著者
大野 剛 村松 康行
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.239-246, 2015-09-25 (Released:2015-12-25)
参考文献数
26

Inductively coupled plasma (ICP) is characterized by high ionization efficiency for almost all elements. Recently, a triple quadrupole ICP-MS (ICP-MS/MS) has been applied to the measurements of isotope ratios for ultra-low level radioisotopes. The ICP-MS/MS features an additional quadrupole mass filter situated in front of the octopole reaction cell and quadrupole mass filter, which allows only the analyte ion to enter the cell by rejecting all the other ions. In this manuscript, we review recent studies on environmental radioactivity in Fukushima achieved by ICP-MS/MS techniques.
著者
佐藤 守 阿部 和博 菊永 英寿 高田 大輔 田野井 慶太朗 大槻 勤 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.295-304, 2015 (Released:2015-10-22)
参考文献数
17
被引用文献数
3 18

モモ[Prunus persica(L.)Batsch]とカキ(Diospyros kaki Thunb.)を供試し,福島第一原子力発電所事故の放射性降下物により休眠期汚染された落葉果樹に対する高圧洗浄機を用いた樹皮洗浄による放射性セシウムの除染効果を検証した.夏季洗浄処理として 18 年生モモ‘あかつき’を供試し,2011 年 7 月 5 日と 27 日の 2 回にわたり,樹皮洗浄処理を実施した.休眠期洗浄処理として 2011 年 12 月 21 日に 30 年生カキ‘蜂屋’,2012 年 1 月 24 日に 7 年生モモ‘川中島白桃’を供試し,樹皮洗浄処理を加えた.高圧洗浄処理によりカキではほぼ全ての粗皮がはく離したが,モモの表皮はほとんどはく離しなかった.2011 年夏季に洗浄処理されたモモ‘あかつき’の果実中 137Cs 濃度は洗浄による有意差は認められなかった.2011 年から 2012 年の冬季に洗浄処理されたモモ‘川中島白桃’の葉および果実中 137Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.同様にカキ‘蜂屋’でも洗浄処理翌年の葉および果実中 137Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.これらの対照的な結果と矛盾しない現象として,汚染された樹皮洗浄液による二次汚染および樹皮からの追加的汚染の可能性について考察を加えた.
著者
村松 康行 松崎 浩之 大野 剛 遠山 知亜紀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.189, 2013 (Released:2013-08-31)

福島原発事故においても大量のI-131が放出されたが、もしも、初期被ばくが大きい場合は後になって甲状腺への影響が出る可能性がある。しかし、半減期が8日と短いため、事故当初の放射性ヨウ素の広がりや住民が受けた被ばく線量に関するデータは十分でない。そこで、I-131と同時に放出されたと考えられる長半減期の同位体であるI-129(半減期1,570万年)が指標になる。文科省が集めた土壌試料や我々が独自に集めた試料を用い、I-129の分析を試みた。AMSを用いたI-129の分析結果から約400箇所のI-131沈着量を推定した。今まで殆どデータがなかった福島原発から20 km圏内や南西側の地域を中心に、I-131の沈着量のマップを作成した。今回、値が加わったことで、I-131の沈着量の地域分布の特徴がより鮮明になってきた。
著者
松崎 浩之 村松 康行
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

原子力発電所事故当時、住民に深刻な被ばくを引き起こす可能性の高い大量のヨウ素131(半減期8.02日)が放出されたが、半減期が短いため空間分布に関するデータが不足している。そこで本研究では、同時に放出されたヨウ素129(半減期1570万年)を測定することによってヨウ素131の沈着量を再構築することを目的とし、以下の三つの課題に取り組んだ:1)第1次調査で平成23年6月に採取された土壌試料のうちヨウ素131が測定されているものについてヨウ素129を測定し同位体比を求めること。2)第1次調査で採取された土壌のうち30km以内と線量が高い地域の試料を選び、ヨウ素129を分析し、ヨウ素131マップの精緻化を図ること。3)ヨウ素129の土壌中での深度分布や時間変化などを評価し、事故時ヨウ素131濃度マップの精度を上げると共に、ヨウ素129の環境中での長期的移行挙動に対する知見を得ること。
著者
松崎 浩之 村松 康行
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2013年春の年会
巻号頁・発行日
pp.653, 2013 (Released:2013-07-31)

