著者
杉浦 広幸 酒井 創
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.211-219, 2016-05-15 (Released:2016-05-13)
参考文献数
17

2015年におけるマツカサの放射性セシウム汚染を,ゲルマニウム半導体検出器とオートラジオグラフィーで調査した。2015年採取のアカマツの灰色マツカサにおける137Cs濃度は,2013年の予想1)に反して2011年と同程度の高濃度汚染であった。アカマツの灰色マツカサの137Cs濃度は,2011年に空間線量率が高かった場所で高濃度の傾向があった。高濃度汚染マツカサ表面のオートラジオグラフィーを行うと,不規則な強いスポットが観察された。福島のアカマツの灰色マツカサは,2015年以降もしばらくは高濃度の放射性セシウムに汚染のものが含まれると思われた。
著者
杉浦 広幸 河野 圭助 香山 雪彦 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.135-141, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
23

東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う福島市のシラカシ果実と葉における放射性セシウム濃度を定量し,汚染状況と汚染経路を検討した.2010年以前に展開し事故時に存在していたと推定される古い葉の放射性セシウム濃度は非常に高く12,000 Bq・kg-1(生体におけるCs-137とCs-134の合計)を超えていた.しかし,2012年度に展開した若葉は300 Bq・kg-1未満であり,大きく減少していた.2012年に採取した果実の放射性セシウム濃度は,最大で305 ± 8 Bq・kg-1であった.果実の汚染は表面を洗浄しても低下せず,また洗浄後の殻と種子(内部)に差がなく,表面汚染ではなかった.古い葉と新しい葉の放射性セシウム濃度は,ある程度の相関がみられた.また,新しい葉と果実の放射性セシウム濃度にも相関がみられ,果実/葉の比は約0.85であった.果実における放射性セシウム濃度と,株の周囲で舗装されていない部分(根圏域が露出している面積)の割合との間にも比較的高い相関がみられた.以上の結果から,果実と若葉の放射性セシウム汚染は,転流以外にも表層に張る根からの吸収経路の寄与が示唆された.
著者
杉浦 広幸 藤田 政良
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.433-438, 2003
被引用文献数
1

エテフォン散布が、露地栽培での夏秋ギクの伸長生長における影響、花芽分化や葉色との関係について調査した。供試したいずれの品種もエテフォン散布区の伸長生長は、散布を受ける期間中は抑制され、その後時間が経過して花芽分化が総包りん片形成期から小花形成期となる時期に速く進み、開花が近くなると停止した。花芽分化抑制のためエテフォン200mg/lの3回散布後1000mg/lを散布したところ、'精雲'と'サマーイエロー'は高所ロゼットになり、その後節間伸長が回復してエテフォン200mg/lの3回散布区と同じ高さに伸長した。摘心とエテフォン散布による伸長生長への影響を調査したところ、無摘心のエテフォン散布区と摘心のエテフォン散布区の生長を比較すると、前者は後者に比べて前半の伸長生長が遅れ、その後短時間で進み草丈は追いついた。また、後者の上部展開葉の葉色が明緑色から濃緑色に変化する時期が、前者に比べて遅延した。以上より夏秋ギクにエテフォンを散布処理すると、散布後直ちに花芽分化、伸長生長および上部葉の濃緑色化を抑制するが、時間経過とともに伸長生長抑制活性は低下し、最終的には草丈の伸長生長を促進した。
著者
杉浦 広幸 藤田 政良
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.433-438, 2003
被引用文献数
1

エテフォン散布が、露地栽培での夏秋ギクの伸長生長における影響、花芽分化や葉色との関係について調査した。供試したいずれの品種もエテフォン散布区の伸長生長は、散布を受ける期間中は抑制され、その後時間が経過して花芽分化が総包りん片形成期から小花形成期となる時期に速く進み、開花が近くなると停止した。花芽分化抑制のためエテフォン200mg/lの3回散布後1000mg/lを散布したところ、'精雲'と'サマーイエロー'は高所ロゼットになり、その後節間伸長が回復してエテフォン200mg/lの3回散布区と同じ高さに伸長した。摘心とエテフォン散布による伸長生長への影響を調査したところ、無摘心のエテフォン散布区と摘心のエテフォン散布区の生長を比較すると、前者は後者に比べて前半の伸長生長が遅れ、その後短時間で進み草丈は追いついた。また、後者の上部展開葉の葉色が明緑色から濃緑色に変化する時期が、前者に比べて遅延した。以上より夏秋ギクにエテフォンを散布処理すると、散布後直ちに花芽分化、伸長生長および上部葉の濃緑色化を抑制するが、時間経過とともに伸長生長抑制活性は低下し、最終的には草丈の伸長生長を促進した。
著者
杉浦 広幸 花田 薫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.432-438, 1998-05-15
被引用文献数
4 13

新潟県で特定の大輪ギク品種に発生した特異的な生育障害, すなわち草丈のわい化, 開花の1∿2週間の遅延, 花型の丁字型化などを起こすCSVdの性質を調査した.'ミスルトー'を用いた生物検定, およびRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析の結果, 本症がCSVdによるものであると確定した.発病株から発生した冬至芽からのCSVdの無病化は, 2品種中1品種で認められ50∿61%の冬至芽が無病徴であった.汁液接種によるCSVdの伝染性については品種間差があり, 調査した10品種中, 5品種はCSVd抵抗性であった.土壌伝染性は認められなかった.塩基配列を解析した結果, 2か所でイギリス型と異なっていたが, 塩基数は同じであった.