著者
引野 亨輔
出版者
福山大学
雑誌
福山大学人間文化学部紀要
巻号頁・発行日
vol.6, pp.63-76, 2006-03-01

これまで神仏習合は、日本古来の伝統である神祇崇拝と、外来宗教である仏教とを混淆させた、不合理な信仰とみなされてきた。しかし、現実社会に存在するところの神仏習合は、合理性の発達に伴い徐々に姿を消していくようなものではない。本稿では、江戸時代の在地社会に焦点を絞る事で、新たな視角から神仏習合が否定されていく過程を探ってみた。
著者
西田 かほる 井上 智勝 岩城 卓二 梅田 千尋 志村 洋 中川 すがね 幡鎌 一弘 東谷 智 山崎 善弘 引野 亨輔 松本 和明
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

夷信仰の拠点である西宮神社(現兵庫県西宮市)が所蔵する江戸時代の日記や神社文書、宮司家文書を翻刻することにより、西宮神社の活動と神社に付属する宗教者の実態を明らかにすることができた。同時に、全国の夷社人関係の史料を調査することにより、その地域分布と差異を明確にすることができた。このほか、西宮神社が所蔵する近代の日誌のデジタル撮影を行うことによって、今後の研究の体制を整えた。
著者
引野 亨輔
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-26, 2016

<p>明治期の日本社会に活版印刷をはじめとする西洋流印刷術が伝播すると、江戸時代以来の伝統的な印刷術は急速に衰退したとされる。しかし、仏教書のように専門性の高い本の場合、江戸時代から続く老舗出版社が、熱心な講読層をがっちり掌握していた。売れる部数だけ出版するという戦略にのっとる限り、老舗出版社が急いで活版印刷を導入し、大量複製や高速印刷の技術を身につける必要はなかった。もっとも、東京の仏教系出版社に注目すると、明治二〇年代にはいち早く西洋流印刷術を導入していく。それは、明治期の啓蒙思想家たちが自ら出版社を創業し、広く一般人にまで仏教教理を説き聞かせようとしたためである。他方、京都の仏教系出版社は、修行中の僧侶に向けて仏教経典の註釈書などを販売する必要があったため、木版印刷や和装製本を根強く使用し続けた。しかし、活版印刷や洋装製本によって大部の著作が縮刷印刷され始めると、その利便性が認められ、明治三〇年代を境として日本の伝統的な印刷術は衰退していった。</p>
著者
引野 亨輔
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-26, 2016 (Released:2017-07-03)

明治期の日本社会に活版印刷をはじめとする西洋流印刷術が伝播すると、江戸時代以来の伝統的な印刷術は急速に衰退したとされる。しかし、仏教書のように専門性の高い本の場合、江戸時代から続く老舗出版社が、熱心な講読層をがっちり掌握していた。売れる部数だけ出版するという戦略にのっとる限り、老舗出版社が急いで活版印刷を導入し、大量複製や高速印刷の技術を身につける必要はなかった。もっとも、東京の仏教系出版社に注目すると、明治二〇年代にはいち早く西洋流印刷術を導入していく。それは、明治期の啓蒙思想家たちが自ら出版社を創業し、広く一般人にまで仏教教理を説き聞かせようとしたためである。他方、京都の仏教系出版社は、修行中の僧侶に向けて仏教経典の註釈書などを販売する必要があったため、木版印刷や和装製本を根強く使用し続けた。しかし、活版印刷や洋装製本によって大部の著作が縮刷印刷され始めると、その利便性が認められ、明治三〇年代を境として日本の伝統的な印刷術は衰退していった。
著者
引野 亨輔
出版者
福山大学
雑誌
福山大学人間文化学部紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.39-56, 2005-03-01

寺院由緒書の内容には、例えば夢のお告げで本尊を掘り出したといった類の怪しげなものが多く、それゆえまともな歴史資料として扱われる傾向は希薄であった。寺院由緒書が虚偽の歴史叙述であることは勿論事実であろう。しかし、それがある時代に信憑性を持って受容されていたこともまた事実である。偽書・偽証がなぜ疑いなく受け入れられるのか。本稿では、瀬戸内海の小島に伝わる法然伝説を事例として検討してみた。