著者
西山 憲一 八尾 隆史 恒吉 正澄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1187-1189, 2001-08-25

非腫瘍性のリンパ組織 消化管に形成されるリンパ組織は,粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)と呼ばれる反応性の二次リンパ濾胞である.これは,明るく見える胚中心(germinal center)と,その周囲をとりまくmantle zoneから構成される(Fig. 1a).胚中心には胚中心細胞(centrocyte)や核片貧食マクロファージ(tingible-body macrophage)など,様々な細胞が存在している(Fig. 1b).また,mantle zoneのBリンパ球は,CD5陽性であり,この細胞由来のリンパ腫がマントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)で,しばしばMALTリンパ腫との鑑別が問題となる.mantle cell lymphomaはCD5陽性,cyclin D1陽性(MALTリンパ腫ではいずれも陰性)であることからも鑑別可能である.
著者
久野 千津子 中村 稔 真弓 武仁 林田 一洋 加治 良一 長澤 浩平 仁保 喜之 福田 敏郎 恒吉 正澄 大島 孝一
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.256-264, 1995-04-30
被引用文献数
8 3

症例は20歳,女性. 1993年2月,高熱,関節痛,サーモンピンク様皮疹が出現し,白血球増多,脾腫を認め,成人スチル病と診断された. γ-globulin製剤およびprednisolone(PSL)の投与にて症状は改善した.同年9月より全身倦怠感,微熱が出現し,当科に再入院.成人スチル病の再燃を疑われ, PSL 15mg/day投与にて経過観察していたが, 10月2日,高熱と下肢にサーモンピンク様皮疹が出現. 10月7日にはGOT 3,270IU/<i>l</i>, GPT 1,880IU/<i>l</i>, LDH 5,480IU/<i>l</i>と肝障害が出現し,急速に肝不全状態となったため, methylprednisoloneによるpulse療法,血漿交換を開始した. hemophagocytosisが原因と思われる汎血球減少を合併し, VP-16による化学療法も施行.しかしDICが進行し, 11月2日死亡した.剖検所見では,肝臓は組織学的に肝細胞の広範な壊死を認め, histiocyteの浸潤を認めた.本症例はhemophagocytic syndrome(HS)により成人スチル病や急性ウイルス性肝炎と鑑別困難な症状を呈した興味ある症例と考え報告する.