著者
林 宇一 永田 信
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.1-13, 2016 (Released:2017-04-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

日本林業は、森林組合等の法人林業事業体の労働者と林家及び非法人林業事業体の労働者により担われている。国勢調査の「従業上の地位」分類では、それぞれ役員を含む【雇用者】とそれ以外の非【雇用者】に対応すると考えられる。それらについて、産業分類上の「林業」就業者と職業分類上の「林業作業者」の動向を1980年から2010年について明らかにすることを目的とした。非【雇用者】・「林業」就業者では、「農林漁業作業者」が95%以上で、【雇用者】・「林業」就業者では「林業作業者」が60~65%、「事務従事者」が20%強であった。いずれでも「林業作業者」が増加傾向にあった。「林業作業者」 の産業構成を見ると、「協同組合」の定義変更の影響は【雇用者】において顕著で、非【雇用者】においてはそもそも「協同組合」就業者はいなかった。また「従業上の地位」を踏まえて林業労働者総数の推計を行なったところ、2010年については7万4千人となった。
著者
松岡 佑典 林 宇一 有賀 一広 白澤 紘明 當山 啓介 守口 海
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.416-423, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
34
被引用文献数
2

本研究では,まず都道府県が管理する民有林の森林GISと林野庁が管理する国有林の森林GISを取得し,地域森林計画を基に施業条件を設定,傾斜や起伏量といった地形量から作業システムを設定した。次に,GISを用いて収穫コストの算出,スギ・ヒノキ・マツ・カラマツの木材売上,山元立木価格,造林費を用いて収支を算出した。最後に,FITで未利用木質バイオマス発電設備に認定され,2020年6月時点で稼働している日本全国の発電所を対象に,経済的に利益が得られる小班からの供給ポテンシャルを利用可能量として推計した。その結果,供給ポテンシャルは用材65,490,336 m3/年,未利用材13,098,067 m3/年と推計された。利用可能量は用材31,080,672 m3/年,未利用材6,216,134 m3/年と推計され,供給ポテンシャルの47.5%との結果を得た。また,未利用材利用可能量と需要量を比較した結果,需要量に対する利用可能量の割合は71.6%であった。ただし,再造林を担保するために造林補助率を100%として推計したところ,全国での需要量を満たす未利用材供給が可能になると推計された。
著者
中善寺 涼 林 宇一
出版者
宇都宮大学農学部
巻号頁・発行日
pp.43-53, 2017 (Released:2019-06-21)

厚生労働省によると、死亡数は今後増加し、2039年に推計で約166万人とピークを迎える。今後死亡数増加に伴って葬儀件数の増加が見込まれ、葬儀では棺などで木材が利用されており、葬儀を通じた木材需要の拡大が期待される。一方で、葬儀における過去や現在の木材利用状況について扱った研究は、山田(2007)などで部分的に記述されているに限られる。そこで本研究では、葬儀における木材利用の中で、ほぼ必須とされる棺と、葬儀だけでなく追善供養にも用いられる卒塔婆について原料の変遷を明らかにすることを目的とする。棺の原料は当初、国産のモミを使用していたが、やがて南洋材などの外材利用が進み、また棺自体も1990年前半以降は中国で主に生産されるようになった。卒塔婆は、全国生産量の60~70%が東京都の多摩地域西部にあるa町周辺で作られており、原料はモミを使用し、当初は地元産を使用していたが、資源の枯渇に伴い周辺県から調達を開始し、現在は国産の他、欧州、中国などから輸入している。
著者
林 宇一 永田 信
出版者
林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.2-17, 2012-01

国勢調査の産業分類では、森林組合の多くが「林業」ではなく、「協同組合(他に分類されないもの)」に分類されていると考えられる。そうであれば、「林業」就業者のみを捉えたのでは産業としての林業の雇用力を過小評価することになる。本研究では、国勢調査における産業分類と職業分類において林業がどのように扱われてきたか、定義上の変遷と数値上の変遷を整理することにより明らかにし、併せて産業としての林業を担う就業者総数を推計した。推計にあたっては、「林業」以外に分類される事業所における林業部門の「林業作業者」と非「林業作業者」の構成比が、「林業」における構成比と同一であると仮定し、「林業」以外に分類される事業所における「林業作業者」数を基に、それら事業所における林業部門の就業者数を推計した。結果、林業労働者総数は2005年現在で71,906人と推計され、全就業者数の0.12%に該当する。
著者
本田 裕子 林 宇一
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.74-100, 2009-09-20 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
5 2

