著者
松岡 佑典 林 宇一 有賀 一広 白澤 紘明 當山 啓介 守口 海
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.416-423, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究では,まず都道府県が管理する民有林の森林GISと林野庁が管理する国有林の森林GISを取得し,地域森林計画を基に施業条件を設定,傾斜や起伏量といった地形量から作業システムを設定した。次に,GISを用いて収穫コストの算出,スギ・ヒノキ・マツ・カラマツの木材売上,山元立木価格,造林費を用いて収支を算出した。最後に,FITで未利用木質バイオマス発電設備に認定され,2020年6月時点で稼働している日本全国の発電所を対象に,経済的に利益が得られる小班からの供給ポテンシャルを利用可能量として推計した。その結果,供給ポテンシャルは用材65,490,336 m3/年,未利用材13,098,067 m3/年と推計された。利用可能量は用材31,080,672 m3/年,未利用材6,216,134 m3/年と推計され,供給ポテンシャルの47.5%との結果を得た。また,未利用材利用可能量と需要量を比較した結果,需要量に対する利用可能量の割合は71.6%であった。ただし,再造林を担保するために造林補助率を100%として推計したところ,全国での需要量を満たす未利用材供給が可能になると推計された。
著者
松木 愛子 村上 毅 田坂 聡明 有賀 一広 松英 恵吾
出版者
宇都宮大学農学部
雑誌
宇都宮大学農学部演習林報告 (ISSN:02868733)
巻号頁・発行日
no.52, pp.25-30, 2016-05

作業道新設のための踏査や林分構成の把握のため,森林内微地形や樹木位置などの簡易な測定が必要とされている。本論文では,市販のレーザ距離計(Leica DISTO A6)とArduino制御の1軸,2軸回転テーブルを使用した簡易な3D測定装置を製作し,林分内の微地形,樹木位置などをポイントクラウドデータとして簡易に測定する手法を検討する。作業道通過予定点周囲の地形測定実験を実施した結果,1軸回転テーブルを用いた装置では,ポール横断測量の距離分解能10cmを上回る詳細な測定ができることが明らかにされた。さらに,2軸回転テーブルを用いた携帯型の3D測定システムを作成し,林分内の2点においてポイントクラウドデータの作成を行った後,これらの3次元点群データにマージし,樹木位置および枝下高の自動推定のためのアルゴリズムの検討を行った。この結果,今回開発した3D測定システムでは,樹木位置の推定は可能であるが,胸高直径推定を行うためには点密度が低く,また合成時の誤差が大きいため明確な推定は困難であることが明らかにされた。
著者
有賀 一広 金築 佳奈江 金藏 法義 宮沢 宏 小出 勉 松本 義広
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

栃木県佐野市のセメント工場では, 2009 年4 月から燃料の65%(年間10 万トン)を木質バイオマスで賄う発電施設が本格稼動した。この施設ではこれまではRPS制度を利用してきたが、現在、FITへの申請を行っている。また、栃木県那須塩原市、那珂川町の製材所では、現在、木質バイオマス発電施設の整備が計画されている。今年度、那須塩原市に265kWが、来年度、那珂川町に2,000kWの発電施設が整備される予定である。一方、先の東日本大震災では、栃木県北部に位置する那須野ヶ原地域でも甚大な被害を受け、また、その後の放射能汚染による影響は大変深刻な状況である。森林の除染については、落葉等の堆積有機物、枝葉の除去や間伐など伐採による樹木の除去などが検討されているが、これらの除去物質を木質バイオマスとしてエネルギー利用することで、地域のエネルギー源確保に繋がる。現在、宮沢建設株式会社、那須野ヶ原土地改良区連合、小出チップ工業有限会社、松本興業株式会社、宇都宮大学からなる事業組合によって除染装置を備えた木質バイオマスガス化発電小型プラントの開発が実施されている。本発表ではその概要について報告する。
著者
執印 康裕 松英 恵吾 有賀 一広 田坂 聡明 堀田 紀文
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.27-32, 2010-08-31
被引用文献数
1

宇都宮大学船生演習林内の約310 haのヒノキ人工林を対象に林齢分布の経年変化が表層崩壊発生に与える影響について,分布型表層崩壊モデルに確率雨量を入力因子として与え検討した。同地は1998年8月末豪雨によって,20年生の林分を中心に表層崩壊が多発しているが,この豪雨の確率雨量評価を行った結果,継続時間72時間雨量で確率年約170年の降雨であることが確認された。次に2年確率72時間雨量を用いて1939年から2008年までの林齢構成の経年変化が表層崩壊発生に与える影響について,分布型表層崩壊モデルから出力される潜在表層崩壊発生面積を指標として検討した結果,指標値の範囲は約0.8 haから4.9 haの範囲にあり,降雨条件が同じ場合に1970年から1980年にかけて表層崩壊発生の可能性が高い状態にあると評価された。さらに1979年から2008年までの年最大72時間降水量をモデルに入力して検討した結果,1998年時点で表層崩壊発生の可能性が最も高いことが示された。