著者
松嶋 卯月 KARDJILOV Nikolay LEHMANN Eberhard H. HERPPICH Werner B.
出版者
低温生物工学会
雑誌
低温生物工学会誌 (ISSN:13407902)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.9-14, 2012-04-15

Neutron imaging is a useful method for studying the water distribution of intact plants, due to the strong interaction of neutrons with hydrogen. This interaction provides high image contrast, even in the presence of small quantities of water. Moreover, the combination of neutron imaging with low-contrast tracer D_2O enables direct visualization of water flow and calculation of water flow rates at the tissue level in plants, at high resolution. This article introduces these two visualization methods, and reports our most recent experimental results using these methods.
著者
庄野 浩資 芹沢 和洋 山口 香子 牛草 貴行 松嶋 卯月 小出 章二 立澤 文見 武田 純一
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.95-105, 2012

岩手県における主要花卉作物である切り花リンドウは,劣化すると茶褐色の"老花"となって商品価値を大きく損ねる.このため,これまで切り花の生育レベル,特に若花と変色前の早期老花を"色彩情報"に基づいて判別する技術の研究が進められてきた.本研究の特徴は,判別に利用する情報として,リンドウ花冠の"光沢"に関連する情報に注目した点にあり,今回はその定量化の方法の開発と生育レベルとの関係性を検討した.具体的には,まず2つの偏光フィルタを用いて,花冠の光沢と散乱光を含む画像,さらには,散乱光のみを含む画像それぞれの撮影を実現する低コストな画像撮影装置を開発した(ダブル偏光フィルタ法).次に,得られた画像から平滑度指標などの光沢に関連する情報を求め,これらと生育レベル間の関連性を検討し,同情報に基づく生育レベル判定の可能性を検討した.この結果,エゾリンドウ系統2品種において,平滑度指標に基づいて若花と早期老花を良好な正解率で判別可能であることを確認した.以上から,本研究におけるダブル偏光フィルタ法による光沢の定量化は,切り花リンドウの生育レベルの低コストな非破壊・非接触的測定手法の実現に十分寄与すると考えられる.<br>
著者
松嶋 卯月 庄野 浩資
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

重水は水と化学的性質が似ており植物体の根から良く吸収されるため,植物水分生理を研究するとき良くトレーサとして用いられる.一方,近赤外線には,水に吸収されるが重水にほとんど吸収されない波長帯があり,それを利用し,近赤外分光イメージングと重水トレーサを組み合わせることで,葉,茎,根など植物体内における水移動を可視化できる.本研究では,植物体内における水移動を巨視的,微視的に可視化する方法を確立し,あわせて,本イメージング法用のユーザーインターフェイスを開発した.
著者
庄野 浩資 関 朝美 山口 香子 松嶋 卯月 小出 章二 武田 純一
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.122-129, 2009 (Released:2009-10-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2

岩手県における重要な花卉作物の一つである切り花リンドウの収穫後の商品価値を長く保つためには,鮮度を長く維持し得る生育ステージの個体を選別・収穫することが有効と考えられるが,現状では,生育ステージの非破壊・非接触的な判定手法は開発されていない.ここで,庄野・関ら(2007)は,花冠の波長域700~900 nmにおける分光情報の生育ステージ判定における有効性を指摘したが,波長域400 nm以下のいわゆる紫外線領域に関しては未検討である.そこで本研究では,リンドウ花を紫外線領域(UVA)で撮影した画像の画素値に基づく生育ステージの判定手法の可能性を検討した.その結果,特定の一品種において同画像の花の画素値は,花粉が成熟して飛散を始めるとほぼ同時期に顕著に上昇した.ここで,花粉はミツバチなどの花を痛める昆虫を内部に誘引する要因の一つである.このため,同画素値は,これらの有害な昆虫の飛来時期を推定し,最適な収穫時期を決定する上でも有用な情報と期待される.以上の結果から,リンドウの生育ステージの非破壊・非接触的判定システムの実現において紫外線画像が果たす役割は大きいと期待できる.
著者
西澤 隆 松嶋 卯月 川満 芳信 中西 友子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.メロンの生理障害の一つである「水浸状果」の発生メカニズムについて調べ,トリガーとしてのエチレンの働きと,細胞壁の崩壊に伴う細胞壁間隙の乖離,水移動に伴う,果肉の透明化のメカニズムを明らかにした.2.メロンの「水浸状果」発生には,嫌気的呼吸に伴う果実内部における発酵物質(アセトアルデヒドやエタノール)の蓄積が直接的な要因として関与しているのではなく,細胞壁の乖離に伴う水移動が直接的要因として関与していることを明らかにした。3.メロンの「水浸状果」発生には,必ずしも細胞壁にイオン結合するカルシウムが不足することにより細胞壁同士の乖離が生じる必要はなく,共有結合性ペクチン分子の低分子化に伴う細胞壁同士の乖離が原因として働くこともあることを明らかにした.4.作物の水移動に伴う生理的変化を,切り花,食用作物,青果物を使って検討し,水移動の可視化,細胞の構造的変化とテクスチャーとの関係を明らかにすると共に,農産物の新たな貯蔵法について提唱した.5.近赤外分光分析法,中性子イメージング,レーザードップラー等を用いた,新たな作物内部の非破壊検査法,水移動のリアルタイムな追跡法について検討し,測定技術の改善と応用性を広げることができた.
著者
松嶋 卯月
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-37, 2001-12-01

