著者
早川 宗志
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.58-61, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
早川 宗志 藤井 俊夫
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.61-63, 2022 (Released:2022-07-26)
参考文献数
18

一年生水田雑草のアメリカキカシグサの国内初帰化年は1997年と勝山(1999)により報告された。しかし,1999年以降に発行された国内の主要な植物図鑑等においては,1993年が国内初帰化年と記載されている。これらのことから,著者らが改めて文献・標本調査を行った。その結果,植物図鑑等の1993年という記載は,本来は1997年とすべきところを過り・孫引きされたものと考えられた。今回の調査で確認できた60点以上のアメリカキカシグサ標本の中から,1997年よりも早い1986年に,千葉県で採集されたアメリカキカシグサ標本を確認した。また,徳島県および鹿児島県で採集された本種の標本が確認され,それらは四国ならびに九州への新帰化を示す標本である。
著者
早川 宗志 下野 嘉子 赤坂 舞子 黒川 俊二 西田 智子 池田 浩明 若松 徹
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.124-131, 2014

国内生物の地域区分に関して,これまでにいくつかの植生地域区分等が示されている(環境省・国土交通省 2008)。例えば,日本植物区系(前川 1974),林業種苗法種苗配布区域(http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/pdf/k0000559.pdf),生物多様性保全のための国土区分(環境庁 1997; 環境省 2001),植生帯エリア(国土技術政策総合研究所 2002)がある。このような植生,地質,地史,気候などに基づく地域区分の他に,管理単位(Management Unit; MU)や進化的重要単位(Evolutionary Significant Unit; ESU)といった系譜関係に基づいた地域区分の提唱がなされている(Moritz 1994)。管理単位とは,集団が他集団と移住による交流をほとんどもたず他と遺伝的に明瞭に識別可能であるもの,進化的重要単位とは,オルガネラDNAにおいて単系統であり,核DNAの対立遺伝子頻度も著しく異なるグループ(Moritz 1994)として提言され,進化の歴史において同種の別集団から長期の隔離状態にあるものをいう(Avise 2000)。遺伝子系列の分布パターンは過去の分散や移入の歴史を反映しているため,現在の地理的分布がどのような歴史的過程により生じたのかを系統関係から解明することが可能である(三中 1997; Avise 2000)。日本在来植物を用いた解析では,木本植物(Tomaruら 1997; Fujiら 2002; Ohiら 2002; Okaura・Harada 2002; Aokiら 2004; Sugaharaら 2011),高山植物(Fujiiら 1997,1999; Fujii・Senni 2006; 藤井 2008),琉球列島に分布する植物(Kyoda・Setoguchi 2010; 瀬戸口 2012)などにおける先行研究がある。このような植物の種内系統の分析結果をもとに,小林・倉本(2006)は進化的重要単位(ESU)の考え方に基づいて日本国内における在来木本植物を18区域へ試作的に区分し,その移動許容範囲として100-200kmを推奨している。さらに,10種の広葉樹に関して種苗の移動に関する遺伝的ガイドラインも示されている(森林総合研究所 2011)。それに対して,広域分布する草本性パイオニア植物の研究事例はイタドリ(Inamuraら 2000,稲村 2001)やヨモギ(Shimonoら 2013a)などの報告があるのみで少ないのが現状である。そのため,木本植物とは生態的特性が大きく異なるススキなどの草本性パイオニア植物における移動許容範囲は未提示であり,系統地理学的研究が必要である。日本全国に分布するススキは,開花時期に関して北方系統が早く,南方系統が遅いという緯度に沿った勾配があるため,生態的に異なる地域系統が存在することが指摘されている(山田 2009)。その一方,日本産ススキの生育地を網羅するような遺伝的解析による系統識別は,著者らが研究を始めた2008年の段階では行われていなかった。そこで,ススキの産業利用時に問題となりうる導入系統と在来地域系統間の遺伝的かく乱リスクを回避するための移動許容範囲の策定を目的として,著者らはススキの日本国内における系統地理学的研究を行ってきた。これまでに得られた著者らの結果を中心に,本論文では広域分布の草本植物ススキがどのような地理的遺伝構造を持つのか,ならびに地域を超えて導入する場合の問題点と地域系統の保全について考察していきたい。
著者
徳岡 良則 早川 宗志 木村 健一郎 高嶋 賢二 藤田 儲三 橋越 清一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

足摺宇和海国立公園内の愛媛県愛南町鹿島にはアオギリの樹林が約6 haあり、貴重な群落としてその重要性が指摘されてきた。アオギリは豊後水道沿岸域に点在するが、遷移系列上の位置づけや過去の資源利用に関する知見は限られている。対象地域におけるアオギリの分布を調査した結果、本種は撹乱地に早期に分布を拡大する先駆樹種的性質が示された。地域住民の証言では第二次大戦前後には主にアオギリの繊維から綱を作り農具や漁具等の材料とし、一部の個体は山地斜面、耕地境界、人家裏に植栽されていた。アオギリにはジョウドノキ、ジョウドギ、アオギ、カタナギ(愛媛県佐田岬)、ヘラ(愛媛県由良半島、大分県津久見)、イサキ(高知県大月町、大分県蒲江、宮崎県北浦)の地域呼称があった。漁村でのアオギリの採取・利用法や個体管理に関する証言、豊後水道を挟んだ大分県と愛媛県や高知県に共通したアオギリの地域呼称が存在することは、沿岸集落に現存するアオギリの一部は、海路を通じた植物利用文化の伝播に由来する可能性を示唆している。資源利用の役割を失ったアオギリは、現在点在する成木を種子源として、周囲の陽地へ今後も定着していくと予想される。
著者
早川 宗志 楠本 良延 西田 智子 前津 栄信
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.147-157, 2015

日本では沖縄県石垣島にのみ分布する絶滅危惧IA類テングノハナIlligera luzonensis (C.Presl) Merr.の開花調査,標本調査,系統解析を行った.石垣島産テングノハナは午前中にのみ開花した.石垣島産テングノハナの花期は既報の夏開花(7-8月)ではなく,春(3-5月)と秋(10-12月)の2回開花であったため,夏開花の台湾産テングノハナとは異なった.さらに,石垣島産テングノハナはフィリピン産と葉緑体DNAの塩基配列が異なった.以上より,石垣島産テングノハナは,台湾産と花期が異なり,フィリピン産と系統的に異なることから,固有の系統群である可能性が示唆された.