著者
栗田 春奈 吉田 智彦 本條 均 高橋 行継
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.21-28, 2014

携帯電話・スマートフォン等モバイル通信機器の急速な普及により,従来のパソコン向けウェブサイトを携帯電話やスマートフォン向けに改編する必要性が生じる場合がある.そこで,パソコン向け既存ウェブサイト「作物学用語集」を例に,初学者でもできるだけ簡易に取り組める手法を検討し,携帯電話向けサイトとAndroid用アプリに変換した.携帯電話向けサイトに変換するためのユーティリティは,無料で公開されているTiny   BASICで作成した.パソコン向けウェブサイトの元ファイルの長いテキストは,各用語の先頭につけられた星マークを目印に短いテキストへ分割し,必要なHTMLタグは各テキストの前後に追加した.各ファイルを識別するために,全ファイルに通し番号を付けた.作成したファイルは無料のFC2ホームページ・サービスにアップロードし公開した.Android用アプリについては,プログラミングについての特定の知識なしでAndroid版・iOS版両方のアプリ作成が可能なアムゼネット社の「アプリビルダー」を利用して,携帯向けサイト用に分割した各用語のテキストファイルを用いて各項目を作成し,Google Playで無料のアプリとして公開した.
著者
Winston E. Marte Teruaki Nanseki Fernando Bienvenido
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.66-73, 2011 (Released:2011-07-01)
参考文献数
7

This paper describes the role of educational programs, institutional settings, and information and communication technology (ICT) tools on the development of integrated production in Almeria, Spain. To consider the necessity of integrated production and the role of above factors, the transfer of integrated production system to other countries is also discussed. Integrated Production (IP) is an agricultural production system that uses natural methods and natural mechanisms of production to manage pests and diseases, taking into account the protection of the environment and the farm economy, with social responsibility. IP not only takes into consideration operations at the farm level but also at packaging, processing, and labeling. IP regulations not only are in line with other certified quality norms such as Naturane, AENOR, and Global-GAP but also include more demanding regulations and provide users tools to assure product quality and production requirements. The availability of ICT tools such as administrative, technical support, and private management and traceability have significantly contributed to control and secure the accrue application of IP rules by the regional government and certification entities. They also facilitate the adoption of IP by farmers through the groups of integrated production (APIs), and to translate huge amounts of information in a comprehensive manner so that consumers are able to verify product quality and production requirements. IP has not only been provided of the normative framework but also of educational programs and institutional settings. Farmers are trained on pest, pesticides, and labor risk management while technicians are capacitated on a wider range including product quality certification norms at both farm and processing center levels. The development of ICT tools, the provision of educational programs along with the cooperation and coordinated work of all the stakeholders and organizations involved in IP is bringing about the successful application and development of this agricultural system.
著者
平藤 雅之 世一 秀雄 三木 悠吾 木浦 卓治 深津 時広 田中 慶 松本 恵子 星 典宏 根角 博久 澁谷 幸憲 伊藤 淳士 二宮 正士 Adinarayana J. Sudharsan D. 斉藤 保典 小林 一樹 鈴木 剛伸
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.60-70, 2013
被引用文献数
3

フィールドサーバは,野外における情報収集,灌水等の制御,センサ等新デバイスの実験を行うためのセンサネットワーク用プラットフォームである.そのためには多機能かつ十分な拡張性を備えると同時に,機械作業や栽培ステージに応じて手軽に移設でき作業者等の安全性にも配慮したオールインワン化及びワンユニット化が必要とされる.また,半導体技術の進歩やCPU等LSIの世代交代にあわせてハードウェア及びファームウェアの更新と機能向上を迅速に行う必要がある.ところが,大量生産ができない段階では低コスト化と高機能化を両立させることは困難であり,しかもそのような初期段階においては低コストで高機能な試用機がないとアプリケーション開発ができず市場が拡大しないというジレンマがある.これらの問題を解決するための制作手法としてオープンソース・ハードウェアを用いる方法を考案し,オープンソースのフィールドサーバ(Open-FS)を開発した.さらに,Open-FSを用いて測定したデータを低コストに収集・閲覧・共有するための方法として,既存のクラウドサービス(Twitter等)とHTML5で記述した閲覧用ソフトウェアからなる"センサクラウド・システム"を提案し,試作及びインドと日本における長期現地実験によってその有効性を評価した.<br>
著者
栗原 伸一 霜浦 森平
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.15-24, 2006
被引用文献数
3