本研究は,無極性ガスを利用して切り花の鮮度保持を行うことを目的として行われた。緒論において述べたように,無極性ガスは切り花内に溶解すると,細胞内の水が構造化し,生体反応が抑制され鮮度保持効果が得られると考えられ,オレンジキャンドル種のカーネーション切り花で効果が確認されている。本論ではとくに,水の構造化によって水の動きが変化することに着目し,主として,切り花内の水移動の変化という観点から,無極性ガスによる水の構造化の鮮度保持効果を解明することを目的とした。以下に各章ごとの要約を述べる。1 切り花からの無極性ガスの脱離速度(第2章要約) 無極性ガスを利用した保存法のカーネーション切り花に対する適用性を明らかにするために,まず,切り花体内において無極性ガスによる水の構造化がどの程度持続するかを検討する必要がある。ここでは,無極性ガスの溶解の状態をその脱離過程から明らかにすることを目的とした。実験の結果以下のことが確認された。1) 切り花および水からの脱離過程は,いずれも2次の反応速度式で回帰された。以下,切り花からの脱離過程を水と同様の単純な界面からの脱離であると仮定し,両者の比較をおこなった。2) 水からの脱離速度は,脱離表面積に比例した。一方,切り花の脱離表面積と速度定数の比例関係は,比例定数が水とほぼ同じである例と,その約1/3程度低い値である例が見られた。両者の差は,切り花の生理的状態によって脱離する表面積が変化するためと考えられた。3) 切り花の脱離過程は2時間から3時間の間でほぼ終了した。よって,その後のキセノン処理の効果は,大気下において,水に飽和して溶解しているキセノン,および,生体高分子の疎水基近傍で会合しているキセノンによると考えられた。2 切り花内部における水の動的状態(第3章要約) 本章では,無極性ガスによる水の構造化が切り花内の水の動的状態に与える影響を明らかにするために,^1H-NMRによる縦緩和時間T_1の測定を行った。測定の結果以下のことが明らかになった。1) 切り花子房部の平均的T_1は,約0.4秒から0.8秒の間にあり,時間の経過に伴い長くなった。しかし,48時間にわたってキセノン処理区のT_1は対照区より小さな値を示し,無極性ガスによる水の構造化によって,組織内の水の束縛が強くなったと考えられた。2) 上記の平均的T_1を得た同一のデータについて2つの指数近似式を用い解析した結果,0.1秒から0.3秒の範囲および0.4秒から0.8秒の範囲にある2種類のT_1が得られた。短いT_1を持つ水成分(以下I成分と称す)は水の束縛が強い部分,また,長いT_1を持つ成分(以下II成分と称す)は水の束縛が弱い部分の水の動的状態を示すと考えられた。対照区ではII成分のT_1が長くなったが,キセノン処理区では顕著な変化が見られなかった。3) 試料中の全プロトンに対する成分IIの存在割合では,対照区において時間の経過に伴い増減が観察された。キセノン処理区では,成分IIの存在割合の変化は低く抑えられた。これは,細胞の老化および細胞内の液胞と原形質間の水移動の抑制を示すと推察された。3 無極性ガスによる水ストレスの抑制効果(第4章要約) 本章では,第3章の結果を受け,水の構造化によって切り花内部の水移動が低減すると仮定し,切り花の水ストレスの抑制効果として働く可能性について検討した。中性子イメージングによる結果を以下に示す。1) 中性子イメージングによって,カーネーション切り花の水分分布を解析可能である良好な画像を得ることができた。2) 0.5,0.6,0.7MPaのキセノン処理区では,水ストレス下においても階調値の最頻値は対応する対照区より明るい階調に存在し,切り花内の水分量が多いことが示された。その結果,無極性ガスによる処理は,対照区と比較して切り花内の水が保持されることが明らかになった。特に,子房部において水が保持される傾向が顕著であった。3) 水分分布の等高線図の経時変化,および階調値の累積相対度数分布曲線の経時変化では,キセノン処理区が対照区と比較してカーネーション切り花内部の水分量が増加する傾向が顕著であった。すなわち,無極性ガスによって初期の吸水能力が維持されたと考えられた。4 無極性ガスによる処理を行った切り花の生理的応答(第5章要約) 本保存法の効果を総合的に判断するために,無極性ガスによる水の構造化が切り花の生理的状態に与える影響を明らかにすることを目的とした。特に,水の構造化による水移動の変化と生理的状態変化との関係を明らかにするために,切り花の蒸散速度および吸水速度と,生理的状態と密接な関係にある呼吸速度を連続および非破壊で計測するシステムを構築し計測を行った。計測の結果以下のことが明らかになった。1) 本章で試料として使用したカーネーション切り花フランセスコ種はクライマクテリック上昇型の花卉であることが確認された。2) キセノン処