著者
笈田 幸治 松井 元子 大場 将生 村元 由佳利 大谷 貴美子 本杉 日野
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.287-293, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ブドウ‘シャインマスカット’は皮ごと食べるブドウとして販売されているが,その食べやすさは無核化処理や灌水などの栽培条件によって異なる.皮ごと食べやすさを向上させるため,満開期における25 ppm GA3に加用するCPPU処理濃度の違いが,果粒の物性,剥皮厚および皮ごと食べたときの官能評価に及ぼす影響について検討した.試験区としてCPPUの無処理,2 ppm,5 ppmおよび10 ppm区の4試験区を設定した.果粒の物性分析の結果,無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,5 ppmおよび10 ppm区では無処理および2 ppm区よりも初めの嚙みきり時に果粒の歪みが大きく,咀しゃく中の皮切れが悪い品質であると評価された.また,果粒の剥皮厚は無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,処理濃度が高くなるに従って大きくなった.果粒を皮ごと食べたときの官能評価の結果,10 ppm区での評価は他の試験区に比べて低く,これは物性分析の結果と一致していた.また,5 ppm区では10 ppm区ほど大きな差はなかったが,無処理および2 ppm区よりも官能評価は低い傾向がみられた.以上のことから,満開期におけるCPPUの5 ppmおよび10 ppm濃度処理は‘シャインマスカット’果粒の皮ごと食べやすさを大きく損なうことが明らかとなった.
著者
中野 幹夫 本杉 日野
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

わが国では一般に,同じ果物でもより大きな果実が好まれるため,生産者は果実肥大に努める.しかし,果実の肥大を促すと,モモでは核割れを誘発し,生理落果や品質低下を招く.これまでに,1.核割れは果肉組織の発育に伴って生じた引張力が核を引き裂くことによって起こり,2.未熟な種皮は外気に晒されると大量のエチレンを急速に生成することから,3.果柄基部にまで及ぶ激しい核割れを生じた場合は,大気の流入によりエチレン生成が起こり,落果が誘導される恐れがあるが,4.通常の核割れではエチレン生成、はみられないが,成熟は促され,収穫期直前落果がやや多くなること,等を明らかにした.本研究では,果実発育に伴う果肉と核の物理的強度の変化を調査し.肥大促進した果実の特性を明らかにした.核の硬度は果実発育第1期から第3期に掛けて増し続けたが,核割れの起こる第2期には,弾性が小さく脆いため,外圧が加わると核は破壊され易く,果実肥大を促すとその特性が助長されることを明らかにした.果実基部から核内腔へ色素溶液を加圧注入して核割れ症状を人為的に起こしたところ,核の耐圧力は果実発育に伴って一増加し続けたが,肥大促進区の第2期の耐圧力は対照区のそれに比べ低く,また,果実径と耐圧力との間には負の相関が認められた.摘蕾を主体とした管理によって果実肥大の促進を図ったところ,商品として十分な大きさの果実が得られた.若干の核割れは発生したものの従来の摘果主体の管理に比べて,核割れの発生を大幅に減らすことが出来た.以上から,第2期初めに摘果するよりも,摘蕾や摘花によって細胞数の増加に努め,核の硬化が完了した第2期後期に摘果して肥大を促す方が得策であると判断した.なお,摘蕾を行うと奇形化した種子が増え,胚のうの核DNA量に異常が認められた.その原因究明と生理落果との関係を精査する必要がある.
著者
本杉 日野 奥藤 健 片岡 大輔 鳴尾 高純
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.335-341, 2002-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
9 14

組織培養により増殖したブドウ台木'Gloire de Montpellier'('Gloire', Vitis riparia Michx), 'Rupestris St. George'('St. George', V. rupestris Scheele)および'Couderc 3309'('3309', V. riparia×V. rupestris)においてコルヒチンによる染色体倍加処理を行った.コルヒチン処理個体より選抜した系統の幼葉についてフローサイトメトリーによる染色体倍加の確認を行った.得られた4倍体の葉においては元の2倍体台木に比較して気孔が大きく, その分布密度が低くなった.発根培養時において, 3種類の台木の4倍体の根はすべてもとの2倍体台木より短くなった.シュート長においては'Gloire'および'St. George'の4倍体でもとの2倍体より小さくなったが, '3309'では倍数性による差異がなかった.馴化期間において4倍体台木の新梢, 節間および根の長さは元の2倍体台木より短くなった.ガラス温室に搬出後の生育においても4倍体台木では元の2倍体に比べ新梢生長は顕著に小さくなったが, 茎径および比葉重は大きくなる傾向が認められた.4倍体台木では太く短い根をもつため, 元の2倍体台木と比較して非常にコンパクトな形態の根系となった.
著者
本杉 日野 山本 恭久 鳴尾 高純 山口 大介
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.271-278, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
30
被引用文献数
9

コルヒチン処理により作出したブドウ台木 ‘Riparia Gloire de Montpellier’(‘Gloire’, Vitis riparia Michx)および ‘Couderc 3309’(‘3309’, V. riparia × V. rupestris)の四倍体に接ぎ木した‘巨峰’(V. × labruscana Bailey × V. vinifera L.)ブドウ樹の成長と果実品質について,もとの二倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’と比較した.組織培養により育成した台木と‘巨峰’を試験管内で接ぎ木し,発根させた.接ぎ木後の発根期間と順化期間において四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’は二倍体台木のものと比べ新梢長および節間長が短かかった.ポット育苗期において,四倍体台木における成長はもとの二倍体台木より弱くなる傾向が認められた.圃場定植後においても,四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’における主梢摘心後の副梢成長量,幹断面積および剪定枝重は二倍体台木と比べて小さくなった.四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’樹の果実は二倍体台木に比べ濃い着色を示した.