著者
杉本 忠則
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.144, no.6, pp.287-293, 2014 (Released:2014-12-10)
参考文献数
16

Wavelet 解析は比較的新しい解析手法であり,時間周波数解析ができる.これまで,時間周波数解析の手法としてはFourier 解析が知られていたが,解析結果に時間情報が含まれないことより研究者にとって満足できる解析結果とはならないことが多かった.一方,wavelet 解析では,解析結果に時間情報が含まれるため,特定の時点での周波数情報を知ることができる.それゆえ,現在wavelet 解析は幅広い分野で利用されている.しかし,薬理学で紹介される機会が少なかったため,詳しくない研究者も多いと思われる.本論文では,wavelet 解析の簡単な理論説明を行い,いくつかの簡単な時間連続データにおけるFourier 解析とwavelet 解析との解析結果の比較を行うことにより,wavelet 解析を理解して頂くことにした.また,実際の薬理データ(ラットの脳波)に対し,Fourier 解析とwavelet 解析とを実施した.Fourier 解析ではデータを分割解析することにより途中で起きるパターン変化が検出できたが,その分割が最適かどうかの疑問が残った.一方,wavelet 解析ではデータ分割することなく解析でき,より細かな変化も検出可能な解析結果が得られた.その中には研究者が求めたい情報が含まれていることより,wavelet 解析が生体の状態を解明する上での強力な手段となりうることが示された.このようにwavelet解析はFourier解析に比べ優れた解析手法である.しかし,Fourier 解析が不要と言うわけではない.解析対象となるデータの性質や着目点によってはwavelet解析よりもFourier解析の方が適切な場合もあるので,解析目的によりwavelet 解析とFourier 解析とを適切に使い分けて欲しい.
著者
杉本 忠
出版者
三田史学会
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.55(233)-103(281), 1934-08

一 先人の説二 讖緯説の性質内容三 先秦の書檢討四 秦讖 上 呂氏春秋檢索 下 史記に現はれたる讖言
著者
福島 秀樹 吉冨 隆二 山出 渉 杉本 忠彦 足達 綱三郎 西 重敬 大鶴 昇
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.228-233, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
4

目的:心不全・腎不全の終末期に全身浮腫をきたすことは通常よくみられる.その中で,全身から大量の浸出液を認める症例が散見され,今回我々は,このような症例について検討を行った.方法:対象は,終末期に低栄養,心・腎不全から乏尿をきたして死亡された患者のうち,全身浮腫をきたし,1日に3,000 ml 以上の浸出液を認めた3例(いずれも男性,81,89,97歳)である.同様に死亡された患者で,浸出液が1日に1,000 ml 以下であった比較患者20例(男10,女10,平均82歳)との間で,一般血液検査値,乏尿に陥ってからの生存期間を比較した.また対象において,同時に採取した浸出液と血清との生化学検査の比較を行った.結果:対象と比較患者の間では,対象の血清BUNが高値傾向(平均138 vs 81 mg/dl )である以外には血液検査値に差を認めず,また対象では乏尿に陥ってからの生存期間が比較患者様より長い傾向(平均14 vs 7日)を認めた.また対象における浸出液と血清の生化学検査の比較では,蛋白,脂質,AST,ALT,γ-GTP,Ca,CRPは浸出液が血清より低値であったが,BUN,Cr,UA,K,Clは浸出液と血清でほぼ同値であった.結論:大量浸出液をきたす原因は,血管透過性を亢進するさまざまな要因の複合が示唆されるが,浸出液中には血清とほぼ同濃度のBUN,UA,Kが含まれる.大量浸出液をきたした患者様では,特にKが体外に排出されることにより,乏尿に陥ってからの生存期間が長くなった可能性も考えられた.また大量浸出液をきたした患者様では,そうでなかった患者様との間で,一般血液検査には明確な差異を認めず,どのような患者様が大量浸出液をきたすかについては,今後の検討を要する.
著者
杉本 忠則
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.5, pp.265-270, 2009 (Released:2009-11-13)
参考文献数
13

薬物を併用した場合の相乗効果の評価を行う際に検定を用いることがあるが,薬物反応の理論的背景を考えると適切でない場合がある.受容体理論に従えば,薬物用量と反応値との関係は数式として記述することができる.2薬物が併用された場合も,受容体理論を展開し薬物用量と反応値との関係を数式化することができるため,薬物反応の理論に基づくデータ解析が可能である.今回紹介する解析手法は,効力の異なる2種類の部分作動薬あるいは余剰受容体がない完全作動薬が併用されたときに測定される反応値と理論的な反応値とを比較する手法である.本解析手法は実験データを理論式に非線形回帰させ反応を決定するパラメータを推定するものであるが,回帰させる理論式には相加効果からの解離度合いを示すパラメータが組み入れられている.なお,本稿では相加を2種類の薬物を併用した場合に各薬物が同一受容体に結合し独立に発現する反応の加算としている.解析により各パラメータの点推定値と95%区間推定値が得られるが,相加効果からの解離度合いを示すパラメータの大きさに対し薬理学的意味を考慮して検討することにより2薬物併用による効果が評価できる.