著者
今井 浩三 中村 卓郎 井上 純一郎 高田 昌彦 山田 泰広 高橋 智 伊川 正人 﨑村 建司 荒木 喜美 八尾 良司 真下 知士 小林 和人 豊國 伸哉 鰐渕 英機 今井田 克己 二口 充 上野 正樹 宮崎 龍彦 神田 浩明 尾藤 晴彦 宮川 剛 高雄 啓三 池田 和隆 虫明 元 清宮 啓之 長田 裕之 旦 慎吾 井本 正哉 川田 学 田原 栄俊 吉田 稔 松浦 正明 牛嶋 大 吉田 進昭
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動 : 前年度立ち上げたホームページ(HP)に改良を加えて公募の円滑化を進めた。モデル動物作製解析の講習や若手研究者の交流促進を推進する技術講習会を開催した。成果ワークショップを開催し本活動の支援成果をアピールした。②モデル動物作製支援活動 : 相同組換えやゲノム編集など支援課題に応じた最適な胚操作技術を用いて、様々な遺伝子改変マウスおよびラットを的確かつ迅速に作製し、学術性の高い個体レベルの研究推進に資する研究リソースとして提供した。件数は昨年度より大幅に増加した。③病理形態解析支援活動 : 昨年より多い35件の病理形態解析支援を7名の班員で実施した。研究の方向性を決定づける多くの成果が得られた。論文の図の作成にもかかわり、論文が受理されるまで支援を行った。その結果、より高いレベルの科学誌にも受理された。④生理機能解析支援活動 : 疾患モデルマウスの行動解析支援を実施するとともに、諸動物モデルでの規制薬物感受性解析、光遺伝学的in vivo細胞操作、意志決定に関与する脳深部機能解析、等の支援を展開した。⑤分子プロファイリング支援活動 : 依頼化合物の分子プロファイリング316件、阻害剤キット配付86枚、RNA干渉キット配付・siRNAデザイン合成83件、バーコードshRNAライブラリーによる化合物の標的経路探索15件、を実施し、より多くの研究者の利便性を図った。
著者
矢守 隆夫 旦 慎吾
出版者
(財)癌研究会
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

がんの増殖・生存に関わるPI3Kは、がん治療の有力な標的と考えられる。我々は、新規PI3K阻害剤ZSTK474を開発し、世界に先駆けPI3K標的がん治療の有効性を証明した。本研究では、PI3K阻害剤の臨床開発に向け以下の知見を得た。1) PI3K遺伝子変異の解析:クラスIPI3Kの触媒サブユニットp110には4種のアイソフォーム(α、β、δ、γ)があり、各々PIK3CA、-B,-Dおよび-G遺伝子によってコードされている。PIK3CA変異のみ注目されているが、他の3種の変異は報告がない。そこで39種類のがん細胞株(JFCR39)でPIK3CB、-D,-G遺伝子の全塩基配列を決定し、ミスセンス変異を初めて同定した(PIK3CBに5箇所、PIK3CDに3箇所、PIK3CGに8箇所)。これらが機能獲得型変異かどうかは興味深い。2) PI3K遺伝子変異を持つがんに対する効果:JFCR39におけるPI3K変異プロフィルとZSTK474に対する感受性に相関があるかどうかを細胞レベルならびに動物レベル(ゼノグラフト)で調べたが、有意な相関は認められなかった。よって、PI3K阻害剤の抗がん効果は、PI3K変異状態には無関係と考えられた。3) PI3Kスーパーファミリー(クラスI、II、III、PI4KおよびPI3K関連キナーゼ)への効果:ZSTK474はクラスIPI3Kへの特異性が高いことが判明した。4) 脳腫瘍への効果:脳腫瘍同所移植モデルにおいてZSTK474は経口投与で有効性を示したことから、脳腫瘍治療への応用が期待された。5) 他の薬剤との併用効果:ヌードマウス移植ヒトゼノグラフトに対しZSTK474は、mTOR阻害剤ラバマイシンとの併用で効果増強を示した。PI3K経路を2箇所で阻害する治療は有望と考えられた。