著者
伊川 正人
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

エネルギー産生などに重要な細胞内小器官であるミトコンドリアには、細胞核と独立したゲノムDNAが含まれる。また、ミトコンドリアDNAに変異があると、様々な病態を引き起こすことが知られている。今回、我々は最新の標的遺伝子組換え技術であるCRISPR/CAS9システムを活用することで、ミトコンドリアDNA (mtDNA) の標的遺伝子組換え技術を開発することを試みた。ES細胞でのミトコンドリア遺伝子破壊を試みたが、残念ながら、標的遺伝子が破壊された細胞株を得ることができなかった。今後は、ES細胞を用いて処理数を増やすと同時に、ミトコンドリア移行効率を上げるなどの、戦略変更の必要があると結論した。
著者
今井 浩三 中村 卓郎 井上 純一郎 高田 昌彦 山田 泰広 高橋 智 伊川 正人 﨑村 建司 荒木 喜美 八尾 良司 真下 知士 小林 和人 豊國 伸哉 鰐渕 英機 今井田 克己 二口 充 上野 正樹 宮崎 龍彦 神田 浩明 尾藤 晴彦 宮川 剛 高雄 啓三 池田 和隆 虫明 元 清宮 啓之 長田 裕之 旦 慎吾 井本 正哉 川田 学 田原 栄俊 吉田 稔 松浦 正明 牛嶋 大 吉田 進昭
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動 : 前年度立ち上げたホームページ(HP)に改良を加えて公募の円滑化を進めた。モデル動物作製解析の講習や若手研究者の交流促進を推進する技術講習会を開催した。成果ワークショップを開催し本活動の支援成果をアピールした。②モデル動物作製支援活動 : 相同組換えやゲノム編集など支援課題に応じた最適な胚操作技術を用いて、様々な遺伝子改変マウスおよびラットを的確かつ迅速に作製し、学術性の高い個体レベルの研究推進に資する研究リソースとして提供した。件数は昨年度より大幅に増加した。③病理形態解析支援活動 : 昨年より多い35件の病理形態解析支援を7名の班員で実施した。研究の方向性を決定づける多くの成果が得られた。論文の図の作成にもかかわり、論文が受理されるまで支援を行った。その結果、より高いレベルの科学誌にも受理された。④生理機能解析支援活動 : 疾患モデルマウスの行動解析支援を実施するとともに、諸動物モデルでの規制薬物感受性解析、光遺伝学的in vivo細胞操作、意志決定に関与する脳深部機能解析、等の支援を展開した。⑤分子プロファイリング支援活動 : 依頼化合物の分子プロファイリング316件、阻害剤キット配付86枚、RNA干渉キット配付・siRNAデザイン合成83件、バーコードshRNAライブラリーによる化合物の標的経路探索15件、を実施し、より多くの研究者の利便性を図った。
著者
淨住 大慈 伊川 正人
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.18-23, 2022 (Released:2022-01-01)
参考文献数
20

「受精」という言葉は今日においても私たちに生命の神秘やロマンを感じさせてくれる.しかしそれは,不妊のような私たちの人生に直結する問題も,科学的にはまだ十分な解明に至っていないということの裏返しかもしれない.本稿では,哺乳類の精子がどのようにして受精の能力を獲得し,何が原因となって不妊となるのか,ゲノム編集技術によって近年各段に進展しつつある個体レベルでの研究をベースに,筆者らによる最新の知見も交えながら解説したい.
著者
眞野 友裕 宮木 杏菜 伊川 正人 中村 肇伸
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.111, pp.AW1-6-AW1-6, 2018

<p>【目的】精子と卵子は,受精後にリプログラミングを経て胚体外組織を含む全ての細胞に分化できる「全能性」と呼ばれる能力を再獲得する。本研究では,全能性獲得の分子基盤を明らかにするために,全能性細胞で特異的に発現する遺伝子の探索を行い,Zbed3(Zinc-finger BED Domain-containing 3)を同定した。本報告では,Zbed3の生体内での機能を明らかにすることを目的として研究を行った。【方法】着床前胚におけるZbed3のmRNAおよびタンパク質の発現はそれぞれqRT-PCRと蛍光免疫染色を用いて検討した。また,Zbed3ノックアウトマウスは,CRISPR/Cas9システムを用いて作製した。【結果】Zbed3の着床前胚における発現を検討した結果,Zbed3は受精卵から4細胞期胚の間で特異的に発現し,卵細胞膜皮質下に限局していた。Zbed3は,培養細胞を用いた研究から,Wnt/β-cateninシグナルを正に制御することが報告されているが,少なくとも初期胚では,Wnt/β-cateninシグナルの制御には関与しないことが示された。一方,Zbed3の特徴的な細胞内局在は,SCMC(subcortical maternal complex)と呼ばれる複合体の構成成分の局在と酷似していた。また,免疫沈降によりZbed3はSCMCの構成成分であるMater相互作用することが示唆された。これらのことから,Zbed3はSCMCの構成成分である可能性が考えられた。次に,生体内での機能を調べるために,Zbed3のノックアウトマウスを作製した。その結果,メスのZbed3ノックアウトマウスから得られた受精卵では胚盤胞期への発生率が著しく低下すること,また多くの受精卵から不均等な割球を持つ2細胞期が得られることが明らかとなった。以上から,Zbed3は初期発生に必須の母性効果遺伝子であり,均等な割球を持つ2細胞期胚への分裂に重要な役割を果たすことが示唆された。</p>
著者
岡部 勝 伊川 正人 山田 秀一 中西 友子 馬場 忠
出版者
THE SOCIETY FOR REPRODUCTION AND DEVELOPMENT
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.j19-j25, 1997 (Released:2010-10-20)
被引用文献数
1 2

オワンクラゲ類のもつ蛍光蛋白質は総称してGreen Fluorescent Proteinと呼ばれている.Aequorea victorea(和名:発光オワンクラゲ)のGFPは分子量27 Kdaの蛋白質で,アミノ酸残基65番目のserinと67番目のglycinのペプチド結合部位が脱水縮合を起こした後に酸化されて発色団を形成し蛍光蛋白質となる.この構造変化は酸素以外に特別な因子を必要とせず,蛍光は細胞を観察するだけでよい.外来遺伝子としてGFP遺伝子を導入すると,蛍光をもつ培養細胞,植物,線虫,ハエ,魚,マウスなどが得られる.現在では人工的に作製された,緑,青,黄色など種々の波長の蛍光を出す多くの変異体があり,今後,実験動物の分野で新しいマーカーとして使用される例が増えるものと予想される.本稿では我々の作製したトランジェニックマウスを中心にGFPの応用例を述べる.