著者
坂本 淳哉 真鍋 義孝 弦本 敏行 本田 祐一郎 片岡 英樹 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0517, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】股関節疾患患者では患部を起源とした関連痛が膝関節前面にみられることが多く,その発生機序の仮説の一つとして二分軸索感覚ニューロンの関与が考えられているが,この点に関する解剖学的な根拠はこれまでに十分に示されていない。一般に,股関節および膝関節前面の知覚は大腿神経ならびに閉鎖神経から分岐する関節枝が支配するとされているが,これらの関節枝の分布状況を同時に検討した報告はこれまでになく,前述したような関連痛の発生機序を明らかにするためには股関節枝と膝関節枝の分布状況を同時に検討する必要がある。そこで,本研究では日本人遺体における大腿神経ならびに閉鎖神経から分岐する股関節枝および膝関節枝の分布状況について検討した。【方法】対象は平成24年度ならびに平成26年度に所属大学の歯学部人体解剖学実習に供された日本人遺体9体9肢(男性5体,女性4体,右側1肢,左側8肢)で,各遺体における大腿神経および閉鎖神経から分岐する股関節枝と膝関節枝を剖出・観察した。なお,観察は所属大学内の定められた解剖学実習室でのみ行い,実習室の管理者の管理・指導のもと,礼意を失わないように実施した。【結果】大腿神経から分岐する股関節枝には①恥骨筋枝から分岐して前内側に達する枝(4肢,44.4%),②腸骨筋枝から分岐して前外側に達する枝(3肢,33.3%)が認められ,閉鎖神経から分岐する股関節枝には①前枝から分岐して股関節前内側に達する枝(3肢,33.3%),②後枝から分岐して股関節前内側に達する枝(2肢,22.2%)が認められた。一方,大腿神経から分岐する膝関節枝には①内転筋管内を下行した後に膝蓋骨内側に達する枝(2肢,22.2%),②内側広筋枝から分岐して膝蓋骨内側に達する枝(5肢,55.6%),③膝関節筋枝から分岐して膝蓋上包に達する枝(6肢,66.7%),④外側広筋枝から分岐して膝蓋骨外側に達する枝(1肢,11.1%)が認められた。また,閉鎖神経から分岐する膝関節枝は前枝から分岐して伏在神経と併走して膝蓋骨下内方に達する枝(1肢,11.1%)が認められた。加えて,各遺体における分布状況を検討したところ,大腿神経の恥骨筋枝から分岐して股関節前内側に達する枝と内側広筋を貫通して膝関節前内側に達する枝を同時にもつ所見が3体で認められた。【結論】以上の結果から,股関節および膝関節の前面は主に大腿神経から分岐する関節枝により支配されることが明らかになった。そして,先行研究を参考にすると,股関節および膝関節の前内側を大腿神経が同時に支配している所見は両関節を支配する二分軸索感覚ニューロンの存在を示す肉眼解剖学的所見とも考えられ,股関節を起源とした膝関節の痛みの発生に関与している可能性が推察される。
著者
西 啓太 鶴崎 俊哉 弦本 敏行 加藤 克知
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0835, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】臨床場面において,腰痛などの骨盤帯領域の機能障害は,腰椎・骨盤・股関節などの複数領域の機能障害が複雑に組み合わさっている場合が多い。そのため,近年では腰椎・骨盤・股関節を複合体としてとらえ,総合的に評価治療を行うことが重要と考えられている。諸家の報告では,Hip-spine syndromeのように股関節と腰椎の機能障害に関連性があるという報告は多いが,仙腸関節と他関節の機能障害の関連性を報告している研究は殆どみられない。そこで今回,腸骨耳状面の年齢推定法を仙腸関節の加齢性変化を示す指標として用い,他関節の加齢性変化との関係を調べた。本研究の目的は,仙腸関節の加齢性変化が股関節などの他関節と関連性があるのかを明らかにすることである。【方法】死亡時年齢が記録されている男性晒骨100体(平均年齢56.5歳:19-83歳)の左右腸骨耳状面(200側)を肉眼で観察し,Buckberryら及びIgarashiらによる年齢推定法に準じて関節面の年齢推定を行った。2法から得られた推定年齢値の平均をその個体における仙腸関節の『関節年齢』とし,実年齢と関節年齢から年齢校正値を算出した。