著者
洲戸 歩 白杉(片岡) 直子 本多 佐知子 祗園 景子 増田 勇人 大村 直人
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.61, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】茶道における抹茶の点て方やその仕上がりには、熟練者と⾮熟練者の間に⽬に⾒えてわかる差異が存在し、熟練者は暗黙知、すなわち⼈間が無意識のうちに⻑年の経験や勘などから得た、簡単には⾔語化できない知識をもつ。本研究では、茶道流派の一つである裏千家のきめ細かい抹茶の泡立ち方に着目し、撹拌動作を分析することで、化学工学の視点から撹拌に有効な動作の抽出を試みた。【方法】抹茶2 gを入れた内径10.5 cmの茶碗に80℃の湯70 mLを注ぎ、完全形、内穂のみ、外穂のみの3種類の茶筌を用い、熟練者(3名)と⾮熟練者(3名)に抹茶を撹拌させた。撹拌動作による泡⽴ちへの影響を調べるために被験者の肘、⼿⾸、中指の第⼆関節の3点に印をつけて、正面から動画撮影し、Dipp-Motion V(DITECT 社製 Ver.1.2.6)を用いて動作解析を⾏った。泡立ち評価は、茶碗の真上から撮った画像をImage J(v.1.53o)を用いてモノクロ二値化し、黒の部分の面積を比較し行った。【結果・考察】熟練者は3種類の茶筌を用いて撹拌した場合、いずれにおいても泡のきめ細かさや泡立ち具合のばらつきが少なかった。一方、非熟練者は茶筌の違いによる泡立ちに大きなばらつきがみられた。動作解析の結果、熟練者は肘の変位が⾮熟練者よりも大幅に小さく、肘を軸とした撹拌を行うことがわかった。さらに、手首と中指の変動が同期し、熟練者に見られる肘の変動が逆位相の場合、細かな泡立ちとなったが、非熟練者に見られる肘の変動が手首と中指の変動と1/4周期の位相差がある場合、荒い泡立ちとなった。
著者
大村 直人 本多 佐知子 白杉 直子 原 真衣子 池田 和哉 GHOBADI Narges
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、主に調理における人間の撹拌動作の中の暗黙知に着目した。5人の熟練者と2人の非熟練者の撹拌動作を観察した。生クリームの状態は、生クリームの気泡巻き込み量を示すオーバーランとレオロジー特性を用いて評価した。動作解析においては、被験者の肘、手首、泡だて器の柄の3点にマーカーを設置して、その動きを記録した。生クリームの混合過程を、食紅をトレーサーとして可視化した。5人の熟練者はいずれも、非熟練者よりも約半分の時間でオーバーランのピーク値に到達し、その値も100を超えた。動作解析より、熟練者は非熟練者の動きに比べ、肘、手首、泡だて器の運動は同期しておらず、複雑でカオス的であることがわかった。
著者
升井 洋至 片寄 眞木子 本多 佐知子 坂本 薫 田中 紀子 富永 しのぶ 原 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】兵庫県における各種行事食での料理の認知、経験および手作り状況について、学生、親、祖母の三世代間で比較を行い、世代間での伝承状況についての現状を把握することを目的とした。<br> 【方法】平成21・22年度日本調理科科学会特別研究で実施したアンケート調査より、兵庫県内の行事食について検討した。調査資料より対象者を兵庫県内で10年以上居住経験のある学生世代(10,20代)379人、親世代(40,50代)212人、祖母世代(60歳以上)48人とし、調査項目17の行事食とこれら行事食における料理について検討を行った。<br> 【結果】行事食の認知度は親と祖母世代間では大差はみられなかった。秋祭りでは、祖母(71%)、親(51%)、学生(27%)の三世代間で差がみられた。重陽・菊の節句、春祭りの認知率は祖母(41%、50%)、親(24%、28%)であったが、親と学生(24%、24%)の割合はほぼ同じであった。行事食の経験は、祖母の3分の1程度しか学生では経験していなかった。春分の日の行事食経験率は祖母93%と親81%に対し学生30%と小さく、ご飯・だんごの喫食経験率が90、78、26%と顕著な差がみられた。秋分の日の喫食経験も同じ傾向であった。上巳、冬至では学生で行事食の認知率が84%、78%、経験率74%、51%と小さい傾向にあった。行事食の料理で白酒、かぼちゃの喫食経験率も学生は小さく祖母と親では僅かな差で、白酒で親49%が学生14%、かぼちゃで親80%が学生50%とこの世代間で大きな差を示した。冬至のかぼちゃは各年代とも85%以上家庭で調理していた。白酒は家庭で作る割合が多いが、もち・菓子は購入するものが各年代とも86%以上であった。<br>
