著者
池田 和隆 小林 徹 曽良 一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.124-130, 2002-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

アルコールが脳に与える影響は, 酔いをはじめとして様々あり興味ぶかくかつ重要である。ここではアルコールの鎮痛作用とイオンチャネルの一つであるGIRKチャネルとの関係を中心に紹介していただいた。また, アルコールは, 人の情動などを脳機能として調べる上でも重要な糸口を与えてくれる物質であるようだ。
著者
今井 浩三 中村 卓郎 井上 純一郎 高田 昌彦 山田 泰広 高橋 智 伊川 正人 﨑村 建司 荒木 喜美 八尾 良司 真下 知士 小林 和人 豊國 伸哉 鰐渕 英機 今井田 克己 二口 充 上野 正樹 宮崎 龍彦 神田 浩明 尾藤 晴彦 宮川 剛 高雄 啓三 池田 和隆 虫明 元 清宮 啓之 長田 裕之 旦 慎吾 井本 正哉 川田 学 田原 栄俊 吉田 稔 松浦 正明 牛嶋 大 吉田 進昭
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動 : 前年度立ち上げたホームページ(HP)に改良を加えて公募の円滑化を進めた。モデル動物作製解析の講習や若手研究者の交流促進を推進する技術講習会を開催した。成果ワークショップを開催し本活動の支援成果をアピールした。②モデル動物作製支援活動 : 相同組換えやゲノム編集など支援課題に応じた最適な胚操作技術を用いて、様々な遺伝子改変マウスおよびラットを的確かつ迅速に作製し、学術性の高い個体レベルの研究推進に資する研究リソースとして提供した。件数は昨年度より大幅に増加した。③病理形態解析支援活動 : 昨年より多い35件の病理形態解析支援を7名の班員で実施した。研究の方向性を決定づける多くの成果が得られた。論文の図の作成にもかかわり、論文が受理されるまで支援を行った。その結果、より高いレベルの科学誌にも受理された。④生理機能解析支援活動 : 疾患モデルマウスの行動解析支援を実施するとともに、諸動物モデルでの規制薬物感受性解析、光遺伝学的in vivo細胞操作、意志決定に関与する脳深部機能解析、等の支援を展開した。⑤分子プロファイリング支援活動 : 依頼化合物の分子プロファイリング316件、阻害剤キット配付86枚、RNA干渉キット配付・siRNAデザイン合成83件、バーコードshRNAライブラリーによる化合物の標的経路探索15件、を実施し、より多くの研究者の利便性を図った。
著者
菅谷 渚 池田 和隆
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.263-268, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
21

G蛋白質活性型内向き整流性カリウムチャネル(GIRKチャネル)は様々な依存性物質のシグナ ル伝達を担う。哺乳類においてGIRKチャネルには4つのサブユニットがあり,GIRK1 ~ 3サブユニットは主に中枢神経系に広く分布し,GIRK4サブユニットは主に心臓に存在している。著者らは,(1)GIRK2サブユニットの遺伝子配列の差異がオピオイド感受性に影響していること,(2)フルオキセチン,パロキセチン,イフェンプロジルはGIRKチャネルを阻害し,メタンフェタミン嗜好性を減弱させるが,フルボキサミンはGIRKチャネルを阻害せずメタンフェタミン嗜好性も減弱させないこと,(3)カルテ調査においてGIRKチャネル阻害能を持つ薬物に依存治療効果が期待できることを見出した。これらの研究成果から,GIRKチャネルは報酬系において鍵となる分子の1 つと考えられ,依存症治療の標的分子としても期待される。
著者
曽良 一郎 猪狩 もえ 山本 秀子 池田 和隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.6, pp.450-454, 2007 (Released:2007-12-14)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

モノアミントランスポーターはコカイン,メチルフェニデート,メタンフェタミン(MAP)などの覚せい剤の標的分子であることから,覚せい剤依存の病態における役割を明らかにするための詳細な精神薬理学的研究が行われてきた.モノアミントランスポーターには,各モノアミンの前シナプス終末に主に発現する細胞膜モノアミントランスポーターと,すべてのモノアミンを基質とするシナプス小胞モノアミントランスポーター(VMAT)の2種類がある.覚せい剤は,モノアミン輸送を阻害し,神経細胞内外の分画モノアミン濃度を変化させ薬理効果を示す.コカインは細胞膜モノアミントランスポーター阻害作用を有し,その報酬効果はドパミントランスポーター(DAT)を介しているとする「DAT仮説」が提唱された.しかし,DATとセロトニントランスポーター(SERT)が共に関与していることが示された.ただし,SERTよりもDATがより大きな役割を果たしていると考えられる.「DAT仮説」は当初提唱された以上に複雑であると思われる.また,メチルフェニデートを健常人に投与すると投与が興奮や過活動を引き起こすが,注意欠陥多動性障害(ADHD)患者へは鎮静作用がある.DAT欠損マウスはメチルフェニデートを投与されると移所運動量が低下することから,ADHDの動物モデルの一つと考えられる.MAPはコカインとは異なる薬理作用を有する.コカインがDATを阻害し,細胞外ドパミン(DA)を増加させるのに対して,MAPはDATに作用して交換拡散によりDAを細胞外へ放出させることで細胞外DA濃度を増加させる.さらに,MAPはVMATに作用して小胞内のDAを細胞質へ放出させる.MAPの反復使用は,逆耐性現象(行動感作)や認知機能に障害を引き起こすことから,覚せい剤精神病や統合失調症などの動物モデルの一つと考えられている.依存性薬物のモノアミントランスポーターへの複雑な作用機序を明らかにすることにより,薬物依存の病態の新たな知見が得られてくると期待される.
著者
水口 雅 池田 和隆
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

