著者
井上 興 花田 薫 宮川 久義 館野 宏司
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.15-17, 1993

1. 1992年6月に熊本県西合志町九州農業試験場内圃場,周辺雑地からウイルス病症状を呈していると思われたイネ科作物および雑草を採集した。<BR>2. 採集したトウモロコシ11株,ソルガム2株,ジョンソングラス1株,パスパルム1株,ササ1株,メヒシバ5株から得られたウイルスはウイルス粒子の形態やトウモロコシヘモザイク症状をおこす病原性などからSCMVあるいはその一系統であると考えられた。<BR>3. ウエスタンブロット法の結果から,メヒシバからSCMV-B系統に近縁なウイルスが検出された。<BR>4. 生育極初期にトウモロコシがSCMVに罹病すると草丈の伸長がやや劣り,収量に影響することが考えられた。
著者
杉浦 広幸 花田 薫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.432-438, 1998-05-15
被引用文献数
4 13

新潟県で特定の大輪ギク品種に発生した特異的な生育障害, すなわち草丈のわい化, 開花の1&acd;2週間の遅延, 花型の丁字型化などを起こすCSVdの性質を調査した.'ミスルトー'を用いた生物検定, およびRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析の結果, 本症がCSVdによるものであると確定した.発病株から発生した冬至芽からのCSVdの無病化は, 2品種中1品種で認められ50&acd;61%の冬至芽が無病徴であった.汁液接種によるCSVdの伝染性については品種間差があり, 調査した10品種中, 5品種はCSVd抵抗性であった.土壌伝染性は認められなかった.塩基配列を解析した結果, 2か所でイギリス型と異なっていたが, 塩基数は同じであった.
著者
津田 新哉 藤澤 一郎 花田 薫 日高 操 肥後 健一 亀谷 満朗 都丸 敬一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.99-103, 1994-02-25

Reverse transcriptase-polymerase chain reaction (RT-PCR)法を用いてアザミウマ1頭からTSWV (O系統) S RNAの検出を試みた。精製 TSWV RNAでは予想される増幅長に一致する約800塩基対のシグナルが認められた。検出されたシグナルは, S RNAをプロープとしたサザンハイブリダイゼーションとダイデオキシ法によるDNAシークエンシングから, S RNAを鋳型にしたcDNAと同定された。ダイズウスイロアザミウマ(Thrips setosus)の若齢幼虫をダチュラ(Datura stramonium)またはピーマン(Capsicum annuum)の病葉上で2時間獲得吸汁させた後, 健全ササゲに移し, 約10日後羽化した成虫を1頭ずつ健全ピーマン幼苗で2日間接種吸汁させて伝搬の有無を調べた。次いで, 接種吸汁させた成虫1頭ずつから全RNAを抽出してRT-PCR法で検出した結果, TSWVを伝搬した雌雄すべての個体からシグナルが検出され, 伝搬しなかった個体からもまれに検出された。以上から, 本法は媒介虫(アザミウマ)からのウイルス検出に有用と思われる。
著者
土井 誠 善 正二郎 奥田 充 中村 宏子 加藤 公彦 花田 薫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.181-188, 2003-08-25
被引用文献数
8

1998年1月及び1999年6月に静岡県で,また2001年には佐賀県で施設栽培のトルコギキョウに,葉にえそやえそ輪紋等の症状が発生した.これら発病株からウイルスを分離し,T2, T3, SGA及びSG1分雑株を得た.4分雑株の汁液接種によりトルコギキョウで原病微が再現された.T2及びT3分離株の宿主範囲は狭く,13科25種の植物のうちで,3科4種のみに全身感染した.T2及びSG1分離株はミカンキイロアザミウマでは媒介されず,ネギアザミウマのみにより媒介された.発病株を電子顕微鏡で観察した結果,平均粒子径85nmの球状粒子が認められた.DAS-ELISA法でT2及びT3分離株ともにIYSV抗体と強く反応したが,TSWV及びINSV抗体には反応しなかった.4分離株のヌクレオキャプシドクンパク質のアミノ酸配列を解析した結果,T2及びSG1分離株はオランダで発生したIYSVと相同性がそれぞれ97.8%,97.1%であり,T3及びSGA分離株はブラジルで発生したIYSVとのそれが97.4%, 97.8%であった.以上から,4分離株をIYSVと同定した.本病害をえそ輸紋病と命名する.IYSVのトルコギキョウヘの病原性は系統により多少異なることと,IYSVに対するトルコギキョウの感受性には品種間差があることが明らかとなった.