著者
中谷 梢 片寄 眞木子 坂本 薫 作田 はるみ 田中 紀子 富永 しのぶ 原 知子 本多 佐知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会平成24~25年度特別研究の「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において実施した「昭和30~40年代に食べられていた兵庫県の家庭料理」の聞き書きで得られた報告に基づいて兵庫県の主菜の特徴を9つの地域ごとに調べた。<br>【方法】美方郡香美町(但馬・日本海沿岸),丹波市氷上町(丹波・山間部),宍粟市千種町(西播磨・播磨山地),姫路市(中播磨・播州平野),小野市(北播磨・平野部),加古川市(東播磨・平野部),明石市(東播磨・瀬戸内沿岸),神戸市(都市部),淡路市(淡路島)の9地域を選定し,聞き書き調査は平成25~26年に行った。収集した料理の中から主菜について地域の特徴を検討した。<br>【結果】香美町では多く獲れる魚介類を使い「さばのじゃう」(すきやき)や「かれいの煮物」,干物などにした。丹波は鶏を飼い「すきやき」にした。千種では山鳥や山うさぎを捕まえて骨ごと青石で叩いて肉団子にした。姫路では生姜づくりが盛んであり「おでん」を生姜醤油につけて食べた。小野では高野豆腐の加工中にできる粉で「高野豆腐粉と野菜の煮物」,また正月には畑で採れた野菜中心の「煮しめ」が作られた。加古川はクジラ肉で「はりはり鍋」を作った。明石ではたこを塩もみし「やわらか煮」などにした。神戸は「ぐっだき」,「牛肉の佃煮」など牛肉料理や洋食を食べていた。淡路はハモをなますや鍋に,卵を産まなくなった鶏を「すきやき」に入れていた。魚介類については,沿岸部は刺身や焼魚,煮魚にした他,干物や小魚は佃煮などに加工したが,山地や内陸部は塩魚や魚の干物を行商などから入手していた。鯖の塩焼きや魚の干物,飼っていた鶏や卵,揚げの煮物などは県内共通して食されていた。
著者
升井 洋至 片寄 眞木子 坂本 薫 田中 紀子 原 知子 本多 佐知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.195, 2010

【<B>目 的</B>】現在、平成21、22年度日本調理科学会特別研究として全国統一様式を用い、行事食についての認知状況、摂食状況等を調査中である。今回は特に年末年始の行事食について、兵庫県の大学生の家庭における現状を把握することを目的とした。<BR>【<B>目 的</B>】日本調理科学会近畿支部担当の調査区域内(大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山)で実施した2499名の調査データ中、兵庫在住者534名を対象とした。年末年始の行事食として、屠蘇、雑煮、お節料理、七草粥、年越しそば等を取り上げ、認知度、食経験について集計を行った。<BR>【<B>結 果</B>】調査対象者の性別は女性464名、男性70名であった。「屠蘇」においては52%が未経験であり、毎年喫食をする割合は19%であった。「雑煮」では83%が毎年喫食し、80%が家庭で調理、すましと白みそ雑煮の割合はほぼ等しく、両方を食べるものが9%であった。餅の形では「丸もち」の使用が多かった。雑煮以外の餅料理として「焼き餅」「きな粉餅」等があげられていた。「小豆飯・赤飯」の正月における喫食は10%で、お節料理中「なます」(68%)以外、「黒豆」「数の子」「田作り」等は75%以上の喫食経験があり、「昆布巻き」は毎年食べる割合が低かった。魚・肉料理の喫食状況は、えび、ぶり、鯛および牛、鶏、豚の順に多く食されていた。「七草粥」については86%が認知しているが、経験は60%で「毎年食べる」28.5%、「時々食べる」15.7%であった。食材はせり・なずな等の青菜を中心とするものが多かった。大みそかでは「年越しそば」(93.8%)の喫食経験に対し、「年取りの祝膳」(12.7%)、「尾頭つきいわし料理」(7.8%)の喫食経験は低かった。現在、喫食状況の変化、入手方法等の面からも検討している。
著者
