著者
杉山 晃子 岸川 禮子 西江 温子 竹内 聡 下田 照文 岩永 知秋 西間 三馨 古江 増隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1532-1542, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14

【背景と目的】最近,加水分解コムギを含有するお茶石鹸の使用により小麦アレルギーあるいは小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)を発症することが社会問題となっている.当院を受診した症例から臨床的な特徴を考察した.【方法】2010年1月から10月にかけて当院を受診した加水分解コムギ含有石鹸の使用によって誘発されたと考えられる小麦アレルギーあるいはWDEIAの12例について検討した.【結果】平均年齢は36.0±9.9歳で,全て女性であった.全例,それまで小麦アレルギー症状の既往はなく,当該の石鹸を使用開始してから平均2年弱でWDEIAもしくは小麦アレルギーを発症していた.多くの症例が洗顔時に蕁麻疹や眼瞼腫脹,鼻汁などの症状を呈していた.従来のWDEIAに特異的なω-5グリアジンは12例中10例で陰性であった.【結語】石鹸の使用により加水分解コムギに経皮的に感作され,WDEIAもしくは小麦アレルギーを発症したと考えられた.当該の石鹸以外にも,香粧品により重篤なアナフィラキシーをきたす可能性があることを医療従事者が認識し,広く周知することが重要である.
著者
杉山 晃
出版者
清泉女子大学
雑誌
清泉女子大学紀要 (ISSN:05824435)
巻号頁・発行日
no.54, pp.29-42, 2006-12

「ワルマ・クヤイ」(1933)はホセ・マリア・アルゲダス(ペルー、1911-1969)が書いた最初の短編である。そのなかに何種類もの動物が登場する。-牛、馬、ピューマ、犬、豚、フクロウ,ヒキガエル、モリバト、コウテンシ等々だ。アンデスの自然を背景にした作品であり、多くの動物が出てきても不思議ではないが、それらが登場する文脈を仔細に点検すると、さまざまなレベルの効果をあげるべく仕組まれていることがわかる。先住民の独特の感性や、権力者の無慈悲、あるいはふたつの文化(アンデスと西洋)の狭間で苦しむアルゲダス自身の苦悩を描きだすのにも、それらの動物群が大きな役割を果たしている。この論考では、動物が登場する全ての文を分析し、アルゲダスの戦略においてそれらの動物がどのような役割を担わされているのかを明らかにする。