多くの農村では, 急速に進む高齢化や過疎化によって, 多面的機能を有する地域資源の維持管理が難しくなってきている. また, 地域を問わず, 子供に対する犯罪や高齢者の孤独死の増加なども危惧されている. しかしながら, こうした地域の問題は, 本来, コミュニティが正常に機能していれば, その多くは防げる性質のものである. 本研究では, そうした問題意識のもと, コミュニティに関する意識調査を千葉県の住民に対して実施し, その実態と評価の要因を都市・農村間で比較分析した. その結果, 農村では現在でも高齢者などによって伝統的な文化・行事が守られ, 比較的地域住民のまとまりが強いが, 都市ではコミュニティでの共同活動は環境美化作業など限定的であることが確認された. そして何れの地域でも, そうした活動への参加は, 町内会や自治会行事であるためという, ネガティブな理由であった. また, コミュニティに対する満足度評価の要因分析を通して, 婦人や若者の意見を反映したり, 新旧住民の交流の機会を創造することによってコミュニティを再評価させることや, 既に様々な面で地域の柱の一つとなっている町内会・自治会を上手く利用することも, コミュニティ活動の促進には有効であることが示唆された.
著者
佐藤 正衛 南石 晃明
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.53-65, 2011
被引用文献数
1

本研究の目的は,農薬使用の環境影響に配慮しうる営農計画支援システムを開発し,本システムを経営意思決定に活用する方法を提示することである.こうしたシステムの機能では,経済性,環境管理指標の営農指標群を同時算出する経営シミュレーションが実施できること,経営シミュレーションに利用する環境情報と財務情報等を整理・蓄積し,利用者独自のデータを組織内で共有利用する仕組みの実現が課題であった.そこで,以下のシステム機能を開発し,FAPS-DBとの統合化を行った.主な開発機能は,(1)農薬環境リスク指標算出,(2)温室効果ガス排出量推計,(3)独自データベースの管理とそのデータを利用した経営シミュレーションサービスの提供,(4)農業技術体系Excelデータブックの拡張である.開発システムとFAPS-DBとを統合化して経営シミュレーションを実施することにより,作付体系変更や価格変動等の経営内部・外部環境の変化による環境管理指標,経済性指標等の経営指標への影響を数量的,グラフィカルに把握可能であることを確認した.さらに,当システムによる営農シミュレーション分析を営農計画の意思決定場面でどのように活用するかを,組織内の各主体の役割との関係において考察し,環境配慮を支援する営農計画システムとしての利用可能性を明らかにした.<br>
著者
島川 悠太 杉山 純一 中嶋 和成 高木 順子 宇田 渉
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.119-125, 2008
被引用文献数
2

SEICAカタログ番号を含んだ商品バーコード・SEICA商品バーコードで売上を管理するPOSシステム[POS支援システム]を利用して,直売所において農産物の生産情報を効率的に活用する仕組みを開発した.既存のPOS端末と情報開示端末に改良を加え,レジ打ちの際にバーコードで読み取ったSEICAカタログ番号をPOS端末から生産情報開示端末に転送することによってインターネットから最新の生産情報を取得して表示する機能を実現した.これにより,レジ打ちの際に,精算待ちをしている消費者に対して生産情報を発信できるようになった.また,商品バーコードと共に,情報開示用のQRコードを印字できる商品バーコードラベル印刷プログラムを開発し,商品バーコードラベルを通じても生産情報を容易に開示できるようにした.更に,価格マスタの変更を伴うSEICAバーコードラベルの印刷管理を安全かつ容易に行えるよう,商品バーコードラベル印刷プログラムに指紋認証技術を採用した.これらの仕組みにより,既存のPOSシステムでは実現できなかった効率的な生産情報開示と販売管理の両立が可能になった.<br>
著者
Sasaki Yutaka Shibusawa Sakae Negishi Hanako
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.228-235, 2013