原子力発電所事故当時、住民に深刻な被ばくを引き起こす可能性の高い大量のヨウ素131(半減期8.02日)が放出されたが、半減期が短いため空間分布に関するデータが不足している。そこで本研究では、同時に放出されたヨウ素129(半減期1570万年)を測定することによってヨウ素131の沈着量を再構築することを目的とし、以下の三つの課題に取り組んだ:1)第1次調査で平成23年6月に採取された土壌試料のうちヨウ素131が測定されているものについてヨウ素129を測定し同位体比を求めること。2)第1次調査で採取された土壌のうち30km以内と線量が高い地域の試料を選び、ヨウ素129を分析し、ヨウ素131マップの精緻化を図ること。3)ヨウ素129の土壌中での深度分布や時間変化などを評価し、事故時ヨウ素131濃度マップの精度を上げると共に、ヨウ素129の環境中での長期的移行挙動に対する知見を得ること。
著者
井上 章 村松 康行 松崎 浩之 吉田 聡
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.136, 2011 (Released:2011-09-01)

C-14は銀河宇宙線と窒素の(n,p)反応によって大気上層で生成し、光合成によって植物中に取り込まれる。C-14生成量は銀河宇宙線の地球への入射量と相関を持ち、太陽活動の変動と関係する。よって古木などの植物試料中C-14同位体比を測定することで過去の太陽活動の変動を推定できる。一方近年は核実験や原子力発電所の事故等人為的に放出されたC-14の寄与が大きい。したがって近年の植物試料中C-14同位体比を測定することで人為的放出による大気中C-14濃度変動への影響を調べることができる。本研究ではAMS(加速器質量分析計)を用いて樹齢1139年の屋久杉年輪中C-14同位体比を測定し、オールト極小期(AD1000~1100)における太陽活動の変動を調べた。また近年に採取された日本の穀類や、原子力施設周辺で採取された植物試料中C-14同位体比を測定し、人為的に放出されたC-14の影響を調べた。
著者
大野 剛 村松 康行
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

福島第一原子力発電所の事故により多量の放射性物質が放出された。この事故により放出された放射性元素にはゲルマニウム半導体検出器で測定することが困難な長半減期放射性同位体も含まれている。この中でもヨウ素129(半減期1570万年)はヨウ素131の汚染実態を把握するために重要な同位体である。これまでヨウ素129の測定には、加速器質量分析法(AMS)が用いられてきた。しかし、試料前処理および分析に時間が掛かるため、多量の試料分析には不向きな点がある。そこで本研究では、迅速分析が可能な誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて、福島汚染土壌中のヨウ素129測定法の開発を行った。
著者
佐藤 守 阿部 和博 菊永 英寿 高田 大輔 田野井 慶太朗 大槻 勤 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.295-304, 2015
被引用文献数
18

モモ[<i>Prunus persica</i>(L.)Batsch]とカキ(<i>Diospyros kaki</i> Thunb.)を供試し,福島第一原子力発電所事故の放射性降下物により休眠期汚染された落葉果樹に対する高圧洗浄機を用いた樹皮洗浄による放射性セシウムの除染効果を検証した.夏季洗浄処理として 18 年生モモ'あかつき'を供試し,2011 年 7 月 5 日と 27 日の 2 回にわたり,樹皮洗浄処理を実施した.休眠期洗浄処理として 2011 年 12 月 21 日に 30 年生カキ'蜂屋',2012 年 1 月 24 日に 7 年生モモ'川中島白桃'を供試し,樹皮洗浄処理を加えた.高圧洗浄処理によりカキではほぼ全ての粗皮がはく離したが,モモの表皮はほとんどはく離しなかった.2011 年夏季に洗浄処理されたモモ'あかつき'の果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄による有意差は認められなかった.2011 年から 2012 年の冬季に洗浄処理されたモモ'川中島白桃'の葉および果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.同様にカキ'蜂屋'でも洗浄処理翌年の葉および果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.これらの対照的な結果と矛盾しない現象として,汚染された樹皮洗浄液による二次汚染および樹皮からの追加的汚染の可能性について考察を加えた.
著者
杉浦 広幸 河野 圭助 香山 雪彦 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.135-141, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
23

東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う福島市のシラカシ果実と葉における放射性セシウム濃度を定量し,汚染状況と汚染経路を検討した.2010年以前に展開し事故時に存在していたと推定される古い葉の放射性セシウム濃度は非常に高く12,000 Bq・kg-1(生体におけるCs-137とCs-134の合計)を超えていた.しかし,2012年度に展開した若葉は300 Bq・kg-1未満であり,大きく減少していた.2012年に採取した果実の放射性セシウム濃度は,最大で305 ± 8 Bq・kg-1であった.果実の汚染は表面を洗浄しても低下せず,また洗浄後の殻と種子(内部)に差がなく,表面汚染ではなかった.古い葉と新しい葉の放射性セシウム濃度は,ある程度の相関がみられた.また,新しい葉と果実の放射性セシウム濃度にも相関がみられ,果実/葉の比は約0.85であった.果実における放射性セシウム濃度と,株の周囲で舗装されていない部分(根圏域が露出している面積)の割合との間にも比較的高い相関がみられた.以上の結果から,果実と若葉の放射性セシウム汚染は,転流以外にも表層に張る根からの吸収経路の寄与が示唆された.
著者
高瀬 つぎ子 高貝 慶隆 内田 守譜 難波 謙二 大槻 勤 村松 康行
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.281-290, 2013 (Released:2013-05-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

