著者
中牧 弘允 李 仁子 イシ アンジェロ 大越 公平 坂本 要 新免 光比呂
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

2004年度は、国内におけるカレンダーの収集と、マルチカレンダー文化の実態調査に焦点を絞った。研究代表者は暦のコレクションで知られる施設を訪問し、マルチカレンダーの収集状況を把握した。実態調査に先立ち、民博において研究会を開催し、研究目的を遂行する上で必要とされる情報の共有化をはかり、あとはそれぞれの地域やテーマにもとづきカレンダーの収集と調査に従事し、年度末に民博で開催される研究会で中間報告をおこなった。収集したカレンダーや関連資料を研究代表者のもとに保管し、研究支援者を雇用し情報のデータ化をはかった。2005年度は国内においては補足調査にとどめ、海外においては台湾、韓国、ブラジル、ボスニア、イラン、フィンランド、アメリカなどでマルチカレンダー文化の収集と実態調査を実施した。また収集したカレンダーの一部を研究代表者のもとに集め、情報のデータ化をはかった。さらに研究代表者を中心に『民博通信』7月号に「マルチな暦を生きる-カレンダーにみる在日外国人の暮らし」をテーマに特集を組み、中間的な報告と問題提起をおこなった。
著者
和田 正平 鈴木 健太郎 李 仁子 岡田 浩樹
出版者
甲子園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、在日朝鮮韓国人の民俗宗教の中で、特に死後結婚を取り上げ、その実態を明らかにすることにあった。同時に第二の目的は、日本社会への定住化が進む在日朝鮮韓国人の宗教観念と死生観にせまることである。この目的に沿って、大阪生駒の在日朝鮮寺と兵庫県宝塚市周辺の在日朝鮮寺における儀礼と僧侶、シャーマンに関する調査、愛知県春日井市在住の在日朝鮮韓国人のシャーマンに関する調査をおこなった。死後結婚の儀礼自体の観察、調査は事例の特殊性もあり実施できなかったものの、東アジア社会に広く見いだされる死後結婚が在日朝鮮韓国人の間でも行われていること、その儀礼や宗教意識が変化しつつあり、日本的な要素が変容し、混入しつつあることを確認できた。一方で、朝鮮寺において在日朝鮮韓国人のシャーマンから、ニューカマーの韓国人シャーマンや僧侶へ代替わりしつつあることを見いだした。そうした宗教職能者は、韓国の宗教伝統を持ちつつも、クライアントである在日朝鮮韓国人の要求に応えるために、本国では見られない儀礼の形式や占いの方法を生み出しつつある。そして在日朝鮮韓国人の宗教観と死生観は、本国の宗教文化、日本の宗教文化、そして彼らが生み出してきた「在日朝鮮韓国人文化」のせめぎあいの中で揺れ動いている状況が明らかになった。この状況は、大阪府生野区、高槻市、東京都荒川区の在日朝鮮韓国人についてのインタビューの分析からも明らかになった。
著者
李 仁子 二階堂 裕子 金谷 美和
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、東日本大震災の津波被災地において人々の生活再建や地域の復興がどのように進むのかを明らかにするために、複数の調査地で長期にわたる文化人類学的調査を行い、被災者の移動に伴う生活相の変化や、被災者をとりまく社会的環境の変化、さらには彼らのコミュニティに生じた再生や変容を詳細に記録した。再建や復興のプロセスは一様かつ直線的なものではなく、被災の程度、行政による施策の影響、震災前から家族やコミュニティに内在していた諸条件、外部からのボランティアとの関わり方等々といった様々なファクターにより多様かつ複雑に展開するのだが、その全容を民族誌的に記述するためのデータを蓄積することもできた。