著者
杉浦 直樹 辻 孝子 藤井 潔 加藤 恭宏 坂 紀邦 遠山 孝通 早野 由里子 井澤 敏彦
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.143-148, 2004 (Released:2004-09-18)
参考文献数
9
被引用文献数
24 28

水稲新品種育成のために開発されたイネ縞葉枯病および穂いもち抵抗性マーカーを利用した連続戻し交雑法により,両抵抗性を付与したコシヒカリ準同質遺伝子系統の作出を行い,連続戻し交雑育種におけるDNAマーカーの有効性の検証を試みた.従来から用いられている両抵抗性の生物検定に替えてDNAマーカーを用いることにより,外的要因の影響を受けることなく,精度の高い抵抗性個体の選抜が可能となり,効率的な連続戻し交配を進めることができた.また,共優性マーカーを用いることにより,抵抗性ホモ個体を確実に選抜でき,有望系統の早期固定につながった.作出した準同質遺伝子系統「コシヒカリ愛知SBL」はイネ縞葉枯病および穂いもちに対する抵抗性を有し,かつ,他の諸形質はコシヒカリと同等であった.DNAマーカーを取り入れた育種法により,育種年限の短縮・効率化,並びに確実な抵抗性の導入が両立でき,マーカー選抜育種の有効性を実証できた.
著者
藤井 潔 早野 由里子 杉浦 直樹 林 長生 坂 紀邦 遠山 孝通 井澤 敏彦 朱宮 昭男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.203-210, 1999-12-01 (Released:2012-01-20)
参考文献数
34
被引用文献数
10 17

イネ縞葉枯ウイルス (RSV) 抵抗性の日本型水稲品種「月の光」および同じくRSV抵抗性をもつその姉妹品種「朝の光」が有する穂いもち抵抗性の遺伝子を同定するため, これら品種と感受性品種との交雑F1, F3およびF4を用いて穂いもち抵抗性に関する遺伝子分析を行った.「月の光」と感受性の「あ系他494」とのF1における穂いもち罹病籾率の逆正弦変換値は, 「月の光」のそれと有意差がなく, 穂いもち抵抗性が優性形質であることが明らかになった. 一方, 「朝の光」と感受性品種の「コシヒカリ」とのF3119系統は, 朝の光型固定系統, 分離型系統およびコシヒカリ型固定系統の明瞭な3群に分類され, その比は1遺伝子分離の期待比1: 2: 1に適合した.また, 「月の光」と感受性品種の「黄金晴」とのF460系統は, 月の光型固定系統, 分離型系統および黄金晴型固定系統に分類され, その比は1遺伝子分離の期待比3: 2: 3に適合した. これらの結果と, 「月の光」と「朝の光」の育成歴から, これら2品種の穂いもち抵抗性は同一の優性主働遺伝子に支配されていると考えられた. この穂いもち抵抗性遺伝子は, その作用力からみて新規の遺伝子とみなせることから, Pb1と命名した. Pb1とRSV抵抗性遺伝子Stvbiとの連鎖分析を, 両抵抗性を欠くコシヒカリと両抵抗性を持つ朝の光とのF3119系統を用いて行ったところ, 両抵抗性遺伝子は組換価5.2±1.5%で連鎖していることが明らかとなった. また, 月の光/黄金晴のF460系統, 葵の風の育成過程で得られたRSV抵抗性と感受性の姉妹系統6種を用いた分析でも, 両抵抗性遺伝子間の連鎖が確認された.
著者
斎藤 彰 矢野 昌裕 岸本 直己 中川原 捷洋 吉村 淳 斎藤 浩二 久原 哲 鵜飼 保雄 河瀬 真琴 長峰 司 吉村 智美 出田 収 大沢 良 早野 由里子 岩田 伸夫 杉浦 巳代治
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.665-670, 1991-12-01
被引用文献数
23 92

Restriction Fragment Length Polymorphism(RFLP)法を用いて,主にインド型イネ,Kasalathと日本型イネ,遺伝子標識系統FL134の間でRFLPを示すDNA断片を検索し両品種を親とするF_2集団144個体の分離調査から,遺伝子連鎖地図を作成した.この地図の全長は1,836cMであり,従来の形態,生理-生化学的遺伝子地図(木下1990)及びこれまでに発表されているRFLP地図(McCOUCH et al1988)よりそれぞれ58.5%および32.2%長い.従って,これらのRFLP・DNAマーカーを用いてすでにマップされている遺伝子や末だマップされていない遺伝子を今後効率的に,正確にマップできると推定された.