著者
道祖土 勝彦 雨宮 恵司 佐藤 秀人 岡部 顕史 小川 直人 釜谷 保志 木暮 一啓 西村 昌彦 奥川 光治 楠井 隆史
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.629-636, 2012-07-05 (Released:2012-07-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2 8

日本には毎年5から15万トンの海ゴミが漂着している.この漂着ゴミの70% がポリスチレン(PS)である.漂流・漂着PSは海洋環境でスチレンオリゴマー(SO)を発生すると予測される.本研究では,PS由来の化学物質/SOによる沿岸汚染を明らかにし,発生源に関する知見を得ることを目的に現地調査を行った.このためアジア大陸から発生した漂流プラスチックが漂着する代表的な島々である沖縄本島,八重山諸島(西表島・石垣島)において目視調査をすると共に調査地において海水,砂を採取した.採取した海水,砂の選択イオンモニタリング–ガスクロマトグラフィー/質量分析(SIM-GC/MS)からSO,[スチレンモノマー,フェニルエチレン(SM),スチレンダイマー,2,4-ジフェニル-1-ブテン(SD),スチレントリマー,2,4,6-トリフェニル-1-ヘキセン(ST)の混合物]が検出された.検出されたSOの最大成分はSTであり,海砂中で最大4400 ng/gのSTが検出された.検出されたSO組成は市販発泡ポリスチレン製品中のSO組成,精製ポリスチレン単独熱分解反応生成物のSO組成とほぼ同様の傾向であった.
著者
木暮 一啓 小川 浩史 砂村 倫成 河原林 裕 浜崎 恒二 常田 聡 西村 昌彦 浦川 秀敏 千浦 博 井上 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

近年の研究から、海洋の中心層には古細菌が広く分布することが分かってきた。1000m以深では、数的には原核生物のうちの半数近くを占めることが見出されてきたが、今のところ分離株が全くなく、その生態、系統、物質循環に対する寄与などについては殆ど未知の状況である。これらの環境は低温、高圧、貧栄養で特徴付けられるが、こうした環境は従来から知られていた古細菌の好熱性、好塩性、嫌気性などの性質からはずれがある。従ってこれらを非極限性の古細菌と呼ぶことにする。本研究はこの一群を中心とした古細菌に対する学際的研究である。本研究では様々な課題を扱ったが、最大の成果は外洋域中心層から複数の古細菌を分離し、その系統的位置づけおよび性情等についての検討を開始できたことである。これは我々の知る限り、世界で初めてのことである。さらに、それが系統的には好塩性の古細菌に近縁であることが分かったことから、非極限性古細菌群集の起源や古細菌の進化上の広がりなどについて新たな仮説を提示できる段階に至った。
著者
塚本 勝巳 西田 睦 竹井 祥郎 木暮 一啓 渡邊 良郎 小池 勲夫
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2000

5年間の研究活動により,次の研究成果を得た.【総括班】海と陸の物理・化学的環境特性と生物の生活史特性を比較することにより,陸の生命について得られた従来の生命観とは異なる「海の生命観」を考察した.【生命史班】魚類全体の大規模分子系統樹を構築した.DNAデータの時間較正を行い,条鰭類の根幹を構成する主要な系統間の分岐年代を解明した.深海化学合成生物群集の主要な固有動物群について,生態学的調査と分子系統学的解析によって,それらの進化過程の全貌を明らかにした.【機能系班】心房性ナトリウム利尿ペプチドが新しいウナギの海水適応ホルモンであることを生理実験で証明すると共に,その分子進化を明らかにした.アコヤ貝の貝殻形成に関わる新規基質タンパク質を同定し、そのアミノ酸およびcDNA配列を決定すると共に,その発現部位を明らかにした.ワムシの個体数変動過程に密接に関わる遺伝子を同定し,高感度定量法を確立して個体数変動に伴う遺伝子発現パターンの変動を明らかにした.【連鎖系班】海洋生態系の生物・非生物粒子の分布,動態を定量的に解明するための高精度解析系を整備した.非生物態有機物と微小生物群集の鉛直分布を明らかにすると共に,それらの相互の動的平衡メカニズムを解明した.植物プランクトンの色素組成,動物プランクトンの微細構造,細菌群集の系統群別の増殖特性の解明を通じ,海洋生物のミク仁な連鎖過程を解明した.【変動系班】高緯度水域において海洋生物資源が大きく変動する理由は,初期生活史パラメタの変動がその後の大きな加入量変動を引き起こしているためと明らかになった.化学物質による海洋汚染は海洋動物の生理や繁殖機能に障害を与えており,汚染の国際監視体制を構築することが重要であると指摘した.非定常性,複雑性,不確実性という特性を持つ海洋生物資源は,MSY理論に代わって順応的理論で管理されるべきであると結論した.