著者
宮川 剛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.157-166, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

研究者の実績評価がどのように行われるかは,研究者個人はもちろん,大学や研究所など研究機関の日々の活動の方向性を左右する重要な要因である。研究ポジションの数に比して研究者人口が過剰であることや,競争的資金の研究予算における比重が増す中,客観的な評価指標の重要性が認識されつつある。近年,諸外国では,研究者個人の論文の総引用数,各年の総引用数,h-indexなどのさまざまな研究実績に関する数値的指標(メトリクス)が考案され,研究者の採用・昇任などの人事や,研究提案審査時に参考資料として活用されている。しかし,わが国においてはこのような取り組みが十分に進んでいるとは言いがたい状況である。本稿では,科学技術研究において客観的評価指標が求められる背景と各種メトリクスの紹介を行う。さらにメトリクスを普及させるための方策,活用上の留意点,その波及効果について,一研究者としての視点から議論し提言を行う。
著者
駒田 致和 高雄 啓三 中西 和男 宮川 剛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.69-76, 2009 (Released:2009-05-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1 4

近年の分子生物学などの飛躍的な発展の一因として,複雑な実験手技についての明確なプロトコルが確立されていることが挙げられる。しかし,テキスト形式のプロトコルでは伝達できる情報量が限られており,実験系の確立に手間や時間がかかることが多い。そこで注目を集めているのがオンラインビデオジャーナルのJoVE(Journal of Visualized Experiments)である。実験プロトコルや実験の結果についてのより多くの情報を,動画を用いて科学コミュニティー全体で共有するというJoVEの取り組みや今後の展開を紹介する。
著者
今井 浩三 中村 卓郎 井上 純一郎 高田 昌彦 山田 泰広 高橋 智 伊川 正人 﨑村 建司 荒木 喜美 八尾 良司 真下 知士 小林 和人 豊國 伸哉 鰐渕 英機 今井田 克己 二口 充 上野 正樹 宮崎 龍彦 神田 浩明 尾藤 晴彦 宮川 剛 高雄 啓三 池田 和隆 虫明 元 清宮 啓之 長田 裕之 旦 慎吾 井本 正哉 川田 学 田原 栄俊 吉田 稔 松浦 正明 牛嶋 大 吉田 進昭
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動 : 前年度立ち上げたホームページ(HP)に改良を加えて公募の円滑化を進めた。モデル動物作製解析の講習や若手研究者の交流促進を推進する技術講習会を開催した。成果ワークショップを開催し本活動の支援成果をアピールした。②モデル動物作製支援活動 : 相同組換えやゲノム編集など支援課題に応じた最適な胚操作技術を用いて、様々な遺伝子改変マウスおよびラットを的確かつ迅速に作製し、学術性の高い個体レベルの研究推進に資する研究リソースとして提供した。件数は昨年度より大幅に増加した。③病理形態解析支援活動 : 昨年より多い35件の病理形態解析支援を7名の班員で実施した。研究の方向性を決定づける多くの成果が得られた。論文の図の作成にもかかわり、論文が受理されるまで支援を行った。その結果、より高いレベルの科学誌にも受理された。④生理機能解析支援活動 : 疾患モデルマウスの行動解析支援を実施するとともに、諸動物モデルでの規制薬物感受性解析、光遺伝学的in vivo細胞操作、意志決定に関与する脳深部機能解析、等の支援を展開した。⑤分子プロファイリング支援活動 : 依頼化合物の分子プロファイリング316件、阻害剤キット配付86枚、RNA干渉キット配付・siRNAデザイン合成83件、バーコードshRNAライブラリーによる化合物の標的経路探索15件、を実施し、より多くの研究者の利便性を図った。
著者
川口 和紀 北口 暢哉 中井 滋 宮川 剛 大橋 篤 堀 秀生
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アルツハイマー病の病因物質の一つとされるアミロイド蛋白(Aβ)を、末梢血中から短時間に急速に除去することで脳内濃度を下げることにより、認知機能を改善する治療システムの構築を目指し、ラットを用いて血中Aβの動態と認知機能に与える影響を検討した。1.麻酔下ラットの大槽内に投与したヒトAβの末梢血中へ移行が確認された。2.ラットを用いた血液浄化の実験系および認知機能評価系が確立された。
著者
萩原 英雄 高雄 啓三 宮川 剛
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.633-640, 2015 (Released:2015-12-15)
参考文献数
8

要約:マウスはヒト疾患のモデル動物として広く使われているが,ヒトで重篤な炎症が起きた時に発現が変化する遺伝子群はマウスでは全く異なるふるまいをしており,この観点からヒトとマウスはほとんど似ていないという報告が2013 年に出された.この報告はマウスをヒト疾患のモデル動物として使うことの有効性や妥当性などについて大きな議論を巻き起こした.しかし筆者らは,この報告で解析されたのと同じ遺伝子発現データを用いて,解析手法の改善を加えて再解析をした結果,マウスはヒトの炎症性疾患のモデルになり得ることを改めて確認することができた.この結論は,炎症性の疾患に限らず,ヒト疾患のモデルとしてマウスを用いて病態・病因の解明や治療法の開発を行う際に,ヒトとマウスの共通している部分に注目して研究を進めることが有効であることを示唆するものと考えられる.
著者
宮川 剛
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.66-96, 2001-01

個人情報保護のため削除部分あり一六世紀後半から一七世紀前半のイギリスでは救貧をめぐる問題が深刻化し、慈善・寄付の現状に大きな関心が寄せられることとなる。本稿では、エリザベス救貧法体制における救貧の単位であり、かつ、富者と貧者が私的な慈善・寄付をつうじて結びつく場でもあった教区に焦点を合わせる。すなわち、ロンドン市内のセント・バーソロミュー・エクスチェンジ教区を主たる対象として取り上げ、一六世紀末から一七世紀前半におけるこの教区の救貧活動を、救貧のための財源、救貧扶助を受けた人々、慈善・寄付の動機など、様々な角度から解明することを目指す。教区を対象とすることにより、救貧法による公的な救貧と、私的慈善による貧者への援助とが救貧の現場においていかに機能していたかを、実態に即して考察することができるのである。