著者
堀 進悟 副島 京子 篠澤 洋太郎 藤島 清太郎 武田 英孝 木村 裕之 小林 正人 鈴木 昌 村井 達哉 柳田 純一 相川 直樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.11-14, 1997

近隣救急隊の1994年12月から1996年4月まで16ヵ月間の出場記録を調査し,浴室内で発生した急病の調査を行った.浴室の急病は43例で当該期間の全救急件数の0.19%を占めていた.年齢は77±10歳と高齢者に多く,男女比は24例対19例と男性に多かった.診断は心肺停止26例(60%),失神(前駆症)14例,脳血管障害3例であった.各群とも高齢者が多く,明らかな年齢差を認めなかった.浴室急病の発生時期は,心肺停止のみならず,いずれの群も12-3月の厳寒期に集中していた。心肺停止は自宅浴室の発生が26例(100%)で,公衆浴場における発生は認めなかった. 一方, 非心肺停止例では自宅浴室が12例,公衆浴場が5例であった(p<0.01).さらに浴室内の発生場所を検討すると,心肺停止は浴槽内が22例(85%),洗い場が4例,非心肺停止では浴槽内が7例,洗い場が7例,不明が3例であった(p<0.01).溺水の有無を検討すると,心肺停止では21例に,非心肺停止では2例に溺水を認めた(p<0.01).すなわち,心肺停止は非心肺停止例と比較して自宅浴室の浴槽内で発生しやすく,溺水をともない易いことが示された.<BR>本研究により,公衆浴場よりも自宅浴室が心肺停止の危険をもたらしうることが示された.すなわち,身近に救助者がいれば入浴急死は防止できる可能性が示唆された.
著者
堀 進悟 副島 京子 篠澤 洋太郎 藤島 清太郎 武田 英孝 木村 裕之 小林 正人 鈴木 昌 村井 達哉 柳田 純一 相川 直樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Supplement5, pp.11-14, 1997-12-20 (Released:2013-05-24)
参考文献数
6

近隣救急隊の1994年12月から1996年4月まで16ヵ月間の出場記録を調査し,浴室内で発生した急病の調査を行った.浴室の急病は43例で当該期間の全救急件数の0.19%を占めていた.年齢は77±10歳と高齢者に多く,男女比は24例対19例と男性に多かった.診断は心肺停止26例(60%),失神(前駆症)14例,脳血管障害3例であった.各群とも高齢者が多く,明らかな年齢差を認めなかった.浴室急病の発生時期は,心肺停止のみならず,いずれの群も12-3月の厳寒期に集中していた。心肺停止は自宅浴室の発生が26例(100%)で,公衆浴場における発生は認めなかった. 一方, 非心肺停止例では自宅浴室が12例,公衆浴場が5例であった(p<0.01).さらに浴室内の発生場所を検討すると,心肺停止は浴槽内が22例(85%),洗い場が4例,非心肺停止では浴槽内が7例,洗い場が7例,不明が3例であった(p<0.01).溺水の有無を検討すると,心肺停止では21例に,非心肺停止では2例に溺水を認めた(p<0.01).すなわち,心肺停止は非心肺停止例と比較して自宅浴室の浴槽内で発生しやすく,溺水をともない易いことが示された.本研究により,公衆浴場よりも自宅浴室が心肺停止の危険をもたらしうることが示された.すなわち,身近に救助者がいれば入浴急死は防止できる可能性が示唆された.
著者
加藤 裕司 傳法 倫久 武田 英孝 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.480-487, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
45

