著者
岩上 さやか 杉原 素子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.151-158, 2014-12-25

本研究は,回復期リハビリテーション病棟に入院した脳血管障害患者がその入院生活時に何をきっかけに自身の生活に再び目を向けることができたのかを探ることを目的とした。入院生活時に自身の病前生活に目を向けていたと判断され,現在地域生活を行っている3名に対し,半構造化面接を行い得られた資料の分析を行った。資料の内容分析を通して5つの共通項目が得られた。それらは「病前生活での自身の役割の明確な再認識の機会」と「作業療法場面での家事活動」が,生活に目を向けるきっかけとして,「病前の具体的な役割の存在」「前向きな考え方」「病気の体験を今後の生活にプラスに活かす姿勢」が,きっかけを導く背景の項目として挙げられた。このことから,患者一人ひとりの病前の役割や習慣的な活動を訓練に活かす事が,生活に目を向けるきっかけとなる可能性が示唆された。今後,患者の病前生活の情報を得る技能が必要になると思われた。
著者
鈴木 美咲 平野 大輔 小賀野 操 谷口 敬道 杉原 素子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.37-45, 2017

本研究の目的は,若年者と高齢者のペットボトルのキャップ開封方法を観察・分類し,握力・つまみ力との関係性を明らかにすることである.若年者として女子大学生51 名,高齢者として地域在住高齢女性62 名の右利き女性を対象に,未開封の500 mL のペットボトルのキャップ開封動作をビデオカメラで撮影した.撮影後,握力と指腹,側腹つまみ力を各々3 回測定した.若年者と高齢者の共通点として右手でキャップをつまみ,左手で本体を把持するパターンが多かった.高齢者では開封不能者を11 名認め,握力・つまみ力は開封可能者に比べ有意に小さかった.開封可能な高齢者においても本体底面を大腿部に押し付けて固定する者等,若年者には見られない方法で開封する者がいた.若年者と高齢者の開封方法は類似していたが,高齢者では母指の力を利用する,3 指のつまみや手掌面の押し付けで接触面を増やす,といったパターンが多く見られ,キャップに力を伝えやすい方法を選択していたものと考えられる.
著者
岩上 さやか 杉原 素子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.151-158, 2014-12-25 (Released:2017-10-27)

本研究は,回復期リハビリテーション病棟に入院した脳血管障害患者がその入院生活時に何をきっかけに自身の生活に再び目を向けることができたのかを探ることを目的とした。入院生活時に自身の病前生活に目を向けていたと判断され,現在地域生活を行っている3名に対し,半構造化面接を行い得られた資料の分析を行った。資料の内容分析を通して5つの共通項目が得られた。それらは「病前生活での自身の役割の明確な再認識の機会」と「作業療法場面での家事活動」が,生活に目を向けるきっかけとして,「病前の具体的な役割の存在」「前向きな考え方」「病気の体験を今後の生活にプラスに活かす姿勢」が,きっかけを導く背景の項目として挙げられた。このことから,患者一人ひとりの病前の役割や習慣的な活動を訓練に活かす事が,生活に目を向けるきっかけとなる可能性が示唆された。今後,患者の病前生活の情報を得る技能が必要になると思われた。
著者
渡部 誠一 杉原 素子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.314-324, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
29

我が国の調査では,長期入院統合失調症患者のうち20〜50%は退院意向を示さないとされ,厚生労働省は,「退院に向けた意欲の喚起」を強調している.本研究では,長期入院統合失調症患者の退院意向に関連する個人因子を明らかにする目的で,精神科病院に1年以上入院している統合失調症患者50名を対象に,退院意向質問紙,将来への否定的自己評価であるDefeatist Beliefsおよび陰性症状を横断的に評価した.その結果,Defeatist Beliefsは退院を示さない群において有意に重度で(p=0.001),交絡因子を含めても有意な関連が認められた(p=0.01).本結果により,退院意向を示さない統合失調症患者の退院への意欲喚起には,心理社会的介入の重要性が示唆された.
著者
白砂 寛基 谷口 敬道 杉原 素子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.14-22, 2015

経験年数の少ない作業療法士に対して,介入のための視座を与える急性期作業療法の介入戦略の構築を目指し,事例文献の評価項目,介入方針,実施内容について整理,分析することで,現在の急性期作業療法の実態を調査した.調査対象とした日本作業療法士協会事例報告集には583 事例が掲載されており,そのうち身体障害領域の回復状態が急性期の事例は132 事例であったが,介入期間が1 ヵ月以内の事例は19 事例であり,長期的な介入が多かった.19 事例からは,機能改善,早期離床,ADL の改善を基本方針とし,座位訓練や,本人・家族指導,他職種と連携したADL 訓練を行い,その結果,上肢機能やバランス,起居・移乗動作の改善をしているという標準的な急性期作業療法の状態が示されたが,同時に,心身機能だけでなく,入院生活に関わる様々な活動の何ができ,何ができないかという事例に応じた評価・介入がなされていた.急性期作業療法の介入は身体機能に限らず,病院内でできる様々な活動の数を増やすという介入戦略の可能性についての示唆を得た.
著者
松谷 信也 谷口 敬道 平野 大輔 藤岡 崇 杉原 素子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.50-57, 2013

本研究の目的は,「創造的作業」と「単純反復作業」実施時における前頭前野領域の脳賦活の違いについて検討することである.健常成人10名を対象に,レゴブロックを用いて作りたいものを自由に創造する課題aと,ブロックを繰り返し付け外す課題b実施時における前頭前野領域の脳賦活の様相について22チャンネルのfNIRS装置を用いて計測した.この結果,課題aは課題bに比べ,前頭前野領域の脳賦活が広範囲に認められた.このことから,作業活動の創造性は,前頭前野領域の脳賦活に影響し,作業活動選定時に考慮すべき一つの要素となり得ることが示唆された.