福島第一原子力発電所の事故は,福島県東部の広範な地域に,放射性セシウムによる環境汚染をもたらした。本研究では,汚染された餌を摂取したウシの血液中と内臓組織中の137Cs濃度を測定し,コンパートメントモデルによる解析を行った。その結果,血液と内臓組織に含まれる137Cs濃度には,線形相関が存在することが明らかになった。また,内臓組織中での137Csの蓄積性(aiE/aEi)を推計したところ,137Csは,筋肉に蓄積しやすいことが明らかになった。
著者
内田 滋夫 村松 康行 住谷 みさ子 大桃 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.199-203, 1990-05-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

湿性沈着吸収によるヨウ素のコマツナおよび水稲可食部への移行および吸収部位からの転流について検討した。その結果, (1) コマツナ葉面へは, I-の方がIO3-よりもよく吸収されること, および (2) モミへの吸収では, 95%以上がモミガラに残留し, 玄米へは移行しにくいこと, さらに, (3) どちらの農作物でも吸収部位から他の部位への転流は, 非常に少ないこと, 等が明らかとなった。
著者
吉田 聡 村松 康行
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.63-70, 1994-01-31 (Released:2011-10-21)
参考文献数
21
被引用文献数
20

1991年に日本国内で採取(一部市場で購入)したキノコ117試料について,137Cs,134Cs及び40Kを分析した。この結果を1989年と1990年に得た結果と合わせて考察したところ,全部で124種類(284試料)のキノコ中の137Csの濃度は,<3から16300 Bq/kg-乾燥重量(<0.4から1250 Bq/kg-湿重量)まで種類によって大きく異なった。これに対して,40Kの濃度は比較的一定であった。中央値は137Cs:53,40K:1180Bq/kg-乾燥重量であった。チェルノブイリ事故に起源をもつ134Csの濃度は全体的に低く,1991年には11試料のみで検出された。134Cs/137Cs比を用いて求めたチェルノブイリ事故起源の137Csの割合は低く,日本産のキノコ中の137Csは,主として1960年代に行われた核実験からのフォールアウトに起源を持つことが示唆された。採取したキノコを菌根菌と腐生菌の2つに分類したところ,前者の方が高い137Cs濃度を示した。日本人がキノコ(主として野生キノコ)を食べることにより137Csから受ける実効線量当量を試算したところ1.3×10-6Sv以下と非常に低い値であった。これは,自然界から受ける線量の約0.05%以下であった。
著者
松崎 浩之 笹 公和 堀内 一穂 横山 祐典 柴田 康行 村松 康行 本山 秀明 川村 堅二 瀬川 高弘 宮原 ひろ子 戸崎 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

南極ドームふじアイスコア中の過去72万年にわたる宇宙線生成核種記録を加速器質量分析で分析した。特徴的な宇宙線イベント(ラシャンプ、ブレーク、アイスランドベイズン)を詳細に解析したところ、宇宙線生成核種(特にベリリウム10)の記録が、グn一バルなイベントの記録となっていることが証明された。これにより、古環境研究における、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。
著者
大野 剛 村松 康行 三浦 吉則 織田 和優 稲川 直也 小川 宏 山崎 敦子 小林 智之 二階堂 英行 佐藤 睦人 加藤 義明
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.68, 2011 (Released:2011-09-01)

福島第一原子力発電所から放出された放射性セシウム及びヨウ素の土壌深部への移行実態を明らかにすることは、放射性物質の農作物への移行を調べる上で重要である。本研究では、土壌特性の異なる水田、畑地、果樹園、森林において放射性セシウム及びヨウ素の深度分布を調べた。すべての試料において表層から6cmまでに90%以上の放射性セシウムが存在していることが分かった。畑、果樹園、森林の表層試料(0-2cm)には試料間に大きなばらつきは見られなかったが、水田試料には10倍以上の違いが見られた。また深部への移行は畑試料で大きく、水田試料で小さい傾向が見られた。これは畑土壌に比べ水田土壌の透水性が低いため土壌表面で水平方向の移動が大きくなったことを反映したものと考えられる。