- 著者
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出口 亜由美
立澤 文見
細川 宗孝
土井 元章
大野 翔
- 出版者
- The Japanese Society for Horticultural Science
- 雑誌
- The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.4, pp.340-350, 2016 (Released:2016-10-27)
- 参考文献数
- 36
- 被引用文献数
-
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ダリア(Dahlia variabilis)の黒色花はシアニジン(Cy)系アントシアニンの高蓄積に起因するものであることが先行研究により示唆されていた.そのため,ダリア花弁に蓄積する Cy 系アントシアニンはペラルゴニジン(Pg)系アントシアニンよりも花弁の明度 L* および彩度 C* を下げるはたらきが強く,花弁黒色化への寄与度が高いことが予想されたが,これまでにそれを示した報告はない.本研究では,ダリア花弁に蓄積する 4 種類の主要なアントシアニン,Pg 3,5-ジグルコシド(Pg 3,5diG),Cy 3,5-ジグルコシド(Cy 3,5diG)Pg 3-(6''-マロニルグルコシド)-5-グルコシド(Pg 3MG5G)および Cy 3-(6''-マロニルグルコシド)-5-グルコシド(Cy 3MG5G)を抽出精製し,異なる pH(3.0,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0 あるいは 7.0)あるいは異なる濃度(0.25,0.5,1.0,2.0 あるいは 3.0 mg·mL−1)における溶液の色(CIE L*a*b*C*)を in vitro で評価した.各アントシアニンの色は溶液の pH により変化した.ダリア花弁の pH に近い pH 5.0 およびアントシアニンが比較的安定な構造を保つ pH である pH 3.0 のいずれにおいても,Cy 3,5diG の L* および C* は Pg 3,5diG と同様あるいは高かったことから,Cy 3,5diG は Pg 3,5diG よりも花弁黒色化への寄与度が高いわけではないと考えられた.一方で,Cy 3MG5G の L* および C* は Pg 3MG5G よりも,特に 2.0 mg·mL−1 以上の高濃度において有意に低く,花弁黒色化への寄与度が高いことが示唆された.同様の傾向が Pg 系アントシアニンと Cy 系アントシアニンを様々な割合で混合した色素の測色でもみられた.Pg 3MG5G の L* および C* は他の 3 種のアントシアニンよりも極めて高かったことから,Pg 3MG5G は 4 種のアントシアニンのなかで最も黒色から遠い色を示すことが考えられた.ダリア花弁に蓄積する Pg 系アントシアニンと Cy 系アントシアニンの量比は品種によって様々であったのに対し,いずれの品種においても 3MG5G 型アントシアニンの蓄積量は 3,5diG 型アントシアニンよりも多かった.これらの結果から,ダリア花弁においては 3MG5G 型アントシアニンが主要に蓄積しており,かつ,Cy 3MG5G が Pg 3MG5G よりも花弁 L* および C* を下げるはたらきが強く花弁黒色化への寄与度が高いために,Cy 系アントシアニンの高蓄積が花弁の黒色化に重要であると示唆された.個々のアントシアニンの花弁黒色化への寄与度は各アントシアニンの構造により決まると考えられたため,L* および C* が最も低いアントシアニンを特定し,それを高濃度で花弁に蓄積させることで,様々な花卉品目において黒花品種を作成することが可能になると考えられた.