下大静脈弁(Eustachian valve; EV)は胎生期の右房遺残構造物で,従来,病的意義がないとされてきたが,近年,欧米の循環器領域を中心に,卵円孔の自然閉鎖を阻害し,右-左シャントを助長することで奇異性脳塞栓症を惹起するとの報告が相次いでいる.一方,本邦では同様の報告はほとんどない.EVの頻度については,人種差を考慮する必要があるが,本邦では見過ごされている可能性がある.EVは高率に卵円孔開存症を合併し,右-左シャントを助長するとともに,末梢静脈からの栓子を捕捉,あるいはEVそのものが血栓形成の温床になることで奇異性脳塞栓症の原因となりうるから,10 mm以上の比較的大きいEVには留意する必要がある.
著者
前島 伸一郎 大沢 愛子 西尾 大祐 平野 恵健 木川 浩志 武田 英孝
出版者
Japanese Society of Prosthetics and Orthotics
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.46-50, 2013

医用工学の進歩に伴い,医療・福祉の領域においてもロボット技術が応用されている.なかでも,筋力が低下した高齢者や運動機能障害を有する人の自立支援や,介護支援などへの適用が期待されている装置がロボットスーツ Hybrid Assistive Limb (HAL)<sup>®</sup> である.HAL は生体電位信号を活用し,人間・機械・情報系の融合複合体技術を駆使したサイボーグ型ロボットである.脳卒中片麻痺に対するHALの効果について,現時点においてはほとんど検証されておらず,装着に手間がかかり,介助が増え,疲れやすい等の欠点も否めないが,将来性は高く,今後,装具あるいは訓練器具として,リハビリテーションへの利用が期待される.
著者
出口 一郎 荒木 信夫 前島 伸一郎 武田 英孝 古屋 大典 加藤 裕司 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.749-754, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

症例は59歳女性.突然の眩暈,嘔吐のため当院へ救急搬送された.頭部MRI拡散強調画像上,左上小脳動脈灌流域に急性期脳梗塞所見を認め,加療を開始した.入院後上記症状の改善を認めたが,入院5日後に施行した神経心理学的検査では記憶・遂行機能などの認知機能の著明な障害を呈し,SPECTでも両側基底核,小脳,側頭葉,頭頂葉および前頭葉におよぶ広範な血流低下がみられた.入院約1カ月および2カ月後の神経心理学的検査では認知機能の著明な改善を認め,SPECTでも上記部位の血流は改善していた. 本症例は小脳梗塞にて認知機能障害を呈したCerebellar cognitive affective syndromeと考えられた.従来,認知・行動障害は小脳後方領域の障害,また感情障害は虫部の障害と関連があるとする報告や,認知障害は後下小脳動脈領域の障害で生じ,上小脳動脈領域の障害では生じないという報告があるが,本症例では上小脳動脈領域の梗塞で遂行機能障害を呈し,情動性変化は認められなかった.
著者
名古屋 春満 武田 英孝 傳法 倫久 加藤 裕司 出口 一郎 福岡 卓也 丸山 元 堀内 陽介 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.59-66, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
23
被引用文献数
7 5

2002年8月から2009年10月までの間に埼玉医科大学国際医療センター・埼玉医科大学病院を受診した特発性頸部内頸動脈解離症例10例(年齢は36~70歳,男性8例,女性2例)について臨床的検討を行った.診断にはSASSY-Japan脳動脈解離ワーキンググループの「脳動脈解離の診断基準」をもとに,頭部MRI・MRA,3D-CTA,脳血管撮影,頸動脈超音波検査などの検査を用いて行った.脳虚血発症例は8例,頸部痛のみの症例が1例,無症候性が1例であった.発症時に頭痛または頸部痛を伴った症例は4例(40%)であった.10例中4例で発症後3カ月以内に画像上解離血管の改善が認められた.発症3カ月後のmodified Rankin Scale(mRS)は7例がmRS 1であり,3例がmRS 2と全例で転帰が良好であった.平均観察期間17.2カ月において,全例で脳卒中の再発を認めなかった.本邦においても特発性頸部内頸動脈解離症例は決して稀ではなく,内頸動脈の閉塞または狭窄を来した症例に遭遇した際には,常に本疾患を念頭においた複数の検査を可及的速やかに行う必要がある.