著者
常盤 俊之 広瀬 大 野中 健一 石崎 孝之 廣岡 裕吏
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.jjom.H30-01, 2018-05-01 (Released:2018-06-09)
参考文献数
14

ボタンタケ科子嚢菌類,Hypomyces tremellicola ならびにSphaerostilbella micropori を本邦より採集分離し,形態的特徴を記載した.この2 種は日本新産種であり,S.micropori は原産地以外からの初報告である.
著者
福田 有希子 廣岡 裕吏 小野 剛 小林 享夫 夏秋 啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.130-138, 2008-09-16
被引用文献数
1

2005年5月,東京都小笠原村父島で施設栽培されていたカカオの果実に,初め茶褐色〜暗褐色の不整病斑を生じ,のちに拡大して腐敗症状を呈する病害が観察された。その罹病部からはLasiodiplodia属菌が高率に分離され,分離菌を用いた接種試験により原病徴が再現され接種菌が再分離された。分離菌は,暗褐色から黒色の分生子殻内に,隔壁の無い側糸と,後に完熟すると2胞,暗褐色で縦縞模様をもつ分生子を形成することから,Lasiodiplodia theobromae (Pat.) Griffon & Maubl.と同定した。さらにrDNA内のITS領域を用いた分子系統解析の結果からも同定を裏付ける結果を得た。小笠原で商業的に栽培されているパッションフルーツ,パパイア,バナナ,マンゴーを用いた宿主範囲の検討では,パパイア,バナナ,マンゴーにおいて病原性が確認された。これまでカカオにおける本病害は日本において報告がないため,Lasiodiplodia果実腐敗病(英名 : Lasiodiplodia pod rot)と命名したい。
著者
廣岡 裕吏 小林 享夫
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.69, 2007

<I>Cosmospora</I>属菌は,<I>Nectria</I>属<I>Dialonectria</I>亜属(Samuels et al. 1991)を1999年にRossmanらが属へ昇格させたHypocrea目,Nectria科の1属である.現在,本属菌のアナモルフは,5属が知られておりアナモルフとテレオモルフの一元化には至っていない.演者らは,日本で未記録の<I>Fusarium</I>アナモルフを持つ<I>Cosmospora</I>属菌2種を確認したので報告する.1. <I>Cosmospora</I> sp. (アナモルフ: <I>Fusarium</I> sp.): 東京都西多摩郡奥多摩町および宮城県宮城郡利府町の枯れ枝より採集,子のう殻は孔口部に短い付属糸を持ち薄いオレンジ色で,子のう胞子は表面に小疣があり,大きさ8-12 × 4-5μmである.アナモルフはSNA(暗黒下)上でポリフィアリディックの分生子形成細胞から鎌形で末端に脚胞があり,1-3隔壁を持つ大きさ22-46 × 2.5-3μmの分生子(大分生子)を豊富に形成した.無隔壁で紡錘形などの特徴を持つ小型の分生子(小分生子)は形成されない.本菌は両世代ともこれまで記録が無く新種と考えられる.2. <I>Cosmospora</I> <I>pseudoflavoviridis</I> (Lowen & Samuels) Rossman & Samuels (アナモルフ: <I>Fusarium</I> sp.): 宮城県宮城郡利府町の落枝より採集,子のう殻は孔口部に付属糸を持ち赤色で,子のう胞子は表面に疣があり,大きさ10-20 × 5-8μmである.アナモルフはSNA(BLB照射下)上でモノフィアリディックの分生子形成細胞から鎌形で末端に脚胞があり,1-5隔壁を持つ大きさ10-57 × 2.5-5μmの大分生子と短い棍棒形から楕円形で大きさ3-20 × 2-4μmの小分生子を豊富に形成した.また,長さ52-135μmの分生子柄を立ち上げた.本菌のアナモルフは,これまで<I>Fusarium</I> cf. <I>melanochlorum</I> Casp. と記録されていたが,極端に長い分生子柄を立ち上げるため新種と考えられる.