Because Japanese farmers are aging, the need for cooperative working type agricultural robots that can perform tasks together with human beings is becoming particularly acute. Such robots need the ability to integrate their activities seamlessly with human beings and should possess functions that can be controlled intuitively, even by new agricultural workers and elderly people. These functions are generally considered under the heading of <i>Kansei</i> communication. Robots that incorporate such abilities include the <i>Kansei</i> Agri-robot and the <i>Chinou</i> robot, which can extract tacit knowledge and retain it for future use, and which have been the subject of intense study and development work. In this paper, we report on the fabrication and evaluation of an intuitive control component that utilizes human motions, which is one of the core technologies for issuing instructions, that is based on the Kinect sensor. The Kinect sensor, which can trace and replicate motion information based on a human skeleton movements, is a gaming device for the Xbox 360 released by Microsoft Corporation in 2010. It consists of three-dimensional depth sensors comprising an infrared (IR) emitter and an IR depth sensor, an RGB camera, and a multi-array microphone. The motion control technique targeted in this study is the finger pointing that will be used to instruct the robot on how to move and position itself correctly in a working area or other location. As the development environment, we used Microsoft Windows 7 as the operating system, OpenNI as the library, and NITE as the middleware. Visual Studio 2010 and the C++ language were used for software development. The following results were obtained. First, we found that the skeleton motion information of a farmer could be extracted at various angles using the Kinect sensor. Next, an algorithm for calculating finger-pointing points from the joint coordinate information relating to the shoulders, hands, and feet of the farmer was formulated. Based on the results of our verification experiments, we found that the algorithm accuracy was high when considered in terms of the assumed robot size and working area, and that control of a robot by finger pointing was possible. Estimation errors were found to vary depending on the sensing angle of the robot in relation to the farmer, and sensing errors from behind the farmer were greater than those occurring from other angles. It was also found that the Kinect sensor could be used in field conditions during early morning and late afternoon hours when light intensities had decreased, as well as under artificial lighting conditions.
著者
庄野 浩資 西川 朝也
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.317-330, 2004
被引用文献数
3

リンドウの切り花栽培において重要となる切り前,すなわち採花ステージの判断は,現状では収穫作業者の主観に依存しており,これが出荷商品の品質のばらつきを生む要因の一つとなっている.そこで本研究では,採花ステージの評価・判断のための客観的指標の開発を目的に,全8種類の画像情報を考案し,その有効性を検討した.考案した画像情報は,「頂花部構成要素の大きさ計測に基づく画像情報(4種類)」と「頂花部構成要素の個数計測に基づく画像情報(4種類)」である.前者は,頂花部の花弁あるいは蕾の面積から,後者は,頂花部の未熟および過熟な蕾の個数から採花ステージの評価を図る.具体的には,圃場にてリンドウ58個体分の画像を撮影し,そこから各画像情報を算出した.さらに,この結果とあらかじめ専門家が作成した採花ステージ評価結果との相関性を検討し,その有効性を検討した.結果として,6種類の画像情報において採花ステージとの相関性が認められ,重回帰分析による採花ステージの推定では,推定値と実測値との相関係数が0.9を超えるなど,画像情報の有効性を示唆する結果となった.将来的には,画像情報に基づく採花ステージの自動画像計測装置の開発など,リンドウ収穫作業の高精度および高効率化に寄与すると期待する.
著者
菅原 幸治 南石 晃明 阿部 浩 井手 洋一
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.123-137, 2006
被引用文献数
2

