著者
難波 雄亮 山賀 亮之介 永島 徳人 本村 和久
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.150-152, 2017-09-20 (Released:2017-09-29)
参考文献数
8

症例は66歳女性.上肢の動かしづらさで発症し,複数医療機関受診で小脳症状優位である多系統萎縮症(MSA-C:Multiple System Atrophy predominated in Cerebellar ataxia)の診断を受けていた.発症6年の経過で終日ベッド上で過ごすADL(Activities of Daily Living)となり,当院訪問診療を開始となった.往診導入前より頚部・腰部・四肢の疼痛を認めていたが,経過中に疼痛の増強を認めた.アセトアミノフェン・NSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)・トラマドールの内服を行ったが改善せず,呼吸困難出現もありモルヒネ皮下点滴を開始し,疼痛コントロールを行った.多系統萎縮症ではパーキンソン病と同様に全身の疼痛を来たす事が知られている.モルヒネを使用するまでの疼痛の報告はないため,文献的考察を踏まえ報告する.
著者
本村 和久
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.23-32, 2019-05-24 (Released:2019-06-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

沖縄県は39の有人離島があり,宮古島と石垣島,久米島にはそれぞれ県立病院や公立病院が設置され,16島に県立診療所,4島に町村立診療所が設置されている。16の県立診療所と2つの町村立診療所においては,医師の配置は1人だけである。16の県立診療所医師のほとんどは,沖縄県立中部病院や沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの後期研修プログラムの一環として赴任している。現在の医師養成が可能となっているのは,先人の離島医療に対する尽力があってこそと考えている。沖縄の近代医療史を振り返りながら,第二次世界大戦,沖縄戦で大きな被害を受けた沖縄の医療がどのように立ち上がってきたのかを考察し,その中で離島の医療を守ることが重視されてきた現状を報告する。沖縄戦後,米国統治下の厳しい医師不足,医療事情の中で,公衆衛生看護婦や医介輔などの医療職が沖縄の離島医療を支えてきた。医師養成を行い,離島の多い沖縄の医療を支える拠点病院としてスタートした沖縄県立中部病院では,教育システムを作り上げて人材の養成確保を図り,代診や遠隔医療などの支援体制を充実させてきた。派遣された医師は,離島という特殊環境下において,島民の医療を守り,地域包括ケアを実践している。
著者
吉岡 泰夫 早野 恵子 徳田 安春 三浦 純一 本村 和久 相澤 正夫 田中 牧郎 宇佐美 まゆみ
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.251-257, 2008-08-25 (Released:2010-10-22)
参考文献数
5
被引用文献数
1

患者医師間のラポールに基づく協力関係の構築や, 両者の情報共有による合意形成は, 適切なコミュニケーションを基盤として実現される. 安全で信頼される医療を実践するためにも, 医療コミュニケーションの適切化は不可欠である. この研究は, そのために効果的なポライトネス・ストラテジーを明らかにすることを目的とする.1) ポライトネス・ストラテジーとその効果について, 医療面接の談話分析により調査課題を抽出, 患者医師双方に対して面接調査, WEB調査を実施した. さらにWEB討論会で論点を明確化した.2) 敬称「さま」や多重謙譲などの過剰な敬語を, 患者は, 慇懃無礼で, 医師から心理的距離を置かれると感じている. ラポールに基づく協力関係の構築には逆効果と, 患者医師双方が意識している.3) 患者は医師に敬称「さん」や簡素な敬語の使用を期待している.それらには, 敬意を表すと同時に, 適度に心理的距離を縮める, ポジティブ/ネガティブ両面のポライトネス効果があるからである.4) 医師が, 患者の方言を理解し, 同じ方言を使うことは, 親近感を生み, 心理的距離を縮めるポジティブ・ポライトネス効果があり, 患者をリラックスさせ, 患者からの医療情報の収集を円滑にする.5) 称賛する, 楽観的に言うなどのポジティブ・ポライトネス・ストラテジーは, 患者の状況やその時のフェイス (親近欲求か不可侵欲求か) により成否は分かれるが, 成功すれば行動変容をもたらす.