著者
米倉 裕希子 作田 はるみ 尾ノ井 美由紀
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.77-84, 2013-03

これまでの障害児の家族研究は親の障害受容が中心的課題であり,親は子どもの障害にショックを受けながらも,再起に向かうというプロセスを踏むといわれてきた.しかし,受容の定義が曖昧で,科学的な検証がなされないまま一方的に家族に受容を押し付けてきた.このような問題意識にたち,すでに統合失調症患者の家族研究で確立されている家族の感情表出(Expressed Emotion,以下EE)研究に着目し,科学的かつ客観的手法を用いた家族研究を行ってきた.本研究では,幼児と学齢児の子どもの家族のEEおよびQOL の違いについて比較し,発達段階における家族支援のあり方について示唆を得る.【方法】EE評価には,簡便な質問紙であるFamily Attitude Scale(FAS)を,QOL 評価にはSF-36v2 を使用した.【結果】分析対象者は,幼児の家族8名,学齢児の家族32 名だった.幼児および学齢児の家族の2群で,FASおよびSF-36v2 の下位尺度それぞれにおいて,独立したサンプルのt検定をおこなった.FAS では有意な差はなかったが幼児の家族は学齢児の家族より低い傾向がみられた.一方で,QOL は全般的に学齢児のほうが幼児より高く,下位尺度の「全体的健康感」では有意に低かった.【考察】先行研究では,EE と子どもの行動上の問題との関連が示唆されている.幼児期では,子どもの行動特性や行動上の問題があまり表出されておらず,EE が低い傾向にあると思われる.一方で,QOL の全ての項目で学齢児の家族は幼児の家族より高く,「全体的健康感」では明らかに高かった.これは,幼児期より継続的にサービスを利用してきたことが影響していると推察される.以上の結果から,これまで言われていたようなショックから再起へという一方向的なプロセスを踏むのではないことが示唆された.しかし,対象者数が少ないため,一般化は難しく今後追試調査が必要である.
著者
中谷 梢 片寄 眞木子 坂本 薫 作田 はるみ 田中 紀子 富永 しのぶ 原 知子 本多 佐知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会平成24~25年度特別研究の「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において実施した「昭和30~40年代に食べられていた兵庫県の家庭料理」の聞き書きで得られた報告に基づいて兵庫県の主菜の特徴を9つの地域ごとに調べた。<br>【方法】美方郡香美町(但馬・日本海沿岸),丹波市氷上町(丹波・山間部),宍粟市千種町(西播磨・播磨山地),姫路市(中播磨・播州平野),小野市(北播磨・平野部),加古川市(東播磨・平野部),明石市(東播磨・瀬戸内沿岸),神戸市(都市部),淡路市(淡路島)の9地域を選定し,聞き書き調査は平成25~26年に行った。収集した料理の中から主菜について地域の特徴を検討した。<br>【結果】香美町では多く獲れる魚介類を使い「さばのじゃう」(すきやき)や「かれいの煮物」,干物などにした。丹波は鶏を飼い「すきやき」にした。千種では山鳥や山うさぎを捕まえて骨ごと青石で叩いて肉団子にした。姫路では生姜づくりが盛んであり「おでん」を生姜醤油につけて食べた。小野では高野豆腐の加工中にできる粉で「高野豆腐粉と野菜の煮物」,また正月には畑で採れた野菜中心の「煮しめ」が作られた。加古川はクジラ肉で「はりはり鍋」を作った。明石ではたこを塩もみし「やわらか煮」などにした。神戸は「ぐっだき」,「牛肉の佃煮」など牛肉料理や洋食を食べていた。淡路はハモをなますや鍋に,卵を産まなくなった鶏を「すきやき」に入れていた。魚介類については,沿岸部は刺身や焼魚,煮魚にした他,干物や小魚は佃煮などに加工したが,山地や内陸部は塩魚や魚の干物を行商などから入手していた。鯖の塩焼きや魚の干物,飼っていた鶏や卵,揚げの煮物などは県内共通して食されていた。
著者
三浦 加代子 坂本 薫 中谷 梢 作田 はるみ 橘 ゆかり 岩城 啓子 升井 洋至 森井 沙衣子 川西 正子 堀内 美和 片平 理子 白杉(片岡) 直子 井奥 加奈 横溝 佐衣子 岸田 恵津
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.44-52, 2020-02-05 (Released:2020-02-14)
参考文献数
21
被引用文献数
1

