著者
高橋 秀寿 中里 康子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.6-11, 2016-01-18 (Released:2016-02-10)
参考文献数
22

急性期脳卒中患者の下肢麻痺に対するリハビリテーションを行う場合,早期からの長下肢装具や体重免荷トレッドミルなどを用いた立位歩行訓練を行うことで,機能障害としての麻痺の改善,歩行機能の改善だけでなく,日常生活動作の自立度の改善,心臓血管フィットネスの改善にも,有意に寄与することが報告されている.この歩行機能改善のメカニズムとして,筋電図を用いた報告でも,重度の下肢麻痺患者で立ち上がり動作でみられなかった下肢筋の筋放電が,歩行動作時のみに認められることから,脊髄に内在する中枢パターン発生器(CPG:central pattern generator)の関与が有力視されている.
著者
菅原憲一 内田 成男 石原 勉 高橋 秀寿 椿原 彰夫 赤星 和人
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.289-293, 1993
被引用文献数
22

脳卒中片麻痺患者39名を対象に歩行速度および歩行自立度に関与する因子を知る目的で, 上田による12段階片麻痺回復グレード法(以下グレード), 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力, 深部感覚障害, 身長, 体重, 罹病日数, 年齢を選びその関連性を検討した。その結果, 歩行速度・歩行自立度に対して高い相関を示したのはグレード, 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力であった。また, 三変数間の相関も高かった。さらに歩行能力の二つの指標を目的変数としたステップワイズ重回帰分析の結果では, 歩行速度の第一要因は患側下肢荷重率であるのに対し, 歩行自立度の第一要因はグレードとなっていた。以上の結果から片麻痺の歩行予後予測には運動機能評価における定性的評価に加えて, 定量的評価が重要であることが示唆された。
著者
平野 恵健 西尾 大祐 池田 誠 新田 收 宮崎 泰広 皆川 知也 高橋 秀寿 木川 浩志
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-119, 2015-04-01 (Released:2016-04-15)
参考文献数
23
被引用文献数
3

本研究の目的は,回復期リハビリテーション(リハ)病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者に対して,入院時の身体機能から退院時の歩行能力を予測することの可否を検討することである.対象は,回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者のうち,入院時に重度片麻痺を有し,長下肢装具を処方された49名とした.方法は,対象者を退院時の歩行能力から歩行可能群と歩行不能群の2群に分類し,入院時の患者属性,神経症候,高次脳機能障害,運動機能を単変量解析した.さらに,有意差を認めた評価項目を用いて,退院時の歩行能力を従属変数とした判別分析を行った.その結果,単変量解析では,年齢,神経症候,高次脳機能障害,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力において有意差が認められた(p < 0.05).また,判別分析では,年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力が選択された.以上より,回復期リハ病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者の退院時の歩行能力は,入院時の年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力を用いることにより予測することができると考えられた.
著者
深田 和浩 藤野 雄次 網本 和 井上 真秀 高石 真二郎 牧田 茂 高橋 秀寿
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに】Pusher現象は,非麻痺側上下肢で接触面を押し,他動的な姿勢の修正に対し抵抗する現象であり,その評価と治療は重要である。Pusher現象を客観的に評価するための方法として,Karnathらが開発したScale of Contraversive Pushing(以下,SCP)が一般的に用いられ,測定再現性や妥当性が良好であることが報告されている。このSCPは,Pusher現象の診断において感度や特異度が優れているものの,Pusher現象の回復の変化における敏感度が低いことが指摘されている。この点に関して,Pusher現象の経時的変化を鋭敏に捉えるためのスケールとして,D'Aquilaらは,Burke Lateropulsion Scale(以下,側方突進スケール)を開発した。この側方突進スケールは,寝返り・座位・立位・移乗・歩行の5項目で構成され,0~17点の範囲でPusher現象の重症度を評価するものであり,ADLやバランスとの関連が高いことが報告されている。しかしながら,新たに開発された評価法は,基準関連妥当性の検証が必要とされるが,従来のPusher現象に対するスケールとの関連を検討した報告はない。そこで本研究の目的は,発症早期のPusher現象例に対して,側方突進スケールと従来のPusher現象に対するスケールとの基準関連妥当性を検証することとした。【方法】対象は,当院に入院し理学療法を処方されたテント上の脳血管障害患者のうち,SCPにてPusher現象ありと診断された25例(年齢66.8±15.5歳(平均±SD),性別:男性19例・女性6例,全例右手利き,左片麻痺17例・左片麻痺8例,測定病日17.3±7.0日,SIAS 26点(中央値),半側空間無視21例)とした。取り込み基準は,JCS1桁かつ全身状態が安定していることとし,Pusher現象の診断には,Bacciniらの方法に従ってSCPの各下位項目>0(合計≧1.75)を採用した。脳損傷部位は,脳梗塞:中大脳動脈領域8例・内頚動脈領域6例・前大脳動脈領域1例,脳出血:皮質下4例・被殻3例・視床3例であった。評価は,理学療法を開始後,座位・起立練習が可能となった段階で実施し,側方突進スケール,SCP,Pusher重症度分類を同日に測定した。各スケールの評価は,当院の脳卒中チームに勤務している経験年数4年目以上のPT3名が実施した。側方突進スケールとSCP,Pusher重症度分類との関連については,Pearsonの積率相関係数を用いて検討し,統計処理にはSPSSver16を用い,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮】本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施し,事前に本人もしくは家族に本研究の内容を説明し,同意を得た。【結果】側方突進スケール,SCP,Pusher重症度分類の合計得点はそれぞれ8.5±2.7点,3.7±1.4点,3.4±1.3点であった。側方突進スケールは,SCPとPusher重症度分類との間にそれぞれ強い正の相関(r=0.821,0.858,P<0.01)を認めた。【考察】本研究により,側方突進スケールは,SCPとPusher重症度分類のいずれとも強い相関があることが明らかとなった。側方突進スケールは,従来のスケールにはない寝返りや移乗の項目が含まれているが,SCPやPusher重症度分類と同様に座位・立位を中心に評価している点やPusher現象に特異的な他動的な姿勢の修正に対する抵抗に重きを置いているため,強い相関が得られたことが推察される。以上のことから,発症早期のPusher現象例における側方突進スケールの基準関連妥当性が示され,Pusher現象を客観的に評価し,経時的変化を捉えるためのツールとしての臨床的な有用性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】側方突進スケールは,従来のスケールでは評価できないPusher現象の特性や回復の変化をより詳細に捉えることが可能であり,急性期からの戦略的な治療を考える上で有用な指標となることが期待される。
著者
高橋 秀寿
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

