- 著者
-
杉本 匡史
楠見 孝
- 出版者
- 日本認知心理学会
- 雑誌
- 認知心理学研究 (ISSN:13487264)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.1, pp.55-64, 2011-08-31 (Released:2011-09-07)
- 参考文献数
- 17
ヒトは空間について書かれた文章を読んで空間表象を構築することができる.そしてそれを用いて方向判断や経路選択などの空間関係を推論することができる.その際に,サーベイパースペクティブとルートパースペクティブという二つのパースペクティブが用いられる(AはBの北にある.Bを左に曲がるとAが見える).40名の大学生がどちらかのパースペクティブで書かれた空間記述を読んで,そのあとに各パースペクティブでの推論問題に回答した.二つの実験で参加者の心的回転スキル,パースペクティブ判断スキル,実空間での探索行動における有能感が測定された.結果として,学習時とテスト時のパースペクティブによって推論問題の回答時間が異なった.また心的回転スキルとサーベイパースペクティブでの推論問題の成績との間に有意な相関がみられた.パースペクティブ判断課題とルートパースペクティブでの推論問題の成績との間にも正の相関がみられたものの,有意にはならなかった.実験の結果,サーベイパースペクティブは空間視覚化能力に支えられているといえる.