都道府県による病害虫雑草防除基準の作成を支援するため, クライアント・サーバ型の農薬登録情報取得・編集システムを提案し, 開発を行った. 6県の病害虫雑草防除基準の内容を調査したところ, 県ごとに書式は異なるが作物ごとの農薬使用基準表などのデータ項目は共通部分が多いことがわかった. このため, 更新頻度の高い農薬登録情報のデータベースをサーバ側で一括管理し, Webを通して農薬使用基準データの提供を行うとともに, 各クライアント側でサーバから任意にデータを取得して編集を行うシステムが妥当であると考えた. 開発したシステムの構成は, 農薬登録情報のデータベース (農薬ナビDB) から農薬使用基準データを抽出して配信するサーバ側アプリケーション「農薬ナビDBサーバ」, ならびに, 対象とする農薬, 作物, 病害虫雑草に応じて農薬使用基準データを取得し並べ替え・集計等の編集を行うクライアント側アプリケーション (以下, クライアントアプリ) からなる. クライアントアプリは利用目的に応じて多数の種類があってよいが, 汎用性の高いクライアントアプリとして, データ検索・取得の操作性を追求した「ACFinder for 農薬ナビ」, ならびにデータの取得後に任意に編集可能な「ACLoader」を開発した. クライアントアプリ上でデータの並べ替え, 集計, 二次検索, 追記などの操作を直接行うことで, データの検索・編集に要する労力を軽減可能となる.
著者
斉藤 保典 小林 一樹 鈴木 剛伸 平藤 雅之 木浦 卓治 深津 時広
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-11, 2013
被引用文献数
2

圃場現場の環境情報や作物生育状況を実時間で計測し,公開と情報共有を行う圃場センシングネットワーク「アグリサーバ」を構築した.アグリサーバのセンシングノードには,気温・湿度および日射量センサ,カメラ,通信デバイス,制御回路等が含まれ,ノード管理および計測データの転送等は,全てインターネットを通じて行われた.センシングノード自体は,長野県上高井郡小布施町のブドウ,クリ,リンゴ,野菜の各圃場に設置され,平成18年度から試験運用を開始し平成20年度より本格運用を継続している.データの公開と利活用を進めるため,アグリサーバ専用のホームページ「農ライブ」を制作した.農ライブにおける農業情報の利活用法として1)IT/精密農業,2)トレーサビリティ,3)農ビジネス,4)教育,5)コミュニケーション,6)アグリツーリズム,への応用を提案し,具体的事例を示すことでその有効性を議論した.その結果アグリサーバは,小布施町の活性化にとって非常に重要な農業情報を提供することが示された.<br>
著者
井口 信和 元永 佳孝 内尾 文隆 二宮 正士 亀岡 孝治
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.155-164, 2006
被引用文献数
3 6

農作物の生産現場において, 画像データは, 栽培管理や栽培記録, 生育レベルの診断, 病害虫の診断などに広く利用されている. 本研究では, 農業の現場で利用される様々なデジタル画像データの効率的な交換を目的として, P2Pを用いた農作物画像共有システムであるBIXイメージブローカシステムを開発した. 本システムはHybrid型P2Pシステムとして開発したことを特徴とし, コンテンツである画像データと画像データのメタデータを分散して管理する. これにより, 画像データの検索速度の向上と効率的な画像交換が実現できると同時に, ピアグループへの参加認証を行うことが可能となり, 特定のグループ内での安全なデータ交換が実現できる. 利用者はP2Pノード上のユーザインターフェイスを用いて簡単に画像データの検索・取得などが実行できる. 本研究では, プロトタイプを開発し, 実際にインターネットを経由した利用実験を行い, P2Pによる農作物画像共有システムの実現性を示した.
著者
佐々木 豊
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.177-186, 2009
被引用文献数
2