三年度にわたって、時空間の変容の問題を歴史的に跡づけるために、ドイツにおける記念碑の変遷を追った。具体的には、ドイツにて記念碑に関する資料と文献を収集し、記念碑の撮影をおこなった。その成果として、有斐閣から出版された共著『ドイツ社会史』にて「ナショナリティ」の項目を執筆し、記念碑だけでなく、国民的祝祭、国民歌および国歌、国旗、国籍法、地理教科書などをテクストとして分析することによって、ナショナルな時空間の歴史的変遷の問題を論じた。また、『立命館言語文化研究』にて公表した「ホロコーストの記憶と新しい美学」では、80年代に試みられたホロコーストの記憶を新たな美学によって表象-記億しようとする新たな記念碑の取り組みを紹介した。さらに、2002年の4月に東京大学出版会より刊行された共著『マイノリティと社会構造』に「レイシズムとその社会的背景」と題して寄稿した論文にて、近年における極右勢力の動向を時空間の変容の問題から論じた。ほぼ同時期に柏書房より刊行された『ナチズムのなかの二〇世紀』における「ナチズムを、そして二〇世紀を記憶するということ」と題した寄稿論文においては、戦後におけるドイツ人の20世紀とナチズムの記憶の構造を分析し、その構造と変遷が記念碑においてどのように表現されているのかを論じた。そこではオイルショック以後の社会構造の変化がナチシムとホロコーストの記憶にとって重要な役割を果たしていることを明らかにした。立命館大学人文科学研究所編『現代社会とナショナル・アイデンティティ』に寄稿した「ナショナルな音楽・越境する音楽」では音楽と時空間の関連を近代化を問題としながら分析した。『ドイツ研究』35号に寄稿した「ドイツ人の脱ナショナル・アイデンティティ」では社会心理学的な分析を通して、ドイツ人のナショナル・アイデンティティの変容を分析した。また、2003年に刊行された『ナショナル・アイデンティティ論の現在』に寄せた論文では、ドイツ近代社会における記念碑の歴史的変遷とその美学的形象化の問題を、芸術表象論とかかわらせながら、時空間の変容の問題として分析してみた。
著者
西川 長夫 米山 裕 高橋 秀寿 今西 一 麓 慎一 石原 俊 宮下 敬志 李 〓蓉
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

近代としての「帝国」を、その世界的な支配秩序の形成過程に巻き込まれてきた人びとの経験の場から実証的・理論的に捉え直すことを目的とした本研究では、それぞれの「植民地」における個々の歴史的実態を解明するためにフィールドワークを重視した。日本国内と韓国での複数回にわたる国際シンポジウムの開催と現地調査、およびそれらを踏まえた研究交流を通じて「帝国/植民地」の形成過程に関する比較分析を蓄積し、グローバル化時代における「国内植民地主義」の更なる理論化を準備した。