著者
武田 有希 大沢 愛子 前島 伸一郎 西尾 大祐 木川 浩志
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-24, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
18
被引用文献数
9 6

回復期リハビリテーション(リハ)病棟における摂食嚥下障害の予後について検討した.対象は,発症1カ月の時点で経管栄養の患者47名(脳出血17名,脳梗塞19名,くも膜下出血11名)で,平均年齢は71.0±12.6歳であった.これらの患者の背景因子,身体機能,認知機能,嚥下機能,日常生活活動(ADL)を評価し,退院時に3食経口摂取の患者(経口群)と,経管栄養の患者(非経口群)の2群に分け比較した.また,原因疾患と嚥下障害の経過を検討した.その結果,経口群は非経口群に比べ年齢が若く,在院中の身体機能,認知機能,嚥下機能,ADLの改善が大きかった.脳出血の患者は発症6週から急速に改善したが,くも膜下出血の患者では発症後8週頃より改善した.以上から,脳卒中の嚥下障害の予後を考える上で,疾患による差に留意し,嚥下のみでなく身体機能,認知機能を高めるような訓練の継続が必要だと考える.
著者
前島 伸一郎 大沢 愛子 西尾 大祐 平野 恵健 木川 浩志 武田 英孝
出版者
Japanese Society of Prosthetics and Orthotics
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.46-50, 2013

医用工学の進歩に伴い,医療・福祉の領域においてもロボット技術が応用されている.なかでも,筋力が低下した高齢者や運動機能障害を有する人の自立支援や,介護支援などへの適用が期待されている装置がロボットスーツ Hybrid Assistive Limb (HAL)<sup>®</sup> である.HAL は生体電位信号を活用し,人間・機械・情報系の融合複合体技術を駆使したサイボーグ型ロボットである.脳卒中片麻痺に対するHALの効果について,現時点においてはほとんど検証されておらず,装着に手間がかかり,介助が増え,疲れやすい等の欠点も否めないが,将来性は高く,今後,装具あるいは訓練器具として,リハビリテーションへの利用が期待される.
著者
平野 恵健 西尾 大祐 池田 誠 新田 收 宮崎 泰広 皆川 知也 高橋 秀寿 木川 浩志
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-119, 2015-04-01 (Released:2016-04-15)
参考文献数
23
被引用文献数
3

本研究の目的は,回復期リハビリテーション(リハ)病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者に対して,入院時の身体機能から退院時の歩行能力を予測することの可否を検討することである.対象は,回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者のうち,入院時に重度片麻痺を有し,長下肢装具を処方された49名とした.方法は,対象者を退院時の歩行能力から歩行可能群と歩行不能群の2群に分類し,入院時の患者属性,神経症候,高次脳機能障害,運動機能を単変量解析した.さらに,有意差を認めた評価項目を用いて,退院時の歩行能力を従属変数とした判別分析を行った.その結果,単変量解析では,年齢,神経症候,高次脳機能障害,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力において有意差が認められた(p < 0.05).また,判別分析では,年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力が選択された.以上より,回復期リハ病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者の退院時の歩行能力は,入院時の年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力を用いることにより予測することができると考えられた.
著者
武田 有希 前島 伸一郎 大沢 愛子 西尾 大祐 木川 浩志
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.251-257, 2010-12-31 (Released:2020-06-27)
参考文献数
21

【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病棟において,入院時のベッドサイドの嚥下機能評価と退院時の摂食状況や転帰との関連について検討した.【対象と方法】対象は,回復期リハ病棟に入院し,摂食嚥下リハを行った93 名(脳出血33 名,脳梗塞41名,クモ膜下出血10 名,頭部外傷9 名)で,年齢は18~93 歳,男性54 名,女性39 名であった.これらの患者に対し,背景因子,認知機能,嚥下機能,日常生活活動(ADL),転帰などについて調査し,退院時に経口摂取可能であった群(経口群),経管栄養であった群(経管群)の2 群を比較した.【結果】経口群は64 名で,経管群は29 名であった.経口群は経管群に比べ,年齢が若く,Mini-Mental State Examination, Raven's Coloured Progressive Matrices の得点が有意に高かった.また,経口群では,咽頭反射が正常なものが13 名(20.3%)で,反復唾液嚥下テストが3 回以上のものが32 名(50.0%)と経管群に比べ有意に多かった.発症から入院までの期間,在院日数,改訂水飲みテストで差はなかった.また,経口群は,遅くとも入院後5 週までに直接訓練が可能となり,入院後10 週までに3 食経口摂取が可能であった.経管群は経口群に比べ,入院時,退院時のADL が良好であった.経口群は経管群に比べ,自宅退院が多かったが,経口摂取が可能であってもADL の低い患者は自宅退院が困難であった.【結論】嚥下障害を有する患者に対し,適切な評価を実施し,入院後5 週間の摂食の経過について観察することで,退院時の経口摂取の可否について推察することが可能であると思われた.