著者
湯田 厚司 神前 英明 新井 宏幸 清水 猛史
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.398-405, 2020 (Released:2020-12-23)
参考文献数
12

舌下免疫療法では薬剤で維持量が異なり,アレルゲン量が増えれば副反応も多くなり,治療スケジュールに影響しえる。【対象と方法】各薬剤の最初の例から1年以内の治療開始例で,シダトレン®(CT群)207例,シダキュア®(CC群)69例とミティキュア®(MT群)82例の副反応と治療経過を検討した。MT群では翌年治療87例も追加調査した。【結果】CT群では全例が順調に最大維持量で治療した。CC群では1例(1.4%)が局所ピリピリ感で減量したが再増量でき,全例で最大維持量となった。MT群では20例(24.4%)が減量し,浮腫17例が原因を占めた。18例が再増量でき,97.6%が最大維持量にできた。翌年追加調査では減量例が12.6%と半減し,同等の97.7%が最大維持量にできた。副反応率はCT群40.6%,CC群56.5%,MT群62.1%であった。浮腫と咽喉頭不快感はアレルゲン増加で増え,MT群の局所浮腫は41.5%と高率であった。局所そう痒感はCC群とMT群に多く,CC群で耳そう痒感が21.7%と特に多かった。全副反応は重篤でなく,対応不要であった。【結論】アレルゲンが多いと副反応も高率であったが,スギ治療薬では全例で最大維持量にできた。ダニでは主に浮腫の副反応で一時的減量例も多くなったが,数%例を除いて最大維持量にできた。治療経験が増えると減量例も少なくなった。
著者
湯田 厚司 小川 由起子 新井 宏幸 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.126-132, 2019-02-20 (Released:2019-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

本邦でのスギ花粉とダニが原因のアレルギー性鼻炎合併例は多い. スギ花粉とダニを同時に用いた皮下免疫療法は行えるが, 舌下免疫療法の併用治療 (併用 SLIT) に関する知見は十分ではない. 併用 SLIT が行えれば有用であり, 安全性を検討した. 当院で2017年6月以降にスギ花粉 (シダトレン ®) とダニ (ミティキュア ®) で併用 SLIT を行った53例 (男性31例, 女性22例, 年齢12~53歳, 平均21.7±11.6歳, スギ花粉先行39例) を対象とした. 先行と後行 SLIT の間隔は1カ月以上あけ, 朝夕に分けて開始した後に5分間隔でスギ花粉・ダニの順で行った. 併用 SLIT 後6カ月まで受診毎に副反応を確認した. 完遂率は51/53例 (96.2%) で, 脱落2例の理由は副反応によるものではなかった. 副反応はすべて軽度で, 処置不要であった. 併用 SLIT 期の副反応は, 全副反応で増加せず, 口腔咽頭感覚症状で有意に減少した. 投与間隔による副反応は変わらず, 投与順で副反応は変わらなかったが, ダニ後行 SLIT で維持アレルゲンを減量する例が増えた. 併用 SLIT は1~2カ月以内の短期間間隔で安全に行えた.