小学校家庭科での炊飯学習のあり方を検討することを目的に,近畿および関東の公立小学校の家庭科担当教員を対象に,教育現場での炊飯実習の実態を調査した。平成25年に近畿630校,平成26年に関東700校を無作為に抽出し,炊飯実習に関する調査票を郵送した。近畿306校,関東234校より回答が得られた。炊飯実習は約97%が5年生を対象に実施されていた。90%以上が鍋を用い,材質はガラスが85%を占めていた。炊飯実習の米の量,洗米,水加減,浸水時間,加熱の仕方などの指導は教科書の方法に従って行われていた。教員が実習で困っていることは,「火加減の調節の指導」,「焦げること」が多くあげられた。教員は,児童が自分でご飯が炊けた達成感を感じ,ご飯が炊けるまでの変化に興味をもっていたととらえていた。教員は炊飯実習を有意義な実習であると考えていた。「火加減の調節の指導」や「加熱時間の調整の指導」,「焦げることへの対応」は今後の検討課題である。
著者
坂本 薫 三浦 加代子 橘 ゆかり 小泉 弥栄 作田 はるみ 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.56, 2004

【目的】砂糖は、調理上大変身近で重要な役割を果たしている食材である。砂糖には、上白糖、グラニュ糖、白双糖、三温糖、黒砂糖、その他いろいろな種類があるが、砂糖は甘味料として使われるだけでなく、その特性を生かした菓子や料理が数多くある。特に砂糖の加熱特性を利用した調理には、フォンダンや砂糖衣、抜絲、カラメルなど興味深いものが多く、温度によって性状が段階的に変化する。カラメルソースは、砂糖溶液を着色するまで加熱して作るソースで、着色や着香、味つけに用いられ、その煮詰め温度は、一般的に160℃–180℃とされていることが多い。しかし実際には、180℃まででは十分な着色が見られないこともある。今回は、カスタードプディングに適したカラメルソースの調製温度について検討するため、2社のグラニュ糖を用いてカラメルソースを調製した。<br>【方法】試料は、市販の2社のグラニュ糖を用い、28メッシュ以下の粒度のものを実験に供した。温度測定には水銀温度計と熱伝対を用い、標準温度計により温度補正を行った。また、pHおよび吸光度を測定し、有機酸の生成状況や着色状況を観察した。<br>【結果】加熱は、通常の調理操作に近い条件となるように熱源や昇温時間を検討し、実験を行った。その結果、一般的にカラメルの調製温度として示されている温度では十分な着色が認められない製品があることがわかった。また、カラメルソースを調製する過程での差異を明らかにするため、昇温過程の一定温度で加熱を止めてpHおよび色調等を比較したところ、明らかに差異が認められ、純度の非常に高いグラニュ糖であっても、製品により調理の上で大きな差があらわれることが明らかとなった。
著者
作田 はるみ 片寄 眞木子 坂本 薫 田中 紀子 富永 しのぶ 中谷 梢 原 知子 本多 佐知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

<br><br><br><br>【目的】兵庫県は南北を海に接して大小の島を擁し,中央部には東西に山地が横たわっている。河川の下流には肥沃な平野が開け,多彩な産物に恵まれるとともに,都市としても発展してきた。日本の縮図ともいわれる気候風土の違いが,地域ごとに伝統的な食文化を形成してきた。本研究では,各地域で昭和30・40年代に食べられていた家庭料理の中で主食となる「ごはんもの」と「もち・もち米」について,各地域の内容や背景を比較し,その特徴を明らかにすることを目的とした。<br><br>【方法】神戸,東播磨(瀬戸内海沿岸),東播磨(平野),北播磨,中播磨(平野),西播磨(山地),但馬(日本海沿岸),丹波,淡路の9地域を選定して平成25,26年に調査し,平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』聞き書き調査報告書(日本調理科学会)を資料とした。本研究では,家庭料理のうち,「ごはんもの」と「もち・もち米」について各地域の日常食と行事食について検討した。<br><br>【結果】日常の主食は,西播,丹波,但馬では麦飯,他地域では白米飯,神戸の朝食はパンであった。山地では山菜や野菜,沿岸部では魚介や海草といった季節の食材を使用した炊き込み飯や混ぜご飯,寿司も食べられていた。特に行事食では,秋祭りに鯖寿司が作られている地域が多かった。巻き寿司やいなり寿司は,運動会などの行事でよく作られ,具材の取り合わせに地域の特徴がみられた。もちについては,正月の雑煮として各地域で食べられていた。雑煮は,丸もちとみそ仕立ての地域が多かった。西播磨では,すまし仕立てで蛤が入り,淡路では,三が日はもちを食べず4日目に食べられていた。また,もちはあられやかきもちに加工され,ひなまつりやふだんのおやつとして食べられていた。