the optimum values applicable to many other scenes.This method was applied to some images taken in the field, and showed that it was able to detect the fruit when it was fully illuminated from both sides. The detection, however, became difficult when the light was intercepted by leaves and the illumination for the fruit was not enough.
著者
庄野 浩資 芹沢 和洋 山口 香子 牛草 貴行 松嶋 卯月 小出 章二 立澤 文見 武田 純一
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.95-105, 2012

岩手県における主要花卉作物である切り花リンドウは,劣化すると茶褐色の"老花"となって商品価値を大きく損ねる.このため,これまで切り花の生育レベル,特に若花と変色前の早期老花を"色彩情報"に基づいて判別する技術の研究が進められてきた.本研究の特徴は,判別に利用する情報として,リンドウ花冠の"光沢"に関連する情報に注目した点にあり,今回はその定量化の方法の開発と生育レベルとの関係性を検討した.具体的には,まず2つの偏光フィルタを用いて,花冠の光沢と散乱光を含む画像,さらには,散乱光のみを含む画像それぞれの撮影を実現する低コストな画像撮影装置を開発した(ダブル偏光フィルタ法).次に,得られた画像から平滑度指標などの光沢に関連する情報を求め,これらと生育レベル間の関連性を検討し,同情報に基づく生育レベル判定の可能性を検討した.この結果,エゾリンドウ系統2品種において,平滑度指標に基づいて若花と早期老花を良好な正解率で判別可能であることを確認した.以上から,本研究におけるダブル偏光フィルタ法による光沢の定量化は,切り花リンドウの生育レベルの低コストな非破壊・非接触的測定手法の実現に十分寄与すると考えられる.<br>
著者
松嶋 卯月 庄野 浩資
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

重水は水と化学的性質が似ており植物体の根から良く吸収されるため,植物水分生理を研究するとき良くトレーサとして用いられる.一方,近赤外線には,水に吸収されるが重水にほとんど吸収されない波長帯があり,それを利用し,近赤外分光イメージングと重水トレーサを組み合わせることで,葉,茎,根など植物体内における水移動を可視化できる.本研究では,植物体内における水移動を巨視的,微視的に可視化する方法を確立し,あわせて,本イメージング法用のユーザーインターフェイスを開発した.
著者
庄野 浩資 関 朝美 山口 香子 松嶋 卯月 小出 章二 武田 純一
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.122-129, 2009 (Released:2009-10-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2

岩手県における重要な花卉作物の一つである切り花リンドウの収穫後の商品価値を長く保つためには,鮮度を長く維持し得る生育ステージの個体を選別・収穫することが有効と考えられるが,現状では,生育ステージの非破壊・非接触的な判定手法は開発されていない.ここで,庄野・関ら(2007)は,花冠の波長域700~900 nmにおける分光情報の生育ステージ判定における有効性を指摘したが,波長域400 nm以下のいわゆる紫外線領域に関しては未検討である.そこで本研究では,リンドウ花を紫外線領域(UVA)で撮影した画像の画素値に基づく生育ステージの判定手法の可能性を検討した.その結果,特定の一品種において同画像の花の画素値は,花粉が成熟して飛散を始めるとほぼ同時期に顕著に上昇した.ここで,花粉はミツバチなどの花を痛める昆虫を内部に誘引する要因の一つである.このため,同画素値は,これらの有害な昆虫の飛来時期を推定し,最適な収穫時期を決定する上でも有用な情報と期待される.以上の結果から,リンドウの生育ステージの非破壊・非接触的判定システムの実現において紫外線画像が果たす役割は大きいと期待できる.