To evaluate people's opinions concerning the release of the Japanese Crested Ibis Nipponia nippon, a questionnaire was mailed throughout Sado City, Niigata Prefecture, Japan. The 1,000 target individuals were selected randomly from within the 20 to 79 year age group. Results from the 591 respondents indicated almost 74% to have appreciated the release, and only 26% have neither agreed nor disagreed. The most common reason people gave for their appreciation was “they have lived here”, though only 16% of the people had actually seen the Japanese Crested Ibis in the wild. Their concerns related to the release were related mainly toward the success of the release rather than to any harm the birds might cause to crops. Especially, they worried about the released Japanese Crested Ibis survival. These results may be affected by the media like TV. Many people treated Japanese Crested Ibis as a local symbol, or a symbol of nature, and only a few viewed the bird as a potentially commercial venurte. Similar results were obtained from a questionnaire on the Oriental Storks Ciconia boyciana in Toyooka City. The releases in the past have been done far from the villages. This Japanese Crested Ibis release is the second case done near the villages, just after the release of the Oriental Storks. The sequential research will be done to compare the two questionnaires relating to the Oriental Stork and the Japanese Crested Ibis.
著者
林 宇一
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
演習林 (ISSN:04934326)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-39, 2011-03

林業労働において,一般求職者の応募が増加傾向にあり,森林組合作業班員の雇用は一般労働市場における位置づけという側面から捉えていく必要がある。そこで,本報告では,兵庫県但馬地域内の7森林組合作業班員を対象に,現在の就労状態及び彼らが林業を職業としてどのように捉えているのかを明らかにすることを目的とした。具体的には,回答者の属性,回答者への森林組合の待遇,そして,回答者の森林組合の仕事に対する認識の3つの視点から把握した。結果,回答者は殆どが既婚者で家族と同居しており,新卒は少なく,殆どが1回以上の職業経験を経た転職者で,家族とのつながりが強く,地元就職志向が非常に強い事が示唆された。また,林業の自然を相手に出来る点が求職者を引き付け,危険な部分が求職者から敬遠される点であることがわかった。また,賃金の高低が林業の就職理由と離職理由の上位に位置しており,他の職業選択と同様,林業の職業選択や就労継続,仕事上の関心事として賃金が大きな影響を与えていることが示唆された。
著者
本田 裕子 林 宇一 玖須 博一 前田 剛 佐々木 真二郎
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.41-64, 2010-03-25

ツシマヤマネコは,長崎県対馬市にのみ生息し,野生復帰の将来的な実施が検討されている。ツシマヤマネコ及び野生復帰計画を含めツシマヤマネコの保護を住民がどのように捉えているのか,本研究ではその住民意識を探る。本研究は検討段階を対象としており,野生復帰直前・直後を対象としていた先行研究に対して新規性がある。方法は,長崎県対馬市全域住民のうちの20歳以上79歳以下の男女1000人を対象とし,住民基本台帳使用による無作為抽出郵送方式を採用,回収率は48.8%であった。住民によるツシマヤマネコの捉え方は,「対馬にだけ生息する生き物」「対馬を象徴するもの」として,その固有性が評価された。検討されている野生復帰に関しては,実施場所としては検討されている下島が適当とする回答は少なかったが,野生復帰そのものに関しては全体として肯定的に捉えられていた。ツシマヤマネコは,ほとんど目撃されない存在でありながら,主に交通事故対策を中心とした保護活動の展開や新聞テレビ報道によって,「対馬にのみ生息する」や「絶滅のおそれがある」という認識は普及していることが背景にあると考えられる。ただし,生活とは遠い存在であるがゆえに利害関係が想像されにくく,保護活動が肯定的に受け入れられているとも考えられる。