本多 佐知子 林 利恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.123, 2010

【目的】野菜は季節及び地域の影響が大きく、行事食に使われる際には、言い伝えもあり、食文化が反映されやすい食材である。日本調理科学会近畿支部食文化分科会では、2007年10~12月に、近畿2府4県の家庭における野菜の利用状況、調理方法、料理、行事食などを把握する為の調査を行った。一昨年、昨年に引き続き、本年度は野菜に特化した家庭で行われている行事食や使われる野菜の種類、年齢の違い等、兵庫県の現状を報告する。【方法】 調査時期:2007年10~12月、調査対象者:兵庫県在住者(県庁所在地とそれ以外の地域)の調理担当者、調査方法:直接記入法(留置法)による、有効回答数140部、回収率83.3%であった。その内、行事食の有効回答数129部、回答率92.1%であった。調査内容:17に分類した行事の料理名や供物、使用する野菜名、その野菜を用いる理由・由来等を記載する質問項目によった。【結果】 アンケート調査から兵庫県在住者が実施する主なものとして、80%の家庭で正月の行事食があげられる。正月の行事食は50歳以上、50歳未満の年代に限らず実施している。冬至も全体として54%となったが、正月と同様に年代に限らず半数以上が行っている。続いて七草47%、ひな祭り45%、節分41%、盆25%、大晦日19%、クリスマス17%となる。七草と盆は50歳以上の年代の方が実施している割合が多いが、節分とひな祭りは50歳未満の方が多い傾向になった。料理件数でも正月が多く、冬至、ひな祭り、七草、節分、盆の順に続くが、正月の行事食に使われている野菜の種類は32種類もあげられた。盆でも使われる野菜の種類が多く29種類になった。正月に使われる野菜としてくわいは上位6位に入っている。このように行事特有に使われる野菜に、七草粥の「七草」や節分の巻き寿司の「かんぴょう」、盆の「なす」「きゅうり」「かぼちゃ」があげられる。かぼちゃは、夏より12月の冬至の煮物として、代表的な野菜になっている。日本料理である正月の節句料理や盆の精進料理には、野菜が多く使われている。野菜の言い伝えもあり、健康にいいという理由からよく利用されているといえる。節分の巻き寿司は、毎年恵方に向かって丸かじりするという行事食であるが、宣伝効果もあり、根づいてきている。
著者
作田 はるみ 片寄 眞木子 坂本 薫 田中 紀子 富永 しのぶ 中谷 梢 原 知子 本多 佐知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

<br><br><br><br>【目的】兵庫県は南北を海に接して大小の島を擁し,中央部には東西に山地が横たわっている。河川の下流には肥沃な平野が開け,多彩な産物に恵まれるとともに,都市としても発展してきた。日本の縮図ともいわれる気候風土の違いが,地域ごとに伝統的な食文化を形成してきた。本研究では,各地域で昭和30・40年代に食べられていた家庭料理の中で主食となる「ごはんもの」と「もち・もち米」について,各地域の内容や背景を比較し,その特徴を明らかにすることを目的とした。<br><br>【方法】神戸,東播磨(瀬戸内海沿岸),東播磨(平野),北播磨,中播磨(平野),西播磨(山地),但馬(日本海沿岸),丹波,淡路の9地域を選定して平成25,26年に調査し,平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』聞き書き調査報告書(日本調理科学会)を資料とした。本研究では,家庭料理のうち,「ごはんもの」と「もち・もち米」について各地域の日常食と行事食について検討した。<br><br>【結果】日常の主食は,西播,丹波,但馬では麦飯,他地域では白米飯,神戸の朝食はパンであった。山地では山菜や野菜,沿岸部では魚介や海草といった季節の食材を使用した炊き込み飯や混ぜご飯,寿司も食べられていた。特に行事食では,秋祭りに鯖寿司が作られている地域が多かった。巻き寿司やいなり寿司は,運動会などの行事でよく作られ,具材の取り合わせに地域の特徴がみられた。もちについては,正月の雑煮として各地域で食べられていた。雑煮は,丸もちとみそ仕立ての地域が多かった。西播磨では,すまし仕立てで蛤が入り,淡路では,三が日はもちを食べず4日目に食べられていた。また,もちはあられやかきもちに加工され,ひなまつりやふだんのおやつとして食べられていた。