現在,学力低下や理数離れ,諸外国と比較した日本の科学系学問への意欲水準の低さなどの問題が存在する.近年,特に工学系に対する学生の人気が低下している.農業工学とは,食・環境を対象に,工学的アプローチをする学問分野である.上記に加えて農業工学は,元々自然,環境,動植物が好きな学生に対して,工学系基礎学問を用いているため,農業系の他分野に比べて志望する学生が少ない.更に産業の魅力低下も加わり,学生の学習意欲の向上が大きな課題となっている.また,物理,数学,情報技術に対し,苦手意識を持っている学生が多数存在する.これを改善するために教材は重要といえ,手で触れたり,実際に自分の目で見たりして体験することで学習効果は向上する.しかし情報技術の進歩の速さから,自作の教材では常に改良を迫られ,維持・管理が難しい側面も存在する.</br>そこで本研究では,現在の農業工学教育の調査を先ず行った.それを基に,学習意欲を高める農業工学教育を検討するため,レゴマインドストームNXTを教材として授業設計及び実施をし,その教育効果の評価を行った.レゴマインドストームNXTは,情報教育,農業工学専門教育,アイデア創造型学習において,良好な学習支援効果が確認できたので,本論文ではこれらを報告する.<br>
著者
庄野 浩資 芹沢 和洋 山口 香子 牛草 貴行 松嶋 卯月 小出 章二 立澤 文見 武田 純一
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.95-105, 2012

岩手県における主要花卉作物である切り花リンドウは,劣化すると茶褐色の"老花"となって商品価値を大きく損ねる.このため,これまで切り花の生育レベル,特に若花と変色前の早期老花を"色彩情報"に基づいて判別する技術の研究が進められてきた.本研究の特徴は,判別に利用する情報として,リンドウ花冠の"光沢"に関連する情報に注目した点にあり,今回はその定量化の方法の開発と生育レベルとの関係性を検討した.具体的には,まず2つの偏光フィルタを用いて,花冠の光沢と散乱光を含む画像,さらには,散乱光のみを含む画像それぞれの撮影を実現する低コストな画像撮影装置を開発した(ダブル偏光フィルタ法).次に,得られた画像から平滑度指標などの光沢に関連する情報を求め,これらと生育レベル間の関連性を検討し,同情報に基づく生育レベル判定の可能性を検討した.この結果,エゾリンドウ系統2品種において,平滑度指標に基づいて若花と早期老花を良好な正解率で判別可能であることを確認した.以上から,本研究におけるダブル偏光フィルタ法による光沢の定量化は,切り花リンドウの生育レベルの低コストな非破壊・非接触的測定手法の実現に十分寄与すると考えられる.<br>
著者
竹 あかね 斉藤 三行 岡辺 明子
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.42-49, 2008
被引用文献数
4

農林水産関連情報の検索効率化に資する言語資源を開発したので,その概要を報告する.筑波事務所は,国際連合食糧農業機関(FAO)が欧州共同体委員会と共同開発した多言語シソーラス(AGROVOC)の収録用語(約27,300語)を2002年に日本語へ翻訳した.AGROVOCの収録分野は農林水産業,食品およびその関連分野であり,日本語翻訳した用語は,英語・フランス語・スペイン語・中国語・アラビア語,チェコ語・ポルトガル語・日本語・タイ語・スロバキア語・ドイツ語の11言語で利用できる.AGROVOCには日本固有の農林水産関連用語が不足していたため,2004年にAGROVOCに用語を追加した農林水産技術用語集の作成を行った.用語集は,約35,000用語を収録し,各用語は日本語・英語で表記される.追加した用語は,用語間の関連性を新たに構築し,階層関係・等価関係の情報を収録した.また,この用語集をもとに農林水産関連文献からの索引語抽出に利用できる形態素解析辞書を作成した.この辞書には,日本語で表記された用語,および表記揺れ情報を収録した.<br>
著者
菅原 幸治 田中 慶 大塚 彰 南石 晃明
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.381-393, 2006
被引用文献数
1 1