結節性硬化症はmTOR系の過剰な活性化を主な病態とする遺伝性疾患で、自閉症を高率に合併する。mTOR阻害薬を用いた自閉症の薬物治療を開発する目標に向けた橋渡し研究として、結節性硬化症モデルマウスを用いた薬物治療の実験を行なった。モデルマウスの思春期個体にmTOR阻害薬ラパマイシンを投与したところ、成獣と同等に自閉症様症状(社会的相互作用の低下)が改善した。しかし発達期にラパマイシンを長期投与すると全身状態の悪化、臓器の萎縮など副作用が顕著であり、今後、投与の時期と量を最適化する必要がある。
著者
水口 雅 池田 和隆
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

自閉症の中核症状である社会的相互交流障害の改善に有効な薬物療法を開発することは重要である。結節性硬化症はTSC1ないしTSC2遺伝子のハプロ不全に起因し、自閉症をしばしば合併する。本研究は、結節性硬化症モデル動物Tsc1^<+/->およびTsc2^<+/->マウスの自閉症様行動異常、mTOR阻害薬ラパマイシンの投与によるその改善、mTOR系遺伝子の脳内発現異常のラパマイシン治療による正常化を見いだした。これらはマウスの自閉症様行動におけるmTOR信号伝達の重要性を示すとともに、ヒト自閉症の薬物治療におけるmTOR阻害薬の有用性を示唆する。
著者
古田島(村上) 浩子 佐藤 敦志 池田 和隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.4, pp.193-200, 2015 (Released:2015-04-10)
参考文献数
77

自閉症スペクトラム障害(以下,自閉症)は,対人相互関係やコミュニケーションの障害を主な特徴とする発達障害である.自閉症の病態解明や治療薬開発のために,現在まで様々な自閉症モデル動物が作製され,解析されてきた.本稿では自閉症の発症に関わる分子の中でも特にmammalian/mechanistic target of rapamycin(mTOR)シグナル系の分子を中心に紹介しながらこれまでの主な自閉症モデル動物を示し,さらに薬物投与によって改善が見られた自閉症モデル動物の研究をあげ,今後のヒトへの応用と治療薬開発に向けた考察を行う.
著者
井手 聡一郎 南 雅文 佐藤 公道 曽良 一郎 池田 和隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.11-15, 2005 (Released:2005-03-01)
参考文献数
43

近年,疼痛緩和ケアが重視される中で,情動が病態や治療に与える影響が注目されている.オピオイド神経系は,情動の中でも快と痛みに深く関係しており,その作動薬であるモルヒネなど麻薬性鎮痛薬は有用な鎮痛効果をもたらす.また,痛みを感じている状況下では依存が形成されないことなどから,オピオイドの快と鎮痛作用が分離出来る可能性が示唆されている.近年,ノックアウトマウスを用いた実験などでは,麻薬性鎮痛薬の主たる作用部位であるµオピオイド受容体が,モルヒネを始めとした多くの麻薬性鎮痛薬の鎮痛効果,報酬効果において中心的な役割を果たすことが示されてきた.しかし,オピオイド鎮痛薬の一つであるブプレノルフィンでは,µオピオイド受容体が欠損すると,鎮痛効果は完全に消失するが,報酬効果は残存することが明らかになった.オピオイドによる快と鎮痛発生機構はやはり一部異なると考えられる.また,アルコールや覚醒剤の報酬効果と鎮痛効果においてもメカニズムの違いが明らかになりつつある.快と痛みの詳細なメカニズムの解明は,Quality of Life(QOL)の向上をもたらすと考えられ,今後さらなる研究が期待される.
著者
曽良 一郎 池田 和隆 三品 裕司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.47-54, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
17

オピオイド系の分子メカニズムの研究は,遺伝子ノックアウト動物モデルを利用することにより,作動薬,拮抗薬などを用いるだけでは為し得ない解析が可能となった.遺伝子ノックアウトマウス作製は,分子遺伝学,細胞培養,発生工学の実験手技の集大成であり,長期にわたる労働集約的な実験作業を要するプロジェクトである.ターゲティングベクター作製のためのゲノムDNAの入手から始まり,ES細胞への遺伝子導入,キメラマウス作製の後に,はじめてノックアウトマウスを得ることができる.また,表現型を行動学的,解剖学的,生化学的に解析する際に,ノックアウトマウスであるが故の留意点もある.本稿では,新規のみならず既知のノックアウトマウスの解析を予定されている研究者も対象に,概略的知識および成功を左右するいくつかのコツを,筆者らの経験をもとに紹介する.