次に,関節年齢と年齢校正値の差を,腸骨耳状面の加齢性変化の程度を表す『Gap』と定義した。他関節の加齢性変化の指標として,同一の骨標本を使用したTsurumoto(2013)らの先行研究から股関節(200側)と膝関節(102側)の関節周囲骨棘指数のデータを引用した。さらに,耳状面形態に個体によって多様性がみられたため,耳状面の『くびれ率』を定義し測定を行った。これは,耳状面の長腕と短腕の関節面の最後方を直線で結び,この直線と耳状面の前下縁と後上縁の最長距離を測定し,後上縁までの距離から前下縁までの距離を除した値のことである。2つの年齢推定法の妥当性を検討するために,実年齢との相関性を調査した。また,くびれ率と年齢,耳状面Gap,股関節骨棘指数との関連を検討した。さらに,耳状面形態が関節の加齢性変化に及ぼす影響を考慮し,くびれ率の大きさが仙腸関節と股関節の加齢性変化の関連性を検討した。統計学的分析はMicrosoft Excel 2010の分析ツールを用いて行った。有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究で用いた骨標本は,長崎大学医学部生の解剖実習のために同意を得て献体されたご遺体から取り出した標本である。本研究では骨標本に直接手を加えず,肉眼観察を行うために使用したため,倫理的な問題はない。【結果】2つの年齢推定法ともに,実年齢との間に高い正の相関がみられた。2法の平均推定年齢も実年齢との高い正の相関を示した。耳状面Gapと股関節骨棘指数との間には中等度の正の相関を示し,膝関節との間には弱い正の相関を示した。くびれ率に関しては,耳状面Gapおよび股関節骨棘指数との間に相関はみられなかった。さらに,くびれ率の分布の90%領域中の個体群において,耳状面Gapと股関節骨棘指数の間にr=0.40の相関を示した。くびれ率の大きさで仙腸関節と股関節の加齢性変化の関連性をみたところ,くびれ率が小さいほど仙腸関節と股関節の加齢性変化の相関が強くなる傾向がみられた。【考察】Vleemingらは骨盤帯の関節安定戦略に異常をきたした場合,仙腸関節に破綻をきたし,退行変性を進行させてしまう可能性があると述べている。本研究で行った腸骨耳状面の加齢性変化の評価より,仙腸関節における安定機構の変化が他の関節に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。本研究結果より,仙腸関節と股関節の加齢性変化の間に相関がみられた。腰痛患者に見られる骨盤帯のアライメント不良や諸筋の活動変化により,関節にストレスが加わり,その加齢性変化が進行する可能性があると考えられる。本研究からは,股関節と仙腸関節のどちらが原因で加齢性変化が生じるのかは知ることが出来ないが,腰椎・骨盤・股関節のアライメント異常などによる安定戦略の変化により,股関節と仙腸関節の両方に加齢性変化が生じる可能性が示唆された。また,仙腸関節面のくびれ率が小さいほど仙腸関節と股関節の加齢性変化の相関が強くなる傾向がみられた。このことより,仙腸関節の形状がHip-spine syndromeのような腰椎・骨盤・股関節領域の複合的な病態の生じやすさに影響を及ぼしている可能性があることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は,骨盤とその周囲の運動器疾患に対する考察を助けるデータとなり,さらに,腰椎・骨盤・股関節領域における運動器疾患の予防を行う上でも有用なデータになると考える。
著者
石田 肇 弦本 敏行 分部 哲秋 増田 隆一 米田 穣 太田 博樹 深瀬 均
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

オホーツク文化人集団は 55 歳以上で亡くなる個体がかなり多い。オホーツク文化集団は、船上の活動などが腰椎の関節症性変化発症に関与した。久米島近世集団は、男女とも腰椎の関節症の頻度が高い。四肢では、オホーツク文化人骨では肘関節、膝関節で高い傾向を示した。沖縄縄文時代人は、目と目の間が平たいという特徴がある。成人男性の平均身長が約 153cm と、南低北高の傾向がみえる。北東アジア人の大腿骨骨体上部の形状が扁平形状であることを示した。四肢骨 Fst は頭蓋や歯の値より 2-3 倍大きい。SNP の解析により、アイヌ人と琉球人は一つのクラスターをなし、アイヌ・琉球同系説を支持した。