農薬適正使用ナビゲーションシステム (農薬ナビ) の研究開発にもとづき, 農薬使用の事前判定・履歴記帳を携帯電話単独でインターネット接続せずに可能にするべく, NTTドコモの携帯電話FOMA端末上で作動するアプリケーション (iアプリ) として「農薬ナビ誤用防止君」 (以下, 誤用防止アプリ) を開発した. 全体的なアプリケーション構成はクライアント・サーバ型システムであり, クライアント側アプリケーションである誤用防止アプリと, 作物・品種, 農薬使用基準等のマスタデータと農薬使用履歴データを管理するサーバ側アプリケーション (以下, サーバアプリ) からなる. これにより, 個々の生産者が携帯電話上で使用する誤用防止アプリでは農薬使用の適正判定・履歴入力を行い, サーバアプリではマスタデータの送信および農薬使用履歴データの受信・表示を一括して行うことができる. 生産者が誤用防止アプリを利用するには, その栽培作物や使用農薬にあわせて, サーバアプリのデータベースにおけるマスタデータ, 特に農薬使用基準を事前に登録する必要がある.<br>長野県JA長野八ヶ岳野辺山営農センターとその管内の野菜生産者5名の協力により, 本アプリケーションによる農薬使用の適正判定・履歴入力および履歴データ収集の評価試験を2005年6~10月に実施した. 営農センター職員からは, サーバアプリの農薬使用履歴表示機能について, 生産者および圃場作付け区画ごとの収穫可能日が事前に確認できる点でプラスの評価が得られた. 一方, 誤用防止アプリを使用した生産者からは, 利点を感じない旨の意見もあったが, 農薬使用に慣れていない者には有用かもしれないとの評価が得られた. 誤用防止アプリについては, 操作がやや面倒であることのほか, 収穫予定日が変更になる際に随時その修正を行う必要がある点が指摘された. また, 改良要望として, 区画や農薬の選択入力の際にそれぞれの収穫予定日や収穫前日数を表示すること, 農薬使用履歴の表示をより見やすくすること, 生産者ごとに使用農薬をマスタデータに登録することなどが挙げられた.
著者
吉田 智一 高橋 英博 寺元 郁博
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.187-198, 2009
被引用文献数
2 4

多数の圃場を管理する地域農業の担い手が直面している栽培管理事務作業を効率化し負担を軽減する目的で,GIS互換の圃場地図を使用した作業計画管理ソフトを開発している.このソフトは作物生産に関係する圃場や作付から一連の栽培作業,収穫後の調製・出荷に至るまでの様々な生産過程で発生する情報をデータベース化して管理することを基本とし,そのユーザインタフェイスにGIS互換の圃場地図を使用して直感的に分かりやすい視覚的なデータ入力および表示を実現しているところに一つの特長がある.同様の機能は市販のGISソフトを用いても構築可能であるが,本ソフトではデータベースエンジンやマップ表示にランタイムライセンスフリーのコンポーネントを使用し,その上に圃場管理や農作業管理に必要なユーザインタフェイスを実装していることから,無償配布可能となっていることにもう一つの特長がある.本ソフトはWeb公開による利用者からのフィードバックに基づき機能を改良・拡充しながら,現場農業者への普及を進めている.<br>
著者
小平 正和 澁澤 栄 二宮 和則 加藤 祐子
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.110-121, 2009
被引用文献数
2

リアルタイム土壌センサ(RTSS)を用いて大規模畑作地の効率的な圃場マッピング手法の開発を行った.</br>具体的には,土壌観測ラインと圃場マップの表示に注目した.一筆管理は慣行法の対角線とし,局所管理は定幅散布機の走行間隔として圃場全面を観測した.圃場マップは,営農者が理解し易いグリッドマップとした.グリッドマップの特徴は,グリッド内に平均値と最大値および最小値を表示した.</br>RTSSの主な改良点は,土壌観測速度を慣行の2倍(0.56 m/s)にした.高速化による検量線の感度変化をPLS回帰分析により解析した.得られた決定係数(R <sup>2</sup>)は,土壌水分(0.77),有機物含有量(0.49),pH(0.53),硝酸態窒素(0.09),全窒素(0.86)および全炭素(0.95)であった.硝酸態窒素は,分析ミスにより土壌試料数が減ってしまったので,参考として記載した.</br>RTSSの高速化により,4圃場で11 haの大規模畑作地に対して1 ha約1時間の観測作業速度を得た.</br>本研究の最大の成果は,営農者が過去の経験として圃場内にライムケーキを多量に溢した場所があることを,圃場マップから正確な位置情報として,確認できたことである.そして,RTSSが意思決定支援の1つとして,営農者に認められたことである.<br>