著者
二階堂 裕子 駄田井 久
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日本の企業や地域社会で実施されている日本語学習活動を、外国人技能実習生をめぐる課題の解決策のひとつとして位置づけ、その意義を明らかにしようとした。得られた主な知見は、以下の通りである。第1に、企業が日本語学習や帰国後就労の支援に尽力している場合、日本での就労経験に対する技能実習生の満足度は高い。第2に、帰国後、日本で修得した技能や日本語能力を活用して再就職できた元技能実習生の場合、来日前よりも職業的地位が上昇する傾向にある。一方、経験と能力に見合った就職先のない人も多い。第3に、過疎化が進む中山間地域で、地域住民と積極的に関わった技能実習生は、日本語の能力を高める傾向がある。
著者
二階堂 裕子
出版者
西日本社会学会
雑誌
西日本社会学会年報 (ISSN:1348155X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-61, 2019 (Released:2020-03-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

グローバル化と国内の労働力不足を背景に、近年、外国人技能実習制度(以下、本制度)による外国人労働者の受け入れが進んでいる。本制度の趣旨は、技能移転を通した開発途上国の経済発展を担う人材育成にある。しかし、帰国した元技能実習生が、必ずしも日本での就労経験を活用しているわけではないのが現状である。そこで本稿では、ベトナム人技能実習生を事例に、本制度を媒介とした技能移転の現状を検討し、国際貢献に向けた課題について考察する。本研究では、ベトナム社会の状況を鑑みて、農業分野における技能移転の可能性に焦点を当てる。そのうえで、愛媛県内の条件不利地域において、1970年代から有機栽培を主体とした環境保全型農業を実践している地域協同組合X の事例を取り上げる。X は、2000年以降、フィリピン人とベトナム人の技能実習生を受け入れるほか、ベトナム南部の都市に有機農業の拠点センターを開設し、帰国した元技能実習生による有機農業の推進を支援している。X の取り組みに関する分析をふまえて、本稿では、真の国際貢献に向けて、技能実習生の帰国後の再就職に向けた支援体制の整備が急務であることを論じる。
著者
稲月 正 谷 富夫 西村 雄郎 近藤 敏夫 西田 芳正 山本 かほり 野入 直美 二階堂 裕子 高畑 幸 山ノ内 裕子 内田 龍史 妻木 進吾 堤 圭史郎 中西 尋子
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人との生活史の比較分析からは(1)「移民」第1 世代の多くは周辺部労働市場に組み込まれたこと、(2)しかし、移住システム、資本主義の形態などの違いが社会関係資本の形成に差をもたらし、それらが職業的地位達成過程や民族関係(統合)の形成過程に影響を与えた可能性があること、などが示されつつある。また、在日韓国・朝鮮人の生活史パネル調査からは、(1)1990 年代後半時点でも見られた祖先祭祀の簡素化やエスニシティの変化が進んでいること、(2)その一方で 「継承」されたエスニシティの持続性自体は強いこと、などが示された。
著者
李 仁子 二階堂 裕子 金谷 美和
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、東日本大震災の津波被災地において人々の生活再建や地域の復興がどのように進むのかを明らかにするために、複数の調査地で長期にわたる文化人類学的調査を行い、被災者の移動に伴う生活相の変化や、被災者をとりまく社会的環境の変化、さらには彼らのコミュニティに生じた再生や変容を詳細に記録した。再建や復興のプロセスは一様かつ直線的なものではなく、被災の程度、行政による施策の影響、震災前から家族やコミュニティに内在していた諸条件、外部からのボランティアとの関わり方等々といった様々なファクターにより多様かつ複雑に展開するのだが、その全容を民族誌的に記述するためのデータを蓄積することもできた。
著者
藤井 和佐 西村 雄郎 〓 理恵子 田中 里美 杉本 久未子 室井 研二 片岡 佳美 家中 茂 澁谷 美紀 佐藤 洋子 片岡 佳美 宮本 結佳 奥井 亜紗子 平井 順 黒宮 亜希子 大竹 晴佳 二階堂 裕子 中山 ちなみ 魁生 由美子 横田 尚俊 佐藤 洋子 難波 孝志 柏尾 珠紀 田村 雅夫 北村 光二 北川 博史 中谷 文美 高野 宏 小林 孝行 高野 宏 白石 絢也 周藤 辰也 塚本 遼平 町 聡志 佐々木 さつみ
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

研究課題に関する聞きとり調査、質問紙調査等から、地方社会における構造的格差を埋める可能性につながる主な条件として(1)地域住民の多様化の推進及び受容(2)生業基盤の維持(3)定住につながる「地域に対する誇り」が明らかとなった。過疎化・高齢化が、直線的に地域社会の衰退を招くわけではない。農林漁業といった生業基盤とムラ社会の開放性が住民に幸福感をもたらし、多様な生活者を地域社会